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213 誕生

 馬車はやがて隣街の門へと近づいていく。


 近づくにつれて行列がズラッと続いているのが見えた。


 普通ならばこの辺りで速度を落としていき、行列の後ろに並ぶ事になる。


 だが、僕達が乗っている馬車は行列の横をスルスルとすり抜けていき、そのまま門を通過した。


「え?」と驚いていると、オーウェンは涼しい顔で軽く口元を緩めた。


「いちいち身分証の提示なんて面倒ですからね。そもそも私達は危険人物ではありませんからね。時間短縮ですよ」


 確かにそうかもしれないけれど、だからといって素通りするのもどうかと思うけどね。


 馬車は街の中を進んで行くと、やがて一軒の宿の前に止まった。


「今日はここに泊まりましょう。その卵ももうじき孵るでしょうからね」


 御者が開いた扉からオーウェンが先に降り立った。


 最後に降りようと思っていたが、ヴィンセントに先に降りるように促された。


 仕方なく先に降りてオーウェンの後を追うと、スタスタと宿の中へと入っていった。


「いらっしゃいませ。お部屋にご案内いたします」


 オーウェンの姿を見るなり、フロントに立っていた女性が僕達を部屋へと案内してくれる。


 建物の外見もだけれど、内装を見る限り高級な宿だというのが見て取れた。


 女性は階段を上がった先の扉を開くと、


「ごゆっくりおくつろぎください」


と、言い残して階段を降りていった。


「うわぁ」


 部屋に一歩入った僕は思わず声をあげてしまった。


 どこの貴族のお屋敷か、と思うくらい豪華な居間がそこに広がっていた。


 だが、肝心のベッドが見当たらない。


 その代わりあちこちに扉が付いていた。


 これはもしかして『スイートルーム』というやつだろうか?


 オーウェンとヴィンセントがソファに座ってくつろいでいるのを尻目に僕はあちこちの扉を開けて回った。


 ベッドルームが二か所もあり、そのベッドルームに備え付けのお風呂もあった。


 キッチンが無いのは火事を避ける為か、貴族は自ら料理をしない為かのどちらかだろうか?


 全ての扉を開けてオーウェン達の所に戻ると、オーウェンがくすくすと笑った。


「部屋の探検は終わりましたか? 学院は卒業したというのに随分と子供っぽいですねぇ」


 そんな事を言われても気になったんだから仕方がないじゃないか。


 そう反論したかったけれど、余計に笑われそうなので、フンとそっぽを向いてみせた。


 そんな僕を見てヴィンセントまでもがくっくっと笑いをこらえている。


 何か一言言い返そうと思った時、胸ポケットに入れた卵から「ピシッ」と小さな音が聞こえた。


 その音は僕だけでなくオーウェンにも届いたようだ。


「おや? 卵にひびが入ったみたいですね。そろそろ孵るんでしょうか?」


 僕はオーウェン達の向かいに座ると胸ポケットから卵を取り出した。


 確かに卵の殻の真ん中に一本のひびが走っている。


 卵の中で何かが動いているような振動が僕の手に伝わってくる。  


 卵のひび割れがまた少し大きくなる。「そろそろ出てきそうですね」


 オーウェンの言葉の通り、卵の殻の破片が割れて落ちる。


 やがて「ピィッ」という鳴き声と共に卵の中から一匹のトカゲが顔を覗かせた。



 

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