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49 対面

 けれど、僕は彼の言葉を真っ向から否定した。


「フィリップ様って誰ですか? どうして僕をこんな所に連れてきたんですか?」


 老人を睨みつけて問い詰めると、彼はフルリと頭を振って気の毒そうな目を僕に向けた。


「なんと、エドアルド様はご自分の立場をご存知でなかったのですね。よろしい。私がご説明して差し上げましょう。どうぞ、そちらにお掛けください」


 そう言って老人は自分の前の席を指し示す。


 とりあえず危害を加える気はないとわかって僕は老人の向かい側に座ったが、一応の警戒は怠らなかった。


「まずは自己紹介をさせていただきましょう。私はチャールズ・スタンレイと申します。スタンレイ子爵家の前当主です。今は家督を息子に譲ったので隠居の身ではありますがね」


 どうやら老人は前子爵当主だったらしい。


 という事は、僕が無事にエルガー家に戻っても、スタンレイ子爵家に苦情を訴える事は出来ないと言うのだろうか?


「以前、出席したこの国のエドワード王子のお披露目の席で思いがけない噂話を耳にしましてね。それによると王妃様は双子を出産なされたんではないかとね。『まさか!?』とは思いましたが、その頃、侍女長の実家が異例の陞爵をしたので、これは何かあると確信しました」


 侍女長というとサラの事だろうか?


 そう言えば以前、母親である王妃と会った時に『マクレガン家の陞爵』とか言っていたっけ。


 だけど、マクレガン家が陞爵しただけで何かあると疑うなんて、そんなにマクレガン家をライバル視していたんだろうか?


 色々と聞きたい事はあるが、とりあえずチャールズの話を最後まで聞くことにした。


「侍女長は王妃様のご出産にも関与していましたからね。おそらくそこで、侍女長はエドアルド様を孤児院に連れて行くように言われたのだと思いました。あの頃は王妃様と侍女長の仲はそれほど悪くなかったので、王妃様も賛成されたのでしょうね」


 チャールズはしたり顔で頷いているけれど、実際はちょっと違う。


 母親である王妃は自分が双子を出産したとは知らなかったのだ、とは口が裂けても言えないな。


「私はエドアルド様が何処かの孤児院にいらっしゃると確信して、国中の孤児院を探し回りました。だが、すぐには見つからリませんでした。そこで、もう一度、孤児院長に会って話を聞いたところ、タルコット院長から有力な話を伺いました。エドワード様が生まれたのと同じ頃、その孤児院に捨て子が置かれていたと。そしてその子は『エドアルド』と名前を書かれた紙が入った籠に入れられていたと言うのです。これこそが、お二人が双子だという証拠以外、何者でもありません。つまり、エドアルド様はこの国の王子様なのです!」


 チャールズはそう鼻息も荒く力説している。


 それにしても、あのタルコット院長がやすやすとそんな情報を漏らすとは思えなかった。


 きっと僕の情報を元に幾らかチャールズからせしめたに違いない。


 それにしても…。


 双子の名付けは似たような名前を付ける傾向があるらしいけど、まさか、その名前が決定打になるとはね。


 流石に『偶然です』とは言い難いものがあるよね。


 僕としては、あの時名前を付けて貰った事には感謝しているが、せめてもう一人の名前はもっと違う名前を付けて欲しかったよ。


 僕は軽くため息をつくと、チャールズに問いかけた。


「確かに僕はタルコット孤児院の前に捨てられていたと聞きました。名前もエドワード王子に似ています。だけど、それだけで僕が王子だという証拠にはならないと思います」


 僕はそう言ってチャールズの言葉を否定してみるが、そんな事でチャールズの確信は揺らがないようだ。


「名前だけではありません。あなたは幼い頃のフィリップ様に生き写しです。おそらくエドワード様もあなたにそっくりでしょう。さあ、エドアルド様。私と一緒に王宮に行きましょう。そして、この国の次期国王としてエドワード様を蹴落とすのです」


 チャールズが更にヒートアップした。


 だけど、それって僕が一番やりたくない事なんだけど、どうしたらチャールズを止められるのかな?





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