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127 エドワード王子の要望

 ブレンドン王の姿が消えると同時にエドワード王子の身体が揺らいだ。


「おっと!」


 オーウェンが慌ててエドワード王子の身体を支える。


「憑依していたブレンドン王がいなくなったので、その反動が出たのでしょう。…一人で立てますか?」


 しばらくオーウェンに支えてもらっていたエドワード王子だったが、やがてしっかりと自分の足で立てるようになった。


「ありがとうございます、オーウェン」


 顔を上げてお礼を言うエドワード王子にオーウェンは少し身をかがめて笑いかける。


「ブレンドン王もいくら子孫とは言え、こんな子供に憑依していたなんて、手段を選ばないのはヴィー譲りですかね?」


 オーウェンに話を振られてヴィンセントは少しムッとした顔をして見せる。


「私はそこまで無体な真似をした覚えはないぞ」


 ヴィンセントの反論にオーウェンはチラリと視線だけを動かす。


 なんか変な方向に話が流れそうなので、僕はエドワード王子に話しかけた。


「ブレンドン王が憑依していたっていう自覚はあったんですか?」


「そう言えば…確かに最近、身体が重いような違和感があったんだ。ただ単に疲れが溜まっているだけかと思っていたが、ブレンドン王が私に憑いていたんだな」


 エドワード王子はスッキリしたように晴れやかな笑顔を見せたが、すぐに不満そうな顔を僕に向けた。


「敬語なんてやめてくれよ。兄弟だと分かったんだから、兄弟らしく話さないか?」


「えっ? そんなの無理ですよ。それに人前でもそんなしゃべり方をしたら、騒ぎになるじゃないですか」


 砕けたしゃべり方に慣れて、人前でうっかり披露してしまったら大問題に発展しそうだ。


 そこから僕達が双子の兄弟だとバレたら、国全体を揺るがす一大事になりかねない。


 必死で断ろうとするのだけれど、エドワード王子は諦められないらしく、ちょっと上目遣いで僕を見上げてくる。


「どうしても…駄目?」


 そんな捨てられそうな子犬のような目をして僕を見ないで欲しい。


「うっ!」


 少しのけぞった僕は渋々とエドワード王子に頷いた。


「しょうがないな。だけど、絶対に二人きりの時だけだからな」


 パアッと笑顔を見せるエドワード王子の横でオーウェンがくっくっと笑いをこらえている。


 ヴィンセントまでもがニヤニヤと笑っているなんて非常に不愉快だ。


 ぷうっとむくれているとオーウェンが思い出したようにパンッと手を叩いた。


「そろそろ授業に戻りましょうか。いつまでも時間を止めたままだと、またエドアルド君の機嫌が悪くなりそうですからね。さあ、皆さん。先ほどの位置に戻ってください」


 オーウェンに促され、僕とエドワード王子は模造剣を持って構え、ヴィンセントはクラスメイト達の所へ瞬間移動して行った。


「それでは、また」


 もう一度オーウェンが手を叩くと、オーウェンの姿は消えて、クラスメイトたちな時間が動き出した。


 僕とエドワード王子の剣はぶつかり合い、僕達はそのまま睨み合う。


 タイミングを合わせて離れてはまた剣を重ねる。


 これを何度か繰り返しているうちにヴィクター先生の合図が聞こえた。


「そこまで、止め!」


 僕とエドワード王子は剣を下ろすと一礼してヴィクター先生の所へ戻った。


「引き分けだな。では、次! 二番の二人、前に…」


 僕達と入れ替わるように次の二人が囲いの中に入って行く。


 それぞれにクラスメイトの所に戻ると、そこにアーサーが待ち構えていた。


「凄いじゃないか。エドワード王子と対等に戦えるなんて!」


 戦っているフリをして適当に剣を合わせていただけなんだけどな。


 僕はちょっと笑みを返すと模擬戦をしている二人に視線を向けた。





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