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仔猫のでんごん

 

      仔猫のでんごん



朝起きたら、わたしは井戸の底にいた

ここはくらいけれど、目の前で仔猫が眠っているのが見えた

  

わたしは耳のたれたその仔猫を抱き抱え、ひざの上にのせた

「みんなといっしょにいると、自分だけ違和感を感じるからここに落ちたのかな

 わたしはみんなに受け入れられない感じがするから」  

  

仔猫は言った

 「じぶんを見てみたら?ありのままを」   

  

「鏡なんかここにないよ」

 仔猫はわたしの右のほっぺたを、さくら餅のような肉球で何回も猫パンチした   

   

むにゅ ぺちり   

    

 「ありのままのじぶんを鏡でみたの?かがみのなかの人は、あなたなの?」 

 「左右反転してるけど、わたしじゃないの?」  

  

白い仔猫は言った

 「あたしは、かがみのじぶんをみたらいつも目が合うよ

  かがみのなかに、美少女なねこがうつってる

  でもかがみの中のその可憐なねこが、あたしから視線をそらしてるのみたことない

  視線をそらしたじぶんを見たことない 

  

「じゃあどうしたら、ありのままのわたしを学べる?」   

 

「かわいい仔猫のあたしにきかれても、こまっちゃうわ

 でもいつまでもここでかんがえるひまはないのかも

 この井戸だっていつお水がわきだすかわからないもの

 あなたはどこがみんなとちがう?」  

    

「たとえば、そうね。去年の修学旅行ね

 班の中にいても、なんか違和感がある。ひとり楽しめない

 鎌倉にいったけど、どこにいったかも覚えてない

 ホテルの部屋でみんなと一緒にいるのいやで、ロビーにいて

 遅れて部屋に入ったら、みんなで七並べしてた。でも、七並べは途中から入れない」 

  

気になって井戸の底に手を触れた

砂利が水気を含んでる。どこかから湧き水があふれてる   

   

彼女は言った

「じぶんひとりじゃ、かいけつできないことなのに

ひとり井戸のそこにおちてる。わたしは血統書つきのスコティッシュホールド

だけど、人をいやすのがおしごとだから、かいけつはできないわ」   

  

水がくるぶしまで届いてる。冷たさで感覚がまひしてる。感覚を取り戻せなくなる  

  

  じぶんを好きになるまえに、じぶんをゆるすのがさきなんじゃない

  じぶんを好きになるまえに、じぶんをたいせつにするのがさきなんじゃない

  じぶんを好きになるまえに、じぶんをたいせつにしてくれる人を

  たいせつにするのがさきなんじゃない


  じぶんを好きになるまえに、じぶ…を好…でいる人のこと…好き…れない?


水位はおへその下まで届いてる。わたしは仔猫を抱き抱え、立ち上がった

仔猫は言った


  「でんごんはつたえたからね」   

   

「あなたを抱えて井戸からでる。そしてみんなのいる学校に行くんだ」 

「どうやってここをのぼるの?ずいぶんとたかいのよ」   

  

わたしは言った

「やってみなくちゃわからないでしょ?」


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