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129 出現

「大丈夫です。ありがとうございます」


 そう言いながら眼鏡の奥からエドワード王子を睨んでやるのだが、エドワード王子はそんな僕の視線を涼しい顔で受け流している。


 アーサーの隣にはいつもエドワード王子と一緒にいるブライアンが座った。


 どことなく不満顔なのは、エドワード王子が僕の横に座っているからだろうか?


 大体、どうしてエドワード王子がこの食堂に来ているんだ?


 上位貴族達は専用の食堂があるはずなのに、どうしてこっちの食堂に来たのだろうか?


 出される食事は同じ物なので何処で食べても問題はないのだけれど、わざわざこちらに来る理由がわからない。


 僕がなるべくエドワード王子とは関わりたくはないとわかっているはずなのにな。


 そんなに僕という存在がいる事が嬉しかったんだろうか?


 そう言えば、国王と王妃は仲が良くないような事を言っていたっけ。


 僕は以前会った王妃の顔を思い出していた。


 美人ではあったけれど、プライドの塊のような印象を受けた。


 いくら政略結婚とは言っても、自分の夫に愛人がいるなんて気分の良い話じゃないしな。


 おまけに自分の知らない所で自分の産んだ子供を捨てられたんだから、尚更だろう。


 もっとも、母親である王妃も僕の事を切り捨てたんだから、どっちもどっちだと思うけどね。


 隣の席に座ったものの、エドワード王子は特に話しかけてくる事もなく、黙々と食事を続けている。


 アーサーの隣に座ったブライアンも渋々ながら食事をしていたが、突然ブライアンのカトラリーを持つ手がピタリと止まった。


 どうしたんだろう?


 チラリとブライアンに視線を投げると、彼はまじまじと僕とエドワード王子を見比べている。


 …まさか!


 気付かれた!?


 僕の眼鏡以外は髪型から背格好まで、僕達はそっくりだ。


 ここで僕が眼鏡を外したら、エドワード王子に瓜二つだとバレてしまうだろう。


 僕の向かいに座るアーサーと言えば、突然斜め前に座ったエドワード王子に緊張してか、カトラリーを動かす手がカクカクとしていてまるでロボットの動きのようだ。


 こうして四人四様の気分で食事をしていると、突然地面が揺れ始めた。


「きゃあっ!」


「何だ! どうした!?」


「地震か!?」


 あちこちで叫び声が上がる。


 テーブルの上の食器はカチャカチャと音を立て、倒れたグラスがテーブルを転がり床に落ちて割れる。


「皆の者! 落ち着け!」


 落ち着いたエドワード王子の声で叫ぶ者はいなくなったものの、地面の揺れはずっと続いている。


「あれは何だ!?」 


 声がした方を見ると、食道の外にある中庭の地面が徐々に盛り上がっていくのが見えた。


 この地面の揺れはあれのせいか?


 誰もが固唾を飲んで見つめる中、地面の盛り上がりはどんどんと大きくなっていった。


 やがて盛り上がった地面が割れ、その裂け目から大きな蛇が顔を出した。


「きゃあっ!」


 中庭の近くにいた生徒達が叫び声を上げて、その場から逃げ出した。


 大蛇は更に地面から這い出し、鎌首を上げて掃き出し窓からこちらをじっと見つめていた。


 …まさか?


 僕とエドワード王子を見ている?


 いつの間にか殆どの生徒達は食道から逃げ去り、この場に残っているのは僕達四人だけになった。


 こんな時にオーウェンがいたら、すぐに駆けつけてくるはずなのに、どうして今日に限っていないんだ?


 あれ?


 そう言えばヴィンセントはどうしたんだろうか?


 まさか、オーウェンと一緒に何処かに行っているんじゃないだろうな?


 まったく!


 肝心な時にいないなんて、役立たずな二人だよ。


 僕はこっそりとため息をつきながら、大蛇の動きを注視した。





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