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21 三度目の正直?

 二人の会話を聞きながら、僕はエドワードの事を考えていた。


 僕達は双子として生まれて来たけれど、一卵性双生児なんだろうか?


 それとも二卵性?


 一卵性双生児の場合は、受精卵が二つに分かれたものだから、そっくりになると聞いている。


 いわゆるコピー人間ってやつかな。


 二卵性の場合は別々の受精卵だから、兄弟が同時に生まれたようなものらしい。


 エドワードは僕に似ているんだろうか?


 そういえばエドワードのお披露目があったと聞いたけれど、ダニエル達も出席していたのだろうか?


 僕はドキドキしながら二人の会話を盗み聞きする。


「エドアルドが陛下に似ているかなあ? エドワード様はどうだったっけ?」


「エドワード様のお披露目の時は、私達は遠くからチラ見しただけだし、エドワード様がグズってすぐに退席されたから、あまり良く見ていないわね。陛下と同じ金髪なのは分かったけれど、瞳の色までは判別出来なかったわ」


 セレナがその時の事を思い出すように告げた後、お茶に口をつける。


 どうやらエドワードとは髪の色は同じらしい。


 僕も男爵家に養子になった以上、いずれエドワードと顔を合わせる時が来るのだろうか?


 その時になって僕達がそっくりだと判明したら、どうなってしまうのだろう。


『他人のそら似』で済まされるのだろうか?


 そこで誕生日が一緒だとわかってしまったら?


 色々と悩みは尽きないが、そこで僕が生まれた時の父親の言葉を思い出した。


『双子が生まれた事を知っているのは私達三人だけだな』


『万が一、何処かで噂になったりした時は…』


 あの言葉通りなら、王家に双子が生まれたという事はまだ知られていないようだ。


 だったら、この先エドワードと顔を合わせる時があっても『他人のそら似』で済ませられるはずだ。


 それに…。


『二度ある事は三度ある』というから、もう何ヶ月かしたら、セレナが妊娠して僕がお払い箱になる日が来るかもしれない。


 僕は不必要に思い悩む事を止めた。


 それよりも、いかに年相応な振る舞いをするかが先決だ。


 前世ではあまり年下の従兄弟達とは関わってこなかったから、一歳児がどういう振る舞いをするか分かっていないんだよね。


 とりあえず、オムツだけは早く取りたい…かな。


 


 この屋敷で暮らすようになって、このエルガー男爵家について色々と知る事が出来た。


 男爵という肩書きではあるが、このアルズベリー王国が出来てからずっと続いている由緒正しい家であること。


 何度も陞爵の話があったにも関わらず、それを辞退し続けていること等だ。


 貴族の事は良くわからないけれど、男爵という地位は一番下だよね。


 他の貴族達からは見下されてしまうんじゃないのかな。


 そう思っても今の僕にはどうする事も出来ないからね。


 男爵家での生活はとにかく快適だ。


 僕の世話は基本、侍女がやってくれる。


 義父は仕事で昼間は王宮に勤めているとの事だった。


 義母は屋敷で夫の代理として仕事をし、時には茶会へと呼ばれて出かけて行った。


 僕を連れて行く事があるのかと思ったが、子供は七歳までは人前には出さないらしい。


 エドワードも一歳のお披露目はしたが、その後は人前に出る事はないそうだ。


 とりあえず、七歳まではエドワードに会う事はないようで少しホッとしたような、がっかりしたような複雑な気分だ。


 本当は少し気になっているんだよね。


 双子で生まれた実感はないけれど、あの日同じ母親から生まれたのは間違いないのだから…。


 



 エルガー男爵家に養子に来て半年が経った。


 すぐに義母に妊娠が発覚するかと思ったが、未だにその兆候は現れない。


 …おかしいな?


 前の二回とも数カ月で妊娠したのに、今回は何も起きないぞ?


 まさか、『三度目の正直』ってやつか?


 それならば、それでもいいんだけれど…。


 義両親は優しくて、愛情を持って僕を育ててくれるし、使用人達もいい人ばかりだ。


 このままここで暮らせたら最高だな。


 



 そして月日は過ぎ、僕と同じ年頃の子供を持つ貴族を集めたお茶会が開かれる事になった。


 僕も朝から侍女達に着替えさせられて、今鏡の前に立っている。


 鏡に映る僕はちょっとした貴公子だ。


「エドアルド、準備は出来たかしら?」


 義母のセレナがドレス姿で現れたが、妙に顔色が悪いようだ。


「はい、義母様(かあさま)。お顔の色がすぐれない様ですが、大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。今日はあなたのお披露目なんだから、これくらい…」


 そう言いかけた義母の身体がグラリとその場に崩れ落ちる。


「義母様!」


「きゃあ! 奥様!」


 うずくまった義母に駆け寄ったが、その顔は蒼白になっている。


 側にいた侍女が義母を抱き起こす。


「誰か! お医者様を!」


 屋敷の中は騒然となった。


 そして…。


 僕のお茶会の参加は流れてしまったのだった。





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