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134 逃走

 だが、ニーズヘッグの身体が燃え尽きるよりも早く、その姿は何処かに掻き消えてしまった。


 後に残るのは壊れた窓枠や飛び散ったガラスの破片のみだった。


「…また、逃げられましたか…」


 残念そうにオーウェンが呟くのを僕は聞き逃さなかった。


『また』とはジェイコブの事だろうか?


 それともあのニーズヘッグの事なんだろうか?


 どちらにしても仕留められなかったという事は、またエドワード王子を狙ってくるのだろうか?


「オーウェン。逃がしたままで良いんですか? またすぐに襲ってきたらどうするんですか!」 


 僕が詰め寄るとオーウェンはツンと澄ました顔で長い銀髪をサラリと後ろへ流す。


「大丈夫です。フェニックスに焼かれて相当なダメージを食らったようですからね。すぐには復活は難しいでしょう。それよりもフェニックスが困っていますよ。早く呼んであげなさい」


 オーウェンが指さす方を見やると、空中をフェニックスが旋回しているのが見えた。


 ニーズヘッグがいなくなったので、この後どうして良いのかわからないようだ。


 僕とエドワード王子は手を繋いだままの状態でフェニックスの方を見上げた。


「こっちへおいで」


 僕が呼びかけるとフェニックスは「キュゥー」とひと声鳴いて僕達の前に降りてきた。


 オーウェンが張っていたバリアを消したので、すぐ目の前にフェニックスの巨体がある。


 で、でかい…。


 あのニーズヘッグと渡り合えるほどの大きさになっているため、オーウェン達よりも上の方に顔がある。


 見上げているのも疲れるな、と思っていたら、スススッとフェニックスが小さくなって僕達と同じくらいの背丈になった。


 それでも普通の鳥よりは大きな顔にちょっとビビったのは内緒だ。


 フェニックスは金色の光輝く羽根と同じような金色の瞳で僕達を見つめてくる。


 僕達が繋いでいた手を離してそっと頭を撫でてやると「キュゥ」と嬉しそうな声をあげる。


 だけど、この後はフェニックスをどう扱ったら良いんだろうか?


「このまま小さくなって普通の鳥のように振る舞ってもらう事も出来ますよ。それともまた異空間に戻ってもらいますか?」


 オーウェンに問われてエドワード王子はフルリと首を振った。


「流石に王宮には連れて帰れないな。何処から連れてきたのかと質問攻めに合いそうだ」


 …まあ、それは言えてるな。


 エルガー家に連れて帰ってもいいけれど、義両親はともかくうるさそうなのが若干2名いるからね。


『鳥の羽根やフンでクリスに健康障害が出たらどうするんですか!』


 などと言って来られたら義両親に申し訳がない。


「僕も今は君を連れて帰るのは難しそうだな」


 そう言うとフェニックスは「キュゥ」と小さく鳴くとフッと姿を消した。


 どうやら異空間に戻って行ったようだ。


 やれやれ。 


 ホッと一息ついて振り返ると、そこには血走った目をしたアーサーとブライアンの姿があった。


「エド! さっきの大蛇が言っていたのはどういう事だ。それに全属性の魔法が使えるって!? ちゃんと説明してくれよ!」


「エドワード王子! どうしてそこのエドアルド君と一緒に魔法が使えるんですか!? おまけにエドアルド君が次期国王とはどういう事ですか!?」


 僕もエドワード王子も二人に詰め寄られてタジタジだ。


 チラリとオーウェンとヴィンセントに助けを求めるが、二人は微笑んだまま動こうとはしない。


 どうやらこの事態に対しての救援はなさそうだった。




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