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15 新しい家での生活

 ハンナと積み木で遊ぶのにも飽きた僕は、ハイハイをして部屋の中を探検する事にした。


 僕が動き回るのをハンナは止める事もなく、ニコニコしながら見守っている。


 僕はハイハイをしながらテーブルセットに近付いた。


 椅子の座面に手を伸ばしてつかまり立ちをする。


 両足に力を入れて立ち上がったが、それも一瞬の事で僕は呆気なく尻餅をつく。


「まあまあ。もうつかまり立ちが出来るんですか? エドアルド様は力が強いんですねぇ」


 僕の後から見守っていたハンナが、笑いながら僕を抱き上げた。


 その後、昼食の時間になり、ハンナは僕を連れて食堂へと向かった。


 広々とした食堂に両親の姿はない。


 僕がキョロキョロすると、ハンナはちょっと首を傾げた。


「もしかして旦那様と奥様を探しておいでですか? お二人は仕事に行かれたので、こちらで昼食は取られないんですよ。夕食はご一緒出来ますからね」 


 随分と多忙な両親のようだ。


 今日、孤児院に行ったのも、スケジュールをやりくりしての事かもしれない。


 広いテーブルにポツンとあるベビーチェアに座らされて、ハンナから離乳食を食べさせてもらう。


 自分で食べようと思えば食べられるかもしれないけれど、流石にこんな赤ん坊が一人で食事をしたら気味悪がられるだろう。


 だけど、いつぐらいから一人で食事をしても大丈夫なんだろうか?


 普通の赤ん坊のフリもなかなか難しいな。


 昼食を終えてお腹がいっぱいになったら、今度は眠たくなってきた。


 僕の瞼が重くなってきたのを、ハンナは見過ごさない。


「そろそろおねむですか? ベッドに行きましょうね」


 ハンナに抱っこされてゆらゆら運ばれると、更に瞼が重たくなってきた。


 頭脳は大人でも、身体は赤ちゃんだからね。


 あっという間に僕は夢の国に直行していった。




 ぱっと目を開けると見慣れない天井がそこにあった。


 クルリと寝返りを打って身体を起こすと、誰かが近寄ってきた。


「お目覚めですか? エドアルド様」


 声のした方を向くと、ニコニコ顔のハンナがそこにいた。


 起き上がった僕をまたひっくり返して寝かせると、恒例のオムツ替えタイムだ。


 オムツを替えてもらほき上げて庭を散歩してくれた。


 そのうちに夕食の時間になり、またもや食堂へと向かう。


 ハンナにベビーチェアに座らされた頃になってようやく父上と母上が食堂に姿を現した。


「エドアルド、いい子にしてた?」


 母上が食堂に入るなり僕に近寄って頭を撫でる。


 その後ろから入ってきた父上も僕の頭を撫でにくる。


「済まないな、エドアルド。私もキャサリンも忙しくてなかなか構ってやれないんだ」


「ジョージがアレコレ手を出しすぎるからよ。今のままじゃエドアルドと遊ぶ時間が全然ないわ」


「そうだな。もう少し人手を増やすようにしようか。そうすればキャサリンだけでもエドアルドと過ごす時間が取れるだろう」


 僕はハンナにご飯を食べさせてもらいながら、二人の話を聞くとはなしに聞いていた。


 食事を終えると僕は父上に抱っこされて僕の部屋へと向かった。


 ハンナがついてこない所をみると、これから夕食を取るのだろう。


 しばらく両親は僕の相手をしてくれていたが、ハンナが戻ってくると僕をハンナに託した。


「それじゃ後は頼んだよ」


「じゃあね、エドアルド。おやすみなさい」


 そう言い残すと二人はさっさと部屋を出ていってしまう。


 こういう所は前の養子先と一緒だな。


 子供は基本、乳母が面倒を見て、両親はあまり関わってこない。


 前世の父親と一緒だな。


 僕と和也の父親は会社社長という事もあり、滅多に顔を合わせる事はなかった。


 母親が僕達の面倒を見ていたが、双子だったため、何人かのお手伝いさんが交代で世話をしてくれていた。


 和也とはそれなりに仲の良い兄弟だと思っていたのにな。


 ぼうっと考えていると、ハンナが僕を抱き上げた。


「そろそろお休みの時間ですね。お風呂に入りましょうか」


 やった!


 久しぶりのお風呂だ。


 お風呂に入れられて、ほかほかの身体に真新しいパジャマに着替えさせられる。


 いや~。いい湯だったな。


 幸せな気分でフカフカのお布団に入ると、ハンナは僕が眠るまで側に付いていてくれた。


 こうして僕は新しい家での一日を終えた、





 そんな優雅な生活もたった三カ月で終わりを迎える。


 そう。


 母上が妊娠したのだった。


 二人にはそのまま僕を養子にしておくという選択肢はなかったようだ。


 結婚して十年以上、子宝に恵まれなかった二人に待望の赤ちゃんが出来たのだ。


 当然、自分の子供が一番可愛いに決まっている。


 それに今まで築いて来た商会を赤の他人の僕に渡したくはないという、そんな思いもあるのだろう。


 十カ月を迎えた僕は三度(みたび)孤児院の門を潜ったのだった。


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