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7 孤児院での生活

 孤児院に来てから一ヶ月が過ぎた。


 相変わらず首がすわっていない僕は、ミルクを飲む時以外はほとんど寝かされている状態だ。


 子供達の数が多いから、僕一人だけに構っていられないというのもあるんだろう。


 ここで生活しているうちに、この孤児院やこの国についても様々な事を知った。


 まず、この孤児院の院長は最初に僕を見つけてくれたあの老人で、マークという名前だとわかった。


 カミラ先生はマークの奥さんで、二人はこの孤児院に隣接した家に住んでいる。


 この孤児院で生活している子供達は、およそ二十人くらいだろうか?


 人数がはっきりしないのは、子供達が全員僕に関心を持っているわけではないからだ。


 僕はまだ自由に動き回る事が出来ないから、視界に入る範囲の事しかわからない。


 それに名前は耳にしても顔を知らない子供がいたりするのだ。


 きっと遠巻きに僕を見るだけで近寄って来ない子供もいたりするのだろう。


 そんな子供達の世話をするのはカミラ先生と、通いで来るルイーズ先生だ。


 二人の補助としてこの孤児院の年長者であるアイラとミアが子供達の世話をしている。


 朝はカミラ先生とアイラ達が朝食の準備をして、小さい子供達を起こして着替えさせたりしている。


 基本、自分の事は自分でやらせるのがこの孤児院の方針のようだ。


 朝食を終えた頃にルイーズ先生が孤児院にやってくる。


 子供達はルイーズ先生に勉強を教えてもらっているらしい。


 また、孤児院の敷地内に野菜を植えてあるらしく、その世話をしたり野菜を収穫したりしているようだ。


 ルイーズ先生は夕食の支度を済ませると自分の家へと帰っていく。


 そして僕が一番衝撃を受けたのが、この孤児院にはお風呂がないという事だ。


 夕食が終わると子供達は各自で濡れタオルで身体を拭いて、パジャマに着替えて寝るのだ。


 当然、僕も身体を拭かれて着替えさせられるだけだった。


 前世でお風呂好きだった僕には、これはかなりショックだった。


 まあ、確かに大勢の子供をお風呂に入れるのが大変なのはわかるけれどさ。


 せめて二日に一回とか、交代で入れるようにしてもらいたいな。


 まあ、今からお風呂場を作るにはお金もかかるから無理難題な話だろうけれどね。


 そしてこの国はアルズベリー国という名前だと知った。


 僕がこの孤児院に来た次の日に、この国の王子が生まれたという報せが届いたのだ。


 ルイーズ先生によると、王都では王子の誕生を祝してお祭りが開かれているそうだ。


 この孤児院のあるサウスフォードの町からも王都へお祭りに参加しに行く人もいるらしい。


 この町を治めている領主も、国王へお祝いを告げに出発したそうだ。


 「国王」と聞いて、僕は、僕を殺そうとしたあの父親の顔を思い出した。


 金色の髪に青い目をしていてなかなかのハンサムだったが、どこか冷たい印象を受ける人だった。


 殺されかけて捨てられたから余計にそう思うのかもしれない。


 年齢はいくつぐらいなんだろう。


 割と若かったような気もする。


 けれど、僕を産んだ母親の顔はわからない。


 僕自身の今の顔もわからないので、父親に似ているのか、母親似なのかまったくわからない。


 将来、王都に行けば両親、そして一緒に生まれた双子の片割れと会う事が出来るんだろうか?


 こうして捨てられた以上、おおっぴらに会いには行けないだろうけれど、せめて顔だけは見てみたいかな?


 だけど、今はまだそんな事を考えてはいられない。


 歩けるようになったら速攻で一人でトイレに行ってやる!


 そんな事を考えながら、今日も僕はアイラにオムツを替えてもらっているのだった。


 孤児院に来てしばらく経った頃、新しく子供が入ってきた。


 つまり僕の後輩である。


 孤児院で先輩も後輩もないとは思うけどね。


 何でも母親が亡くなって、父親が子供連れでは仕事が出来ないと預けていったらしい。


 ジャックという三歳くらいの男の子だった。


 赤ん坊を見た事がないらしく、この孤児院に来た早々、僕の顔を覗き込んできた。


「わっ! ちっちゃ!」


 僕を見るなり大声で叫んでいた。


 あまりの大声に僕はビクッと身体を震わせる。


 孤児院に来てにぎやかさには慣れたはずだけれど、突然の大声には耐性がなかったようだ。


 父親はジャックを孤児院に預けるとすぐに帰って行った。


 確かに職場に子連れでは行けないし、子供一人を家に残してはいられないしね。


 この世界には幼稚園とか保育園とかいうものは無いんだろうか?


 まだまだこの世界にはわからない事が多すぎる。


 


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