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20 三度目の養子先

 今回、僕を養子に迎えてくれたのは貴族の夫婦だった。


 貴族とは言っても男爵だというから、王族と関わる事はないだろう。


 最初に僕を養子に迎えてくれた夫婦も貴族だったけれど、王族との関わり云々を危惧する前に返品(?)されちゃったからね。


 今度はどうだろう?


 エルガー男爵夫妻はどちらも三十歳前後くらいに見えた。


 二人揃って孤児院を訪れたのだが、奥さんの方は僕を一目見るなり駆け寄ってきた。


「ねぇ、あなた。私、この子がいいわ」


 そう言って僕を抱き上げたのだった。


 いきなり抱き上げられてキョトンとしている僕に、彼女は優しく微笑んだ。


「こんにちは。あなたのお母さんになっても良いかしら?」


 その笑顔に僕も思わずニコリと微笑んでみせる。


 そんな風にトントン拍子に話が進んだのだった。


 その場で二人は養子縁組の手続きをすると、そのまま僕を連れて馬車に乗った。


 馬車の中での会話から、二人の名前が「ダニエル」と「セレナ」だと知った。


 結婚して十年も経つのに子供に恵まれなかったため、養子を迎える事にしたらしい。


 下位貴族だから血筋がどうの、という事もないんだろう。


 だけど、僕を養子にすると不妊だった人が妊娠したりしているんだけれど、今回もそのパターンになるのかな?


 馬車はやがて大きな門構えのお屋敷に着いた。


 男爵って身分の割にはお屋敷が大きくない?


 おまけに玄関先には何人かの使用人が僕達を出迎えている。


 その様子に僕が口をポカンと開けていると、セレナがクスクスと笑いを漏らす。


「あら? びっくりしちゃってるわ。孤児院より大きな家だから驚いちゃったのかしら?」


「今日からここがエドアルドの家だよ」


 ダニエルが僕を抱っこし直して、使用人達に僕の顔を向ける。


「皆、今日からこのエドアルドが私達の息子になった。よろしく頼むよ」


 使用人達を代表するように、黒いスーツに身を包んだ男性が一歩前に出る。


 多分、この男の人が執事なんだろう。


「エドアルド様ですね。使用人一同、全力でお世話させていただきます」


 深々と頭を下げられて、僕もちょこんと頭を下げる。


「まあ、エドアルドはお利口さんね。ちゃんとご挨拶出来るのね」


 セレナが僕の頭をよしよしと撫でてくれた。


 使用人達も微笑ましいものを見るような目を僕に向ける。


「奥様、早速エドアルド様をお部屋にご案内いたしましょう」


 ダニエルに抱っこされたまま、僕達は屋敷の中へと入っていった。


 建物は大きいけれど、全体的に古いお屋敷だとわかる。


 玄関ホールを抜けて廊下をしばらく歩いた先で、執事が足を止めて扉を開いた。


 天蓋付きベッドにテーブルとソファーが配置されている。


「ここは僕が子供の頃に使っていた部屋なんだ。今日からはここがエドアルドの部屋だよ」


 部屋の中を見回すと、一方の壁には造り付けの本棚があった。


 孤児院にも本はあったけれど、勉強のためのもので僕には触らせてもらえなかったっけ。


 ダニエルはカーペットの上に僕を座らせた。


「何かおもちゃが無かったかな? 昼食までしばらく相手をしてやってくれ」


「かしこまりました」 


 僕達の後をついて来ていたメイドの一人が、木箱の中から積み木を出してきた。


「エドアルド様。積み木で一緒に遊びましょうか」


 …どのくらいまでだったら怪しまれずにすむのかな?


 誰か一歳児の遊び方のマニュアル持ってない?





 適当に積み木を積んだりして遊んでいるうちに昼食の時間になった。


 僕はメイドに手を引かれ、トコトコと歩いて食堂に向かう。


 ダニエルが中央に座り、それを挟む形でセレナと僕が向かい合わせに座った。


 一応、一人でスプーンは使えるんだが、メイドが僕の横に付き添っている。


 零さずに食べる事は出来るんだけれど、わざと零したりして食事をしてみせる。


 食事の後、ダニエルとセレナはお茶を、僕はジュースを飲んでいた。


「それにしても、どうしてセレナはエドアルドが気に入ったんだい?」


 カップを持ち上げながら、ダニエルがセレナに問いかけている。


 あ、それは僕もちょっと気になるな。


「ウフフ。だって、初恋である陛下の幼い頃によく似ていたから…」


 ブッ!


 盛大にお茶を吹いたのはダニエルだったが、僕も思わずジュースを吹きそうになった。


 壁際に立っていたメイドが慌ててナプキンをダニエルに差し出し、汚れたテーブルを布巾で拭いたりしている。


「な、なんだって!?」


「あら。あの頃は殆どの女の子は陛下が好きだったし、男の子は王妃様であるリリベット様が好きだったでしょう?」 


 僕は素知らぬ顔でジュースを飲みながら、二人の会話に聞き耳を立てていた。


「まあ、確かにな。リリベット様と結婚出来るほどの身分ではなかったけれど、淡い気持ちを抱いてはいたな」


「でしょう? 今日、孤児院に行ってエドアルドをみた途端、幼い頃の陛下を思い出しちゃったの。気付いたらエドアルドを抱っこしていたわ」


 僕が国王の幼い頃に似ている?


 それってヤバくない?



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