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157 影武者

「そんな所に突っ立っていないで座りなさい」


 王妃がぼうっと立っている僕にピシャリと告げる。


「は、はい!」


 慌てて背筋を伸ばした僕はギクシャクとした動きで二人の前に腰を下ろした。


 国王も王妃も僕の動きをじっと注視している。


 僕が向かいのソファに腰を下ろすと、国王がポツリと呟いた。


「本当にエドワードに瓜二つだな。一瞬、エドワードが入って来たのかと思った…」


 国王に同調するように王妃も口を開く。


「本当にね。以前会った時も思ったけれど、きっと二人並んだら見分けがつかないでしょうね。これならきっと大丈夫だわ」


 さっきから二人はエドワード王子と僕の事を話しているが、そもそもエドワード王子はいったいどうしたんだろうか?


 まさか!?


 死んだ!?


 思わず不吉な考えが頭に浮かんでしまい、僕はブルブルと頭を振ってその考えを追い払う。


「あの…いったい何の話でしょうか?」


 僕が尋ねると王妃はキッと宰相を睨みつけた。


「あら? 馬車の中で話をしたんじゃないの? お兄様らしくもないわね」


 どうやら王妃は宰相に説明させようとしたらしいが、宰相はそれをしなかったようだ。


「ここはやはり国王陛下と王妃様から説明されるべきだと思われます」


 しれっとした態度で宰相が答えるが、流石は王妃の実の兄だけある。


 突き刺すような視線を向けられても平然とした態度を崩さない。


 どうやら宰相は僕達に実の親子としての時間を持たせるつもりのようだ。


 今更親子として接しろと言われても、十二年間ほったらかしにされていた時間が埋まるわけもない。


 そもそも僕はこの二人に親らしい事なんてこれっぽっちも望んではいない。

 

 それでも国王は僕に歩み寄る気があるらしく、宰相の言葉に徐にうなずいた。


「わかった。私から説明しよう。実はエドワードが先日から病気で臥せっていてね。医者の見立てでは回復までにもうしばらく時間がかかるらしい。だが、明日には隣国の大使を迎えた晩餐会が開かれる。これにはエドワードも出席する事になっていて、今更出られないとは言えないのだ。どうかエドワードに成りすまして出席してもらえないだろうか?」


 エドワード王子に成りすます?


 もしかして僕にエドワード王子の影武者をやれって言う事なんだろうか?


 実の親からの初めての頼まれ事が、双子の片割れの影武者の依頼だなんて、全く以って笑えない。


「それを僕が承諾するとでも思っているんですか?」


 思わず声が尖ってしまうのは仕方のない事だろう。


 そんな事でわざわざここに連れてこられるなんて思わなかったよ。


 国王と王妃がいるという事はここは王宮の中にあるプライベートゾーンなんだろう。


 エドワード王子も何処かこの近くの部屋で寝ているに違いない。


 そもそもエドワード王子も僕が影武者をやる事に賛成なのだろうか?


「もしかしてエドワードから僕に影武者を頼むように言ったんですか?」


 うっかり二人の前でエドワード王子の事を呼び捨てにしたけれど、特に何も言われることはなかった。


「いいえ。むしろ止められたわ。エドアルドに余計な負担はかけたくないそうよ。そうは言っても明日の隣国との晩餐会はエドワードは必要不可欠なの。何しろ婚約者候補である隣国の王女がいらっしゃるんですもの」


 はあっ!?


 それってつまりお見合いって事じゃないか!


 そんな大事な場面に僕を影武者にするっていったいどういうつもりだよ!?


 僕は思わず頭を抱えてしまった。


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