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104 将来の夢

 僕の不安をよそに授業は進められていく。


 時折チラッとジェイミーの様子を確認するけれど、何事もなかったかのような顔で授業を受けている。


 流石に授業中にジェイミーが何かしらの行動を起こすとは考えにくかった。


 やがて授業が終わり。ディクソン先生はそのままホームルームを行った。


 ホームルームが終わりディクソン先生が教室を出ると、皆バタバタと帰り支度を始めた。


 僕も帰り支度をしながらジェイミーを盗み見ていたが、ジェイミーはさっさと鞄を持って教室を出て行った。


 何事も起こらなかった事にホッとしつつも何処か不安な気持ちを払拭出来ない事がもどかしい。


「エド、帰ろうか」


 先に帰り支度を終えたらしくアーサーが鞄を持って僕に近寄って来た。


「ああ、帰ろう」


 手早く荷物をまとめると僕はアーサーと一緒に馬車乗り場へと向かった。


「それにしても、アーサーも満点を取るなんて凄いじゃないか」


 先ほどの小テストの事に触れるとアーサーは照れたような笑いを浮かべる。


「エドが『九九』を教えてくれたおかげだよ。最初に聞いた時は謎の呪文のように聞こえたけど、『九九表』と照らし合わせながら覚えるとわかりやすかったよ。だけど僕達だけで独占しちゃうのも何だか悪い気がしてくるな」


 アーサーがこっそりと告げるけれど、それには僕も同感だ。


「皆にも教えてあげたいけれど、『九九』の事で変に注目されたくないからね。何か良い方法はないかな?」


「流石に『九九』を広めておいて注目されないって事はあり得ないな。『天才が現れた』って一気に有名人になれるぞ。そうなったらエドワード王子の側近入り間違い無しだな」

 

 アーサーの言葉に僕はプルプルと首を振る。


「たかが男爵家の養子が王子の側近なんてとんでもないよ。それに僕は冒険者になって色んな所を旅してみたいんだ」


「そうだったね。…冒険者になったら僕とパーティーを組んで欲しいな」 


 ポツリとアーサーに言われて僕は目をパチクリさせた。


 確かにアーサーも冒険者になりたいとは言っていたが、てっきりソロでやるのだと思っていたからだ。


 まだまだ先の話ではあるけれど、アーサーとパーティーを組めたら楽しい旅が出来そうだ。


「いいね、それ。僕からもお願いしたいな。アーサー、冒険者になったら僕とパーティーを組んでくれるかな?」


 ちょっと首を傾げながらアーサーに尋ねると、アーサーはこれ以上ないくらいの笑顔を見せた。


「勿論だよ。…あー、早く冒険者になりたいな」


 アーサーがワクワクした顔で待ち遠しそうに言うけれど、僕達が正式な冒険者になれるのは十五歳からだ。


 昔は十歳からでも冒険者になれたらしいが、やはり魔物相手に十歳では若すぎると問題になったらしい。


 だが、十五歳からとなると、困るのは学校に通わない平民の子供達だ。


 何しろ仕事先が一つ減ることになるのだから死活問題である。


 そこで冒険者ギルドでは学校に通わない子供に限っては十三歳からでも冒険者になれるようにした。


 但し、三人以上の大人のパーティーに所属する事を条件とした。


 また、子供を加入させたパーティーは必ず生きて子供を帰還させる事が条件となる。


 大人の冒険者にとっても子供は雑用係として雇えるので、この制度は歓迎されたようだ。


 そう考えると男爵家の養子にならなければ、三年後には冒険者になれていたんだな。


 でも。こうしてアーサーと出会えたんだから、養子になれて良かったのだろう。


 そう前向きに捉える事にした。


 だが。そんな事よりも今はジェイミーの事が先決だ。


 今日の僕の二度の痛みがジェイミーによるものだとしたら、一体どんな方法を使ったんだろうか?


 そして、あのジェイミーの顔つきからしてアーサーもその対象になったんじゃないだろうか?


 僕はそんな懸念を抱きながら帰路についた。





 

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