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18 エドワード王子のお披露目

 陞爵・叙爵の儀が行われてから一ヶ月余りが経った頃。


 今度はエドワード王子のお披露目を兼ねた一歳の誕生日を祝う会が開かれた。


 国中の貴族達が招待されたが、特に集められたのはエドワード王子に近い年頃の子供を持つ貴族だった。


 勿論、この場に子供は連れてこられないが、近い将来子供達同士で交流を持たせる事は間違いないだろう。


 スタンレイ子爵の所にもエドワード王子よりも三歳年上の男の子がいた。


(いずれエドワード王子の側近にうちの孫を加えてもらわねば…。そこで功績をあげさせて、今度こそ陞爵されなくては…。これ以上マクレガンに遅れを取るわけにはいかないぞ)


 スタンレイ子爵は会場の末席に身を置きながら、壇上に現れたエドワード王子の様子を探った。


 よちよち歩きのエドワード王子が王妃に手を引かれて壇上の真ん中に立つ。


 先に壇上にいた国王がエドワード王子に向かって両手を伸ばすと、エドワード王子は嬉しそうな顔を見せて国王にその小さな手を伸ばした。


 国王がエドワード王子を抱き上げ、会場内の貴族達に見えるように頭を左右へと巡らせる。


 国王と同じ青い目が、キョトンとしたような表情で集まった人々を見ている。


 スタンレイ子爵が壇上のエドワード王子を見つめていると、すぐ近くでヒソヒソと話す声を耳にした。


「王妃様は綺麗に体型が戻られたわね」


「あら、本当ね。妊娠中はあれだけ大きなお腹をしていたのにね」


「あまりに大きなお腹をしているものだから『もしかして双子かしら』なんて噂もあったけれど、結局ただの太り過ぎだったみたいね」


 その言葉にスタンレイ子爵はハッとする。


(…まさか…。王妃様がお産みになったのは…双子?)


 スタンレイ子爵が聞き耳をたてている事に気付かないご婦人達は尚も話に花を咲かせている。


「双子にしては少しお腹が小さめだったわよ。もっとも八カ月を過ぎてからは公の場にお出にならなかったから、どこまでお腹が大きくなったかは知らないけれど…」


「きっと初めてのお子様だったから、栄養を取り過ぎちゃった所があったのね」


「それでもああやって元の体型に戻されるなんて流石だわ」


「あら、あなただって綺麗に戻っているじゃない」


「ありがとう。…でも、コルセットのおかげの部分が大きいわ」


「それを言うなら私もよ。そろそろコルセット無しで着られるドレスがきつくなってきたから作り替えてもらわないと…」


「あら、それならリメイクをされては?」


「リメイク? 何ですの、それ?」


「実はね…」


 ご婦人達の話が別の方向にいったのをきっかけに、スタンレイ子爵はそっとその場を離れた。


 だが、スタンレイ子爵の耳には先ほどのご婦人達の言葉がこびりついていた。


『もしかして双子かしら』


 スタンレイ子爵は王妃様のお腹がどのくらい大きくなっていたかを目にする事はなかった。


 だが、今のご婦人達の話からすると、双子を妊娠していると思われるくらいの大きさになっていたようだ。


 そして、本当に王妃様が双子をお産みになられていたら…。


 それを王家が隠そうとしたら…?


 それを手伝ったのが、侍女長であるサラだったら…?


 その見返りにマクレガン家の陞爵を願っても不思議ではない。


 だからこそ、爵位があがっただけで、土地を与えられたりはしなかったのだろう。


(上手いことやりやがって…)


 スタンレイ子爵には王妃と親しく出来るような娘はいなかった。


 息子しかいなかったため、国王と親しくはなれても王妃には近づけない。


 息子を一人しか授からなかったマクレガン家を嘲笑っていたが、まさかここに来てこんなしっぺ返しを食らうとは思わなかった。


(…だが、待てよ) 


 王家が双子が生まれた事を隠しているとしたら、もう一人の王子をどうしただろうか?


(流石に殺したりはしないだろう。たとえ王家の人間であっても無闇に人殺しをすれば、一般人と同じように裁かれる。…と、すると…)


 スタンレイ子爵は一生懸命に考えを巡らせる。


(何処かに養子に出したとも考えられない。…だとすると、考えられる事は一つ。孤児院に連れて行ったに違いない)


 スタンレイ子爵はそう結論づけた。


(とりあえず、その子供を探してみるか…)


 見つけてどうするかは、まだ決められなかった。


 だが、もう一人の王子を見つけて、その事をネタにマクレガン家を失脚させられないかと漠然とした考えを持つ事は止められなかった。


(見てろよ、マクレガン。また子爵いや男爵へと引きずり降ろしてやるからな)


 スタンレイ子爵は黒い笑みを浮かべると、一足先に王宮を後にした。



 


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