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232 瞬間移動

 男性の焦ったような問いかけにそれまで僕の後ろに控えていたオーウェンが僕の横に進み出てきた。


 軽く口角を上げて微笑んではいるが、どことなく男性に対して挑発的な雰囲気を醸し出している。


「もちろんそうですよ。あなたはあの時『こちらの卵は小さいから未熟なドラゴンしか生まれないだろう』とおっしゃいましたよね。でも、こうして立派なドラゴンが生まれました。人間の姿にも変化できますしね。ああ、そういえば二度とドラゴン族と関わらないとお約束しましたね。それでは、この辺でお暇しましょうかね」


 そう言うなりオーウェンは僕の腕を引っ張った。


 突然オーウェンから腕を引っ張られて僕はバランスを崩してよろける。


 そのままオーウェンは後ろにいるヴィンセントの腕も引っ張った。


 ヴィンセントはあらかじめそうなる事を予測していたらしく、宙に浮いていたウィルの腕を掴んでいた。


 四人が手を繋いだような状態になった途端、僕の視界が歪んだ。


 玉座に座っていた男性が慌てて立ち上がり、こちらに手を伸ばした姿がぼんやりと霞んでいく。


 気がつけば僕達は元の宿屋の部屋に戻っていた。


 いきなりの瞬間移動に三半規管をやられたのか、乗り物酔いをしたように気分が悪い。


「おや、エドアルド君。顔色が悪いですよ。もしかして今の瞬間移動で酔ったのですか?」


 オーウェンは小首を傾げながらソファに座る。


 ヴィンセントとウィルも何事もなかったかのようにソファへと移動した。


 前世でもジェットコースターは苦手だったけれど、今世でもその体質を受け継ぐなんてついてないな。


 ムカムカする胃を押さえながら僕もソファに座った。


 すかさずオーウェンが魔法で飲み物を出してきた。


「これを飲んでごらんなさい。少しは落ち着きますよ」


 オーウェンに勧められて僕は恐る恐るカップを手に取ると一口飲んでみた。


 さっぱりとした味がむかついた胃を元に戻してくれる。


「顔色も良くなりましたね。何も言わずに瞬間移動をした事は謝ります。一刻も早くあの場を去らなければ『ウィルを返せ』と迫られかねなかったのでね」


 オーウェンに言われて僕は首を傾げた。


 元々向こうが手放したウィルなのに、どうして『返せ』と言ってくるんだろう?


「どうしてですか? だって向こうが要らないと処分しようとしたんですよね」


 そう言った後で僕はハッとして横にちょこんと座っているウィルを見た。


 相変わらずドラゴンの姿のウィルは何を考えているのか表情が読めない。


「エドアルド君も見たでしょう。ドラゴン族の王妃が抱いていた赤ん坊を。あれがウィルと同じ日に生まれたもう一

つの卵が孵った姿ですよ」


 オーウェンの言葉に僕は(やはり)と納得した。


 あの女性がドラゴン族の王妃で、ウィルの母親だったのだ。


 だけど、どうして同じ日に生まれた卵なのに、ウィルとあの子ではこうも姿が違うのだろうか?



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