230 面会
扉を抜けた先は森の中だった。
オーウェンはスタスタと迷うこともなく森の中を進んでいく。
しばらく歩くと森が開けて、あちらこちらに家が建ち並ぶ集落に着いた。
何人かの人の姿が見えたが、誰もがチラチラとこちらに視線を寄越すばかりで声をかけてくることもない。
なんとなく居心地の悪さを感じつつも僕はオーウェンの後をついて歩く。
ウィルはヴィンセントの横を飛びながら、物珍しそうにキョロキョロと視線をさまよわせている。
そんなウィルを見て人々がヒソヒソと声を交わしているのが気になった。
ドラゴンのウィルを見ても誰も騒がないところを見ると、ドラゴンの存在に慣れているのだろうか?
だが、この集落のどこにもドラゴンらしい姿は目に入ってこない。
どこか別の場所にドラゴンがいるのだろうか?
集落を進んでいくと奥にひときわ大きな屋敷が見えた。
オーウェンが入り口に近づくとなぜか勝手に扉が開いた。
自動ドアだろうか?
それともオーウェンが魔法で開けたのだろうか?
判断がつかないまま、オーウェンの後に続いて屋敷の中を進んでいく。
オーウェンは『勝手知ったる他人の家』と言わんばかりに廊下を抜けて行く。
するとなぜか目の前に大広間が広がっているのを見た。
大広間の奥には階段があり、壇上にある椅子には一人の男性が座っていた。
この集落を治めている人物なのだろうか?
まるで玉座に座っている王様のような雰囲気の人物だった。
「オーウェン殿か。そなたの用事は先日で終わったと思っていたが、今日は何の用だ?」
少し迷惑そうに思っているのがその口調から察せられた。
「そのはずだったのですがね。こちらにいるエドアルド君が『ぜひお礼を言いたい』と言い出しましてね」
確かにそうは言ったが、まるで今日の訪問が僕一人のせいみたいに言うのはやめてほしい。
そりゃそう願ったのは僕だけれど、もう少しオブラートに包んだような言い方があるんじゃないかな。
そう思いながら壇上に上がる階段の下へ近づき、男性の顔を間近で見て(おや?)っと思った。
三十歳前後の若い男性だが、どことなくウィルに似ているように見えた。
まさか…ね。
僕は頭に浮かんだ考えを打ち消して階段の下に立って、壇上にいる男性に向かって頭を下げた。
「この度はドラゴンの卵を譲っていただきありがとうございました。おかげで可愛いドラゴンが生まれました」
そう言って頭を下げたのだが、そんな僕の頭に「フン」という声が振り注いできた。
「別にそこまで礼を言われる覚えはない。どうせ処分しようと思っていた卵だからな。お前の役に立っているのならそれでいい」
男性の言葉に僕は思わず顔を上げた。
卵を処分?
つまり、オーウェンがもらって来なければ、ウィルは生まれてこなかったということだろうか?
僕は驚きのあまり、次の言葉が出てこなかった。




