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101 痛み

 学院に通いだしてひと月以上が過ぎたが、いつの間にかジェイミーのストーカー(?)が止まっていた。


 あんなに僕の事を監視していたのに急に止めてしまうなんて一体何があったんだろうか?


 勿論、監視が無くなってホッとしているのだけれど、なんだかスッキリしない気分だ。


 それとも、ただ単に執着されなくなってガッカリしているだけなのだろうか?


「エド。最近、ジェイミーの奴、エドの事を監視しなくなってないか?」


 アーサーもジェイミーが最近、僕の事をじっと見たり、後をついて来なくなったのに気付いたようだ。


「うん、そうなんだよね。いつの間にか僕の事をじっと見たりして来なくなったんだ」


「ジェイミーもとうとうエドが不正なんかしていないって気づいたんだな」


「…うん、そうかなぁ?」


「何だよ、歯切れ悪いな。監視して来なくなったんだから、良かったじゃないか」


 バシッとアーサーに背中を叩かれ、僕は思わず「痛っ」と声を上げる。


「え? そんなに強く叩いた覚えはないぞ」


 アーサーが不思議そうな顔をするが、妙に叩かれた背中が痛かった。


「おかしいな? なんでだろう?」


 僕もこの叩かれた痛みには違和感があった。


 いつもアーサーと接しているから、アーサーに軽く叩かれるという事はしょっちゅうだ。


 今だっていつもの軽いノリで叩いてきたはずなのに、どうしてこんなに痛く感じたのだろう?


「何処かで背中をぶつけたりしたのか?」


 アーサーに尋ねられたけれど、そんな覚えは全くない。


「いや、別に? 剣術の稽古の時だって腕に当たる事はあっても背中は無いよ」


 アーサーが心配そうにそっと僕の背中を触ってくる。


「今僕が触ってても痛いか?」


 そっとアーサーに背中を撫でられるが、今は特に痛みを感じない。


「いいや、今は痛くない」


 それを聞いてアーサーはホッとした顔を見せる。


「そっか。きっと、思ったより強く叩いちゃったんだな。ごめん、エド」


「いや、大丈夫だよ。僕が大げさに言っちゃっただけだ」


 そう言ってアーサーを安心させるようにニコッと笑いかける。


 けれど、内心何処か腑に落ちなかった。


 どうしてあれだけの痛みを感じたのだろうか?


 まさか、何かの病気じゃないよね?


 そんな不安がよぎるけれど、体調は至って万全だ。


 生まれてこのかた、風邪一つひいた事がない(多分)。


 そんな健康優良児の僕が、友人に軽く背中を叩かれただけで「痛い」と言うなんて…。


 僕は首をひねりながらも自分の席についた。


 


 次の授業は剣術の時間だ。


 僕達はいつものようにゾロゾロと更衣室に向かった。


 制服から運動着に着替えて校庭に向かった。


 整列して待っていると、ヴィクター先生とベアトリス先生が颯爽と現れる。


 二人とも相変わらずかっこいい。


 女子生徒の中には「あの二人は付き合っているんじゃないか?」と話題にしている子もいたが、それだけは「ない!」と断言できる。


 もっともそんな事は口が裂けても言えないので、黙って聞き流しているが…。


 始業の挨拶を交わすと早速ランニングが始まる。

 

 校庭を走っていると、前方にジェイミーの姿が見えた、


 今まで僕の後ろをついて走っていたので、こうして僕がジェイミーの後ろ姿を見ながら走るのは妙な気分だった。


 うーん。


 やっぱりジェイミーに相手にされなくなって寂しいと思っているんだろうか?


 ランニングを終えて息を整えた後は、二人一組になって剣の打ち合いだ。


 勿論、扱うのは模造剣と決まっている。


「エド、いいか?」 

 

 アーサーが剣を携えてやって来る。


「よし、やろう」


 僕も剣を構えてアーサーと対峙する。


「始め!」


 ヴィクター先生の合図で打ち合いが始まる。


 何度もアーサーと稽古をしているので、お互いのクセはわかっているつもりだ。


 それでも時折、アーサーは予想外の動きを見せる。


 その時もアーサーの剣を受け止めきれずに、アーサーの模造剣が僕の腕に当たった。


「あっ!」


 あまりの痛みに僕は剣を取り落とし、その場にうずくまる。


「エド!?」


 驚いたアーサーが僕の所に駆け寄ってくる。


 ヴィクター先生も向こうからこちらに駆け寄ってくる。


 腕を押さえながらふと顔を上げると、ジェイミーが薄く笑っているのが見えた。




 

 

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