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135 後始末

 僕とエドワード王子が返事に困っていると、見かねたオーウェンが口を開く。


「エドアルド君、エドワード王子。私達の存在は記憶から消しますが、あなた達の事はそのまま残しておきます。いつまでも私達に頼られていてはこの先困る事も増えてきますからね。それに事情を知っている仲間を増やす事はそんなに悪い事ではありませんよ」


 オーウェンが淡々と諭してくるが、その間アーサー達はピクリとも動かなくなっていた。


 もう既にアーサー達の記憶を改ざんし終わった状態なのだろう。


「わかりました。…ところで、この惨状はどうするんですか?」


 僕はニーズヘッグに壊された食堂の掃き出し窓を指差した。


「後でマーリンとして私が修復しますよ。ああ、これを壊した魔獣の死骸も必要ですね。ジャイアントモールを出しておきましょうか」


 オーウェンがサッと腕を一振すると、割れたガラスの破片の上に巨大な何かの死骸が現れた。


 焦げ茶色の体毛に覆われた身体に尖った顔の先に鼻があり、前足は鋭い爪が長く伸びている。


 …もしかして大型のモグラかな?


「これだとあなた達が倒したようには見えませんね。ちょっと燃やしましょうか」


 オーウェンがジャイアントモールに掌をかざすと、一瞬でその巨体は炎に包まれた。


 毛と肉の焼ける匂いが鼻を突く。


 程よく焼けたところでオーウェンは火を消した。


 食堂の天井や床も焼けた跡が残っているけれど、どうせ後で自分で修復するのだから想定内だろう。


「これでよろしいでしょうか?」 


 オーウェンに問われて僕とエドワード王子は顔を見合わせてうなずき合った。


 一人でコソコソするよりは学院内に味方がいた方がやりやすいだろう。


 それに、学院を卒業したらアーサーとパーティーを組む予定なのだから、秘密はない方がいいに決まっている。


 僕達に覚悟が決まったのを見て取ると、オーウェンはパチンと指を鳴らした。


 途端にオーウェンとヴィンセントの姿は消えて、アーサーとブライアンが僕達に迫ってくる。


「アーサー、今説明するから落ち着いて」 


「ブライアン、落ち着け!」 


 僕とエドワード王子が二人を押しとどめると、二人はしぶしぶながらその場に足を止めた。


「二人とも、これから話す事は他言無用だ。良いな?」


 エドワード王子がアーサーとブライアンを交互に見やると、二人は神妙な面持ちで頷いた。


 流石はこの国の王子だな。僕が言うよりも効果抜群だ。


 エドワード王子は王子の威厳を発揮した後、僕に合図を送ってきた。


 僕はうなずき返すと黒縁眼鏡に両手をかけてゆっくりとそれを外した。


 僕の素顔が露わになると、アーサーとブライアンはハッと息を呑んだ。


「エドワード王子に瓜二つだと!?」


「え? エドってそんなにエドワード王子にそっくりだったっけ!?」


 ブライアンが驚くのはわかるけれど、子供の頃から付き合いがあるアーサーが、エドワード王子を見て僕にそっくりだと思っていなかったのは不思議だ。


 その辺り、オーウェンが何かしら手を貸してくれていたのだろうか。


 それとも眼鏡をかけていた姿に慣れて、眼鏡をかけていない顔を忘れてしまったのだろうか?


 そんな話は横に置いておいて、今は僕達の事を打ち明けるのが先だ。


「信じられないかもしれないが、私とここにいるエドアルドは実は双子の兄弟なんだ」


「「ええーっ!!」」


 アーサーとブライアンの声が見事なハモリを見せた。




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