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231 捨てられた存在

 玉座に座る男性は僕の顔を見て眉をひそめた。


「なんだ? 随分と不満そうな顔だな。何か言いたい事でもあるのか?」


 僕の後ろにいるオーウェンが小声で「エドアルド君」と呼びかけてくるが、僕はそれを無視した。


『卵を処分』などと簡単に言われて『はい、そうですか』と簡単にうなずける訳がない。


 前世の世界で大量生産されていた無精卵ならともかく、ドラゴンが生まれるとわかっている卵を簡単に『処分』と言ってほしくはない。


「どうしてそんなに簡単に『処分する』と言えるんですか!? ドラゴンが生まれるとわかっている卵でしょう? 貴重なんじゃないんですか!」


 僕の剣幕にも男性は表情を変えることもなく僕を見据えている。


 なおも僕が睨みつけると男性は軽くうなずいた。


「確かに貴重な卵ではある。だが、一組の(つがい)に一つしか生まれないはずの卵が二つもあれば話は別だ。どちらかは処分するしかない。それが我がドラゴン族の王族の掟だ。だが、処分しようとした矢先、オーウェン殿が現れた。今後一切ドラゴン族と関わらない事を条件にオーウェン殿に卵を渡したんだ」


 男性の言葉に僕は衝撃を受けた。


 つまり、ウィルはドラゴン族の王族の子供という事になる。


 しかも、僕と同じように『要らない』からと捨てられてしまったなんて…。


 おまけに今後一切ドラゴン族と関わらないと約束していたなんて…。


 だから、オーウェンはここに来るのを渋ったのか。


 だったらもう少し強く止めてくれれば良かったのに…。


 そんな不満を抱いていると、玉座の向こうから一人の女性が現れた。


 その手には生まれて間もないと思われる赤ん坊を横抱きにしている。


「あなた、ここにいらしたのね。 あら? お客様だったの?」


 玉座の横に立ちこちらを見下ろす女性を見て僕は(もしや)と思った。


 もしかしてあの女性がウィルの母親なんだろうか?


 そして、女性の腕の中にいる赤ん坊がウィルの双子の兄弟?


 そこで僕はさらなる疑問を抱いた。


 ウィルと双子ならば、ウィルと同じ大きさのはずだ。


 なのに、あんなに小さな赤ん坊だとはどういう事だろうか?


 僕はチラリと後ろにいるウィルに目をやった。


 ウィルは相変わらずフワフワとヴィンセントの隣で宙に浮かんでいる。


 ドラゴンの姿ではその心中が察せられないが、ウィルはどんな気持ちで父親とおぼしき男性の話を聞いているのだろう。


 再び男性に目を向けると、男性はヴィンセントの隣に浮いているウィルを見て「まさか…」と呟いた。


「オーウェン殿! もしかしてそこにいるドラゴンがあの卵から孵った子だろうか!?」


 勢い込んでオーウェンに問い質す男性に僕は違和感を覚えた。


 オーウェンに渡した卵は一つだけだったのだから、僕達と一緒にいるドラゴンがその卵から孵ったドラゴンである

ことに間違いはない。


 なのにどうしてそんなにも驚いているんだろうか?




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