136 一蓮托生?
「エドワード王子と双子と言う事は、エドはこの国の王子様…?」
そう呟くアーサーの顔から血の気が引いていき、真っ青になっていく。
「叔母上が双子を産まれたなんて、そんな話は聞いてないぞ…」
ブライアンが『叔母上』と言うのを聞いて、王妃がブライアンの父親の妹だというのを思い出した。
叔母である王妃が双子を産めば、当然話題に上がってもおかしくはない。
アーサーは顔を青くしながらも何かを思い出したようにハッとした顔になる。
「エド。前世の記憶があるって言っていたよね。もしかして生まれた時から自分が王子だって知っていたの?」
アーサーに問われて僕は仕方なくうなずいた。
「そうなんだ。前世の記憶を持ったまま転生したから、自分が双子の王子の片割れだと理解出来たんだ。そして二百年前の騒動を繰り返さないためにって僕は捨てられたんだ。だけど、赤ん坊の身体じゃ抵抗しようにもどうにもならないだろう? 喋れるようになって『捨てられた王子』なんて言っても誰も信じてくれないだろうしね」
僕の説明に反論するようにブライアンが口を開く。
「それにしても、生まれたばかりの赤ん坊を捨てるなんて! せめて何処かの家に養子に出すとか…」
「何処に養子に出すんですか? 下手な家門に養子に出して、その家が王位を狙ったらどうするんですか?」
ブライアンの発言を遮った声に僕達は一斉にそちらを振り返った。
食堂の入り口にクリフトンが呆れたような顔で佇んでいる。
…いつの間にそこにクリフトンが?
口を挟んで来たという事は僕の話を聞かれていたって事だろうか?
「ク、クリフトン… お前、今の話を!?」
ブライアンの狼狽えた声にクリフトンはニコリと笑いを返す。
「聞かせていただきましたよ。エドワード王子の姿が見当たらないので探していたところ、何故か勝手に足がこちらに向かいましてね」
勝手に足が向いたという事はオーウェンがクリフトンを導いたのだろうか?
「それに一部の貴族女性の間では『王妃が双子を産んだのでは?』という噂が出ていましたからね。…それにしても本当にそっくりですね」
クリフトンはこちらに近づいて来るとまじまじと僕とエドワード王子の顔を見比べた。
「エドアルド君は今さら王宮には戻りたくないのでしょう? それなら、この先バレないように学院生活を送ることを優先に考えていきましょう。これだけ仲間がいればどうにでもなりますよ」
なんだかやけに楽しそうな顔をしたクリフトンの真意がよくわからない。
だが、オーウェンがこちらに寄越したのなら僕達にとって悪くない話なんだろう。
「クリフトン、ブライアン、アーサー。こうして会えたエドアルドと平穏な学院生活を一緒に送りたいんだ。どうか協力してくれ」
エドワード王子に請われてアーサーはピシリと姿勢を正す。
ブライアンとクリフトンも恭しくエドワード王子に頭を下げる。
その様子を見てエドワード王子に視線を走らすと軽く微笑んでうなずかれた。
こうして僕達五人で秘密を共有する事になった。




