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143 王妃との会話(サイラス視点)

 サイラスはフィリップ王の執務室を出ると、そのまま王妃の元に向かった。


(今の時間はお茶会を開いているはずだが…)


 週に何回か、貴族夫人を招いてお茶会を開催しているのを思い出し、サロンルームの方に向かった。


 そこには王妃と数人の夫人達が楽しそうにおしゃべりをしているのが見えた。


 サイラスが近づいて行くと、こちらを向いていたリリベットが目ざとく気付いた。


「あら? 何か御用かしら?」


 他の貴族夫人達の手前、サイラスは妹に向かって恭しく頭を下げる。


「ご懇談中、誠に申し訳ございません。取り急ぎ確認したい事ができましたので、お時間をいただけませんか?」


 リリベットはわざとらしくため息をつくと、出席している夫人達を見回した。


「残念ですが、今日はこれでお開きにしましょう。この埋め合わせはまた別の機会にいたしますね」


 サイラスが姿を見せた時点でこうなる事は予想していたのだろう。


 夫人達は素早く帰り支度をすると、リリベットとサイラスに挨拶をしてサロンルームを出て行った。


 給仕をしていた侍女達も姿を消し、サロンルームには兄妹二人だけになる。


 リリベットは新しく入れ替えられたお茶を一口飲むと、サイラスを軽く睨んだ。


「それで? 一体何の御用かしら?」


 リリベットの視線を軽く受け流してサイラスもお茶に口を付けて喉を潤した。


「さっき、陛下から打ち明けられた。お前は双子を産んだそうだな」 


 一瞬、リリベットの手の動きが止まったが、すぐに何事もなかったかのようにカッフを口に運びお茶を飲んだ。


「…そう。とうとう認めたのね。よくもまあ、私に白を切ってくれたわね」


 さして驚いていないリリベットの態度に、サイラスは先ほどのフィリップ王の言葉を思い出した。


『リリベットは自分が双子を産んだ事を知っているのかもしれない』


 フィリップ王の言葉は正しかったのだと確信した。


「やはり知っていたのか。どうして気づいたんだ?」


「なんとなく違和感があったのよね。出産前のお腹もかなり大きかったし…。決定的だったのは街であの子を見かけたからよ」


「何だって!」 


 リリベットの発言にサイラスは頭をガンと殴られたような衝撃を受けた。


「街で見かけただって!? リリベットはその子がどこにいるのか知っているのか?」


 身を乗り出すように問い詰めてくるサイラスにリリベットは少しばかり気圧されていた。


「え、ええ。会って話をしたわ。今はエルガー家の養子になっていたわ」


 リリベットの口から「エルガー家」と出て来た事で、フィリップ王の推測が当たっていた事を確信した。


 額に手を当てて考え込むサイラスにリリベットが逆に尋ねてくる。


「一体どうしたの? 急に双子の事を認めるなんて、何かあったの?」


 サイラスは額に手を当てたまま、視線だけをリリベットに向けた。


「さっき、学院から緊急の報告書が届いた。学院の食堂に魔獣が出て、それを退治したのがエドワード王子とエドアルド・エルガー男爵子息だそうだ」


「なんですって! 魔獣!? それで、エドワード達に怪我はないの!?」


 椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がったリリベットに、サイラスは少しばかり安堵した。


 フィリップ王の事は見限っていても、子供に対する愛情はあるようだ。


「大丈夫だ。ブライアンもその場にいたらしいが誰も怪我はしていないらしい」 


 リリベットはホッとした顔を見せると何事もなかったかのように澄ました顔で椅子に座り直した。


「それで、お兄様はエドアルドをどうするおつもり?」


「もちろん、会いに行くよ。本人が望むなら王宮に迎え入れてもいいと陛下は仰ったからね」


 それを聞いてリリベットはクスッと笑いを漏らした。


「あの子は王宮には来ないと思うわ。以前聞いた時には『迷惑です』ってはっきり言っていたもの」


「それは以前の話だろう? 今は考えが違っているかもしれない」


 サイラスはお茶を飲み干して立ち上がると、最後の質問をリリベットにぶつけた。


「エドワード王子はエドアルド様を自分の兄弟だと知っているのかな?」


「あれだけそっくりなんだもの。何かしら感じ取っているんじゃないかしら?」


 リリベットが肩をすくめると、サイラスは軽く頷いてサロンルームを後にした。





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