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161 ブライアンからのレッスン

 その後もソファでの座り方とか、首の動かし方とか、ブライアンに細かく指摘される。


「エドワード王子はそんなに歯を見せて笑ったりはしません! もっと背筋を伸ばして! 頭を下げるのもそんなに深々と下げる必要はありません! エドワード王子はこの国で二番目に位の高い方なんですよ!」


 エドワード王子のお辞儀の仕方とか、歩き方までもブライアンにレクチャーされる。


 それにしてもよくそこまでエドワード王子の仕草を熟知しているものだと感心するよ。


 いくら幼馴染で小さい頃から交流があるといってもそこまで観察しているものかね。


 従兄弟同士でもあるし、同い年だからそれこそ双子のように過ごしてきたんだろう。


 宰相の家は王妃の実家でもあるから、割と頻繁に行き来していたのかもしれないし…。


 僕にはわからないエドワード王子とブライアンの十二年間がそこにはあるんだろう。


 だからこそ、突然現れた僕に対して複雑な思いをブライアンは持っているに違いない。


 僕が捨てられずに王宮で育っていたら、ブライアンと三人で違った関係を築く事が出来ていたんじゃないだろうか?


 それを考えるとつくづく十二年って長いな、と感じてしまう。


 そんな感傷的な気分に浸る間もなく、ブライアンの指摘がまたしても僕に襲いかかる。


「そうじゃありません! もう一度!」


 やれやれ…。


 影武者も楽じゃないな。




 その後、夕食の時間になり、サラがワゴンを押して僕達の部屋に夕食を届けに来た。


 ソファからテーブル席に移動して、夕食を食べるのだが、当然のようにブライアンからあれこれと指導を受ける。


 本当にここまで必要なんだろうかと思うのだが、念には念を入れてという事だろう。


 何しろ、既にエドワード王子は公務として様々な場面に出席している。


 人前で飲食もしているし、言葉も交わしている。


 王子という立場からいろんな人に注目されているのは分かりきった話だ。


 貴族の中には自分の娘を王子の婚約者に、と目論んでいる者もいるだろう。


 そういう人物がエドワード王子の一挙手一投足を事細かに観察していないとも限らない。


 いかに人々に違和感を抱かせないようにするのかが重要なのだ。


 ブライアンの指導を受けながら夕食を終えると、僕はソファにぐったりと身体を預けた。


 だが、途端にブライアンから叱責が飛んでくる。


「エドアルド様! そこで気を抜いてはいけません! 常に万人に見られていると意識してください!」


 …やれやれ。


 やっぱり僕には王宮で暮らすのは無理そうだ。




 夕食を終えるとサラはテーブルの上を片付け、部屋の中にある別の扉から中へ入っていった。


 しばらくするとそこから出てきて僕とブライアンにこう告げた。


「お風呂のご用意が出来ました。いつもでしたらお世話をする係がいるのですが、本日はお一人で入っていただく事になります」


 サラは申し訳なさそうに言うが、お風呂の世話までされるなんて僕には到底無理だ。


「大丈夫です。一人で入れます」


「そうですか。それではこれを…。下着は新しい物を用意させていただきましたが、寝間着はエドワード王子の物になります」


 そう言ってサラは僕に下着と寝間着を手渡してくれた。


 うわぁ!


 下着も寝間着もめちゃくちゃ手触りが良いな。


 普段僕が使っている物とは別格だよ。


「あ、どうも」


 僕はそれを受け取るとそそくさと浴室の方に向かった。


 浴室に入って一人きりになった途端、言いようのない疲労感が僕を襲う。


 脱衣かごに脱いだ服を放り込むと、かけ湯をして湯船に浸かった。


 温かいお湯に浸かっているとじわじわと緊張していた身体が緩んでくる。


 こんな状態で明日明後日と乗り越える事が出来るんだろうか?


 だけど、やると決めた以上、なんとか乗り切らないとね。


 僕は束の間の休息に思い切り浸るのだった。


 

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