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156 到着

 僕は向かい側に座るブライアンの姿を見て(あれっ?)と思った。


 学院に来ていたのなら制服を着ているはずなのに、彼が着ているのはどう見ても私服のようだ。


 もしかしてブライアンも今日は学院を休んでいたのだろうか?


 クラスが違うので確かな事は言えないが、ブライアンの姿を見る限りそうなのだろう。


 それにしても二人は僕をどこに連れて行く気なんだろう。


 宰相とブライアンの親子が揃っているという事はアルドリッジ公爵家に向かうのだろうか?


 外の景色を見ようとしたが、窓にはカーテンが下ろされていて何も見えない。


 中から外の景色が見えないという事は、外からもこの馬車の中に誰が乗っているかわからないという事だ。


 そんな隠密行動を取らなくてはいけないなんて余程の事が起こったに違いない。


 やがて馬車が止まると重い扉が開くような音が聞こえた。


 どうやらどこかの門が開いた音のようだが、その音が止むと再び馬車が走り出した。


 門を入ったはずなのになかなか止まらないのはそれだけ玄関までの距離があるという事だろう。


 しばらく走っていた馬車の速度を落とすと、ようやく馬車が止まった。


 御者が降りて扉に近づいてくる足音が聞こえる。


 外から扉が開けられると真っ先にブライアンが降りて次に宰相が続いた。


 宰相が振り返り僕に手を差し出してきた。


「エドアルド様、どうぞお降りください」


 差し出された手を無視するわけにもいかず、僕はその手につかまって馬車から降りた。


「…ここは…?」


 僕は降りた先の閑散とした玄関に違和感を感じた。


 普通の貴族の屋敷なら出迎えの執事か使用人かがいるはずだ。


 なのにここには玄関先に立つ護衛騎士すらいなかった。


「今日は特別に人払いをしています。それよりも中に入る前にその眼鏡を外してもらえますか?」


 宰相に言われて僕は渋々と眼鏡を外してポケットに仕舞った。


 宰相は眼鏡を外した僕の顔をじっと見ると満足そうにうなずいた。


「さあ、どうぞこちらへ…」


 宰相が自ら扉を開けて屋敷の中へと入って行った。


 その後を僕とブライアンが続いて行くのだけれど、屋敷の中はかなり豪華な造りになっていた。


 いったいここは何処なんだろう?


 キラキラと輝く装飾品や美術品に目を奪われ、思わずキョロキョロとしてしまう。


 宰相は歩き慣れた場所なのか迷いもなく進んで行く。


 やがて一つの扉の前で立ち止まった。


 宰相が扉をノックすると、中から「どうぞ」という女性の声が聞こえた。


 今の声は誰だ?


 何処かで聞いたような声に誰の声かを必死に思い出そうとするが、まるで見当もつかない。


 考えている間にも宰相は扉を開いて僕に中に入るように促した。


 僕は部屋の中に入ろうとして、その場にいる人物に驚きのあまり固まってしまった。


「エドアルド様、早くお入りください」


 宰相に部屋の中に押し込まれるように足を踏み入れた。


 僕に続いて宰相とブライアンも部屋の中に入ると、そこにいる人達に深々と頭を下げた。


「お待たせいたしました。エドアルド様を連れてまいりました」


 部屋の中央に据えられたソファには国王陛下と王妃が並んで座っていた。


 王妃の姿を見て先ほどの声の主が王妃であることにようやく思い至った。


 どうやら僕を連れてくるように宰相に言いつけたのはこの二人のようだ。


 それにしてもどうしてこの二人が僕を呼び出したんだろうか?


 今更僕に王宮に戻って来いとか言うんじゃないよね?


 僕は戦々恐々としながら二人を見つめるのだった。

 

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