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146 訪問者

「はい」


 返事をすると、扉が開いて侍女の一人が入って来たのだが、どこか慌てているような印象を受けた。


「エドアルド様、奥様がお呼びです。王宮から宰相様がお越しになりました」 


 うん?


 王宮から宰相様?


 すぐには侍女の言った言葉が理解出来ずにポカンとしていたが、瞬時に宰相が我が家に来たのだと分かった。


 そういえば、王宮に報告書を提出するって言っていたな。


 子供の僕を王宮に呼びつけるわけにもいかないから、宰相が事情を聞いて回っているんだろう。


 まさか、アーサーがここにいるとは知らないから僕だけを呼んでいるのだろう。


 そうは思ったが、それでも宰相の突然の訪問は想定外だ。


「アーサー、どうしよう?」


 アーサーに助けを求めたが、アーサーはブルブルと頭と手を振る。


「宰相様はエドに会いに来たんだろ? 僕はここで待っているからね。早く行かないと宰相様をお待たせしてしまうよ?」


 肝心な時に頼りにならない友人だが、逆の立場なら僕も同じ反応を見せただろう。


 そう考えるとアーサーの態度に文句は言えない。


 渋々立ち上がり、外していた黒縁眼鏡をかけて僕は侍女と共に部屋を出た。


 廊下を進んでいるうちに行き先は応接室だと分かった。


「ちょっと待って」 

 

 侍女が扉をノックしようとするのを抑えて、僕は深呼吸をして気分を落ち着かせた。


 ノックの後、侍女が扉を開けると同時に、ソファーに座っている人物の視線が僕を捉えた。


 義母様と同じくらいの齢の男性の顔にどこかで見たような印象を受けた。


 軽くお辞儀をして部屋に入って義母様の隣に腰を下ろすまで、宰相は僕をじっと見つめたままだった。


「君がエドアルド君だね。少し二人きりで話をしたいから、セレナは席を外してもらえるかな?」 


「え?」


 宰相に言われて義母様は少し狼狽えた素ぶりで僕を心配そうに見てきた。


 僕が軽くうなずいて見せると、義母様は仕方がなさそうに立ち上がった。


「わかりました。エドアルド、サイラス様に失礼のないようにね」


「はい、義母様」 


 僕が頷いて見せると義母様は軽く微笑んで見せた後、応接室を出て行った。


 二人きりになっても宰相はすぐには口を開かずに僕の顔をじっと見つめたままだった。


 そんなに見つめられると穴が空いてしまいそうなんだけどな。


 いたたまれなくなって身体をもじもじさせると、ようやく宰相は口を開いた。


「エドアルド様。宰相のサイラス・アルドリッジと申します。座ったままのご挨拶をどうぞお許しください」


 いや、それを言うなら僕だってお辞儀をしただけでちゃんとした挨拶をしてないよ。


 っていうか『エドアルド様』って呼んできたけど、どういう事?


 義母様の事は呼び捨てだったのに、急に『君』が『様』に変わるってどういう事?


 宰相の態度にぐるぐると頭を悩ませていると、彼は更に爆弾を落としてきた。


「エドアルド様。失礼ですが、その眼鏡を外していただけますか?」


 宰相のお願いに僕はピキリと固まった。


 僕への態度と眼鏡を外して欲しいとの懇願。


 まさか、宰相は僕が捨てられた王子だと知っている?



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