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103 ジェイミーの様子

「実は、さっき座り込んだ時、ジェイミーの姿が見えたんだけど、僕を見て薄く笑っていたんだ」


「ジェイミーが笑っていた? そりゃまあ、エドの事を気に入らないみたいだったから、エドがケガをしたかもって事で笑っていても仕方がないとは思うけどさ」 


 アーサーはジェイミーが「笑っていた」と聞いて心底面白く無さそうな顔をする。


 そりゃまあ、ケガをしたかもしれない人を見て笑っていられるなんて人間性を疑うよね。


 特にアーサーにとっては『自分がケガをさせたかも…』って思って焦っていた時だったからね。


「うん、僕もそう思うんだけどね。なんか引っかかるんだよね」


 ただ単に『いい気味だ』というような笑いじゃなくて、『上手くいった』というようなほくそ笑みみたいなものをジェイミーに感じていた。


 僕の身に何か起こった時に痛みを倍増させるような魔法でも使ったのだろうか?


 いや、そもそもそんな魔法なんてあるんだろうか?


 マーリン先生かヴィクター先生に相談してみようかと思ったけれど、すぐにそれは却下した。


 以前話をした時に『エルフは人間社会に手を出さない』と言っていたのを思い出したからだ。


 そう言いつつもこの国の王家で双子が生まれないようにしている時点で十分、人間社会に関わっていると思うんだけどね。


 とりあえず午後からは普通の授業だけだから、僕の身に危険な事は起こらないはずだ。


 お昼の休憩を終えて僕とアーサーは教室に戻った。


 ジェイミーは既に自分の席についていたが、僕が教室に入っても見向きもしなかった。


 剣術の授業の時は座り込んだ僕を見て薄く笑っていたのに、このチグハグぶりは一体何故なのだろうか?


 だからこそジェイミーの態度に違和感を感じるのだろう。


 僕はそのまま自分の席に座り、次の授業の準備を始めた。


 次の授業は計算だ。


『筆算』を教わってから、皆の計算能力は格段に上がった。


 だけど、掛け算割り算に限っては苦手な者がいるようだ。


 ここは皆に『九九』を教えるべきか悩むところだな。


 計算の授業の先生がマーリン先生かヴィクター先生なら、『九九』を伝授して皆に教えて貰うんだけどな。


 ディクソン先生に伝えたら絶対また学院長に報告するだろうし、学院長は学院長で『国王陛下に報告』とか言い出しそうだからな。


 アーサーは『九九』を何とかマスターしたらしく、成績も上がってきた。


 昨日の小テストも「全問解けた」と喜んでいたからな。


 始業のチャイムが鳴ってディクソン先生が教室に入って来た。


「それでは授業を始めます。最初に昨日の小テストを返却しますね。今回はなんと満点が二人います。エルガーさんとコールリッジさんです。他の皆さんも満点を目指して頑張ってくださいね」


 なんと、僕とアーサーが満点だったようだ。


 ポキリ!


 何処かで何かが折れたような音がした。


 音がした方に目をやると、ジェイミーがペンを真っ二つに折っていた。


 ディクソン先生は生徒にテスト用紙を返却する事に集中しているようで、そちらには気付かなかったようだ。


「バークスさん」


 ジェイミーの名前が呼ばれたが、ジェイミーはすぐには反応しなかった。


「バークスさん?」


 もう一度、ディクソン先生に呼ばれてようやくジェイミーは立ち上がった。


 ノロノロとディクソン先生の所に歩み寄りテスト用紙を受け取った。


 その途端、ジェイミーの顔が酷く険しいものになった。


 …思ったよりテストの点が悪かったのだろうか?


 その顔のまま、ジェイミーは僕を睨みつけてきた。


 途端にゾクリと背筋が凍るような感覚に襲われた。


 ジェイミーの視線は更にアーサーにも向けられた。


 まさか。アーサーにも何かする気じゃないよね。


 僕の心に一抹の不安がよぎるのだった。




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