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ありのままのわたし

第1章


わたしは悩んだ

保育園に通っている娘ににんじんを食べてもらうためにはどうすればいいのかを


まず、保育園のママ友に教えてもらった


「かぼちゃとにんじんのポタージュ」


を娘のお皿に盛った

「めいちゃん、これおいしいよ」


娘はわたしをじっと見つめた

娘の瞳から発せられたメッセージは


「これ、にんじん入ってるよね?細かく切っただけだよね?

だからにんじんの味はするわけだよね」


今度は母に作り方を教わった


「にんじんのグラッセ」


を、娘の大好きなハンバーグの横にやさしく添えた

娘はグラッセを見つめている

娘の好きなハンバーグは、たんぽぽのわた毛ほどの存在感しかない


娘はお子様用フォークを持ってもくれず

「ママの作ってくれたこれおいしい!これならにんじんもっと食べたいな

ママ大好き!」


と言ってくれる気配は今のところない

もう少し様子をみた

遠くの方から、つがいのうぐいすの鳴き声が聞こえる

もうそんな季節かあ

  ほけきょ ほーほけきょ

                                      

娘の表情はまるで、ぜんぜん興味ないのに古典落語を聞かされた女子高校生

のようになっていた


わたしはぽつりぽつりと涙を流していた


           ぽつりぽつり


           しくしくぽつり



早朝に降り出した小雨のような涙つぶが、日が沈む頃の夕立のようになり

深夜のしとしと雨になっていく


素敵な大人の女性はみんな、にんじんを食べられる

素敵なおとなの淑女に育ててあげられない


娘のにんじんの問題が解決できないのはわたしのせい

もう滋賀県の実家に帰ろう


誰かがハンカチでわたしの涙を拭いている

まぶたを開けた


私が目を開けるとそこには木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)のような暖かい微笑みを

まとい、小さな右手に桜色のハンカチを持った娘が、私を見守ってくれていた

彼女はわたしを後ろから抱きしめ、お腹をさすった


そうして耳元でささやいた


「ありのままのママが好き」


めいちゃん、ありがとう

ママもめいちゃんのこと大好きよ    



第二章


あたしはにんじんをたべなくて、よくなったみたいだ

あれはマジまずい

つぎにスシローいくのはいつかな

いくらが食べたい


そうしてあたしはコノハナサクヤヒメのようほほえむ

ママにあの魔法の言葉をささやけばすべてうまくいくときいたのは

保育園のおともだちから


かがみを見るとコノハナサクヤヒメとしか思えないじぶんのすがたが見える

ありのままのあたし


かがみごしの、せいそなたたずまいのあたしをながめながら考えた


ピーマンも、もしかしたらなんとかできるんじゃないのか



ありのままのあたしなら


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