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160 サラの謝罪

 国王は僕の視線を受けて「ゴホン」とわざとらしい咳払いをした。


「エドアルドがいる間、この屋敷には誰も近づかないように言い含めている。したがってエドアルドの世話はここにいるサラに任せる。サラ、後は頼んだぞ」


「かしこまりました。それではエドアルド様。お部屋にご案内いたします。ブライアン様もご一緒にどうぞ」


 サラが僕とブライアンを扉の方へと誘導する。


 僕は立ち上がると軽く国王に頭を下げて、ブライアンと共にサラの後について部屋を出た。


 先ほどのエドワード王子の部屋の真向かいの扉をサラが開けてくれた。


 エドワード王子の部屋と同じくらいの広さの中、奥にベッドが二つ並んで置かれている。


 どうやらブライアンも一緒にこの部屋に滞在するようだ。


 入ってすぐの所に置かれたソファにブライアンと向かい合って腰を下ろすと、脇に立っていたサラが突然その場にひれ伏した。


 な、なんだ!?


 もしかして土下座か!?


 突然のサラの行動に僕とブライアンは声も出さずに驚いていた。


「エドアルド様、本当に申し訳ありませんでした」


 床に頭を擦り付けたまま、サラが僕に謝罪の言葉を述べた。


「いくら、国王陛下から命令されたとはいえ、生まれたばかりのエドアルド様を捨てるなど、人としてあるまじき行為だと反省しております」


 サラの謝罪が続くのを僕は黙って聞いていた。


「あの頃の私にはなんとかして実家を陞爵させようと躍起になっていました。陛下からの命令を盾に実家を陞爵出来ると目論んだのです。本当に申し訳ございません」


 サラは平謝りに謝っているけれど、要は自分の行動を正当化させるための言い訳にしか聞こえない。


 本当に申し訳ないと思っていたのなら、僕を捨てたりせずに実家に連れ帰って育てる事も出来たんじゃないだろうか?


 そんなふうにうがった考えをするのは、前世で弟に殺されたせいだろうか。


 どちらにしてもこうやってサラが謝っている以上、受け取らないとまずいだろう。


 許す許さないは別として…。


 ブライアンが侮蔑の視線をサラに向けているのは、僕を捨てた上にサラが国王の愛人になっている事への表れだろう。


 いつまでもその場に這いつくばっていられても迷惑なので、さっさとその場から退散してもらおう。


「わかりました。今更謝ってもらっても遅いですが、今の両親に養子にしてもらえたのである意味感謝してますよ。とりあえず立ってください」


 僕の言葉にサラは一瞬ピクリと肩を動かしたが、やがてゆっくりと立ち上がった。


 そして僕とブライアンにお茶を入れると深々と頭を下げた。


「それではご用がありましたらそちらのベルでお呼びください。後ほど夕食を運んで参ります」


 サラはテーブルの上のベルを指し示すと、もう一度お辞儀をして部屋を出て行った。


 サラが出て行った途端、僕はぐったりとソファにもたれかかった。


 まだ王宮についてそれほど時間が経っていないというのに、疲労感が半端ない。


「あれだけで許して良いんですか? もっと辛辣な言葉を投げかけてやっても良かったんじゃないでしょうか?」


 ブライアンがサラが出て行った扉を睨みつけている。


 僕の事を嫌っていると思っていたブライアンからそんな言葉が出てくるとは思わなかった。


「もういいよ。何を言っても今更十二年前に戻れるわけでもないし…」 


 たとえ時を戻してあげようと誰かに言われても僕は断るだろう。


 今の両親とクリスと過ごした時間は僕にとってはとても大事なものだ。


 それを手放してまで過去に戻りたいとは思えない。


 ブライアンはまだ不満そうな顔をしていたが、すぐに僕のカップの持ち方にダメ出しをしてきた。


「違います! エドワード王子はそんな持ち方はしません! カップを口元に持っていく時ももっと優雅に!」


 やれやれ。


 お茶一杯飲むのにも苦労するとは…。


 こんな調子でエドワードに成りすますなんて出来るんだろうか?

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