やさしさの受け取り方
まえがき
タイトルと頂いたお題
・やさしさの受け取り方
(お題 自分を好きになりなさいというお父さんからの言葉)
・ありのままのわたし
(お題 ありのままのわたし)
・欠点のない女の子
(お題 他人の欠点と自分の欠点)
・仔猫のでんごん
(お題 自分を知るためには)
あとがきで解説しますが、ある女の子からお題を頂き
それに添ってお話を書いています
(まえがき おわり)
まえがき
タイトルと頂いたお題
・やさしさの受け取り方
(お題 自分を好きになりなさいというお父さんからの言葉)
・ありのままのわたし
(お題 ありのままのわたし)
・欠点のない女の子
(お題 他人の欠点と自分の欠点)
・仔猫のでんごん
(お題 自分を知るためには)
あとがきで解説しますが、ある女の子からお題を頂き
それに添ってお話を書いています
(まえがき おわり)
やさしさの受け取り方
第1章
ふたりの姉妹と、キジトラ猫は森の中を歩いていた
朝日がのぼり始める頃、2人と1匹はあるところに向かい進んだ
先頭を歩いたのはキジトラ猫
彼女は4本の足で軽快に歩いた
よっつの肉球を地面にぷにゅぷにゅ押し付けて
姉妹はキジトラ猫において行かれないよう早足で歩いた
あさつゆでぬれた若葉が、夜にためた雫をぽつぽつ落としている
キジトラ猫は、ふだん姉のベッドでうたたねしている生活に満足していた
だけど彼女は森の道を気に入ったみたい
彼女はしっぽをピンとたてて歩いた
2羽の小鳥が頭上を飛んでいった
猫は、自分のお世話をしてくれる女の子がついて来ているか心配になり
ときどき後ろを振り向いた
大丈夫。あの子たちは華奢だけど
ついて来てる なにせ二本足で歩けるんだしね
それに、ついて来れなくなったら、わたしを呼ぶはずよね
お姉さんが妹に話しかけた
「そろそろお父さんのコテージにつくよ
食べ物無くなったって言ってた。だからきっと朝ごはんも食べてない
わたしたちで作ろう。おいしい朝食食べてほしいもの」
「きっとよろこぶわ」
お姉さんは食べ物の入った紙袋を抱えている
コッペパン コーンポタージュ
ココア 牛乳 ホットケーキミックス etc…
お父さんに持って行くものは姉妹とキジトラ猫で相談して決めた
残念だけれど、キジトラ猫はお父さんの食事選びにあまり役に立たなかった
彼女のアドバイスは姉妹には届かなかった
キジトラ猫チョイス
かつお節
第2章
最初にキジトラ猫が森の異変に気がついた
頭上をムクドリたちが飛んでいく。それも普段とは違った飛び方で
あたりが霧に囲まれはじめ、先がよく見えない
一面ドライアイスの塊をまかれているみたいに
そして気温が下がっていく
猫は姉妹の元に引き返した
霧は濃くなり、進む方向が分からない
みんなは近くの樹の根本に集まり、座り込んで寒さに耐えた
妹は言った
「さむいよ。あたしワンピース一枚だけなのよ」
お姉さんは食べ物の入った紙袋を地面に置き、カーディガンを脱いで
妹にかけた
キジトラ猫はお姉さんをじっと見ている
彼女の瞳はこう伝えていた
いつもお腹空いたらごはんくれるじゃないの
おしっこしたら、トイレの掃除をしてくれるじゃない
だからこの霧雨と寒さもなんとかしてくれるのよね
彼女たちはコテージで朝ごはんを食べるつもりだったから
この寒さの中、お腹がすいてきた
みんなの頭によぎった事
お父さんのコッペパンを食べてしまおうか
キジトラ猫はくっついて座っている姉妹の間に入り込み、
はさまって寒さに耐えた
妹の瞳は、お姉さんとキジトラ猫を心配させないためにこらえていた
涙の最初の一粒を垂らしてしまった
そこでお姉さんは目をつぶった
第3 章
森の天気は変わりやすい
とくに早朝の森は。季節はさくらのつぼみがやっとぽつぽつできた頃
そしてカミナリが鳴り出した
お姉さんはずぶ濡れになっても、樹から離れるべきか
それとも留まるべきかの判断もできない
お姉さん、妹、そしてキジトラ猫は、みんな目をつぶっていた
お父さんが言っていたこと
自分にやさしくしなさい
そうして人にやさしくしなさい
自分を大切にしなさい
そうして人を大切にしなさい
カミナリが響き、木々を震わせる
姉妹と猫の身体も震わせるほどの大きさで
カミナリはすぐ近くに落ちたらしい
ここを離れるべきかすぐに判断をしなければ、とお姉さんは焦った
だけど、そもそも進む方向が分からない
自分にやさしく
そうして、人にやさしく
2人と一匹は一緒にまぶたを開けた
妹はカーディガンを脱ぎお姉さんにかけた
お姉さんはコッペパンをちぎり、妹とキジトラ猫に手渡した
キジトラ猫は凍える姉妹の手をなめた
カーディガンが薄すぎる
コッペパンが小さすぎる
キジトラ猫の舌が小さすぎる
みんなはもう一度目をとじた
じぶんにやさしく
そうして、人にやさしく
じぶんを大切に
そうして人を、大切に
お姉さんは気がついた
わたしに対するお父さんの想いを
わたしが目を開けたとき、霧は薄くなっていた
お日様のひかりがわたしたちを包みやわらかいそよ風が心地よかった
年齢の高そうな木たちと、明るい緑の葉たち、薄い霧にやさしく包まれ
森全体がわたしたちを歓迎してくれていた
森は霧をもう少し薄くて、進むべき道が分かるように調整してくれた
リル・アンビションのワンピースとミュールサンダル、イアンヌのお財布ポシェット
というコーデで、妹は奥深い森を歩いている
いをりは言った
「おねえ、てまにゃんの言うとおり、かつお節も買っておくべきだったね
コッペパンはねこの舌には合わない」
「てまにゃんは、お父さんがかつお節だけでは食べない事を把握してる
かつお節一袋を自分で食べるつもりだったのをわたしが見抜いた
でも買っておいてあげれば良かった。モンプチばかりじゃ飽きるでしょ」
わたしといをり、自由きままな、てまにゃんの2人と1匹で
ふたたび道を進んだ
おとうさんの言葉
あれはわたしと妹だけに伝えられたもの
お父さんはわたしと妹だけにそうして欲しかった
お父さんはその言葉を他の人には言ってない
お父さんから受け取った、わたしたちだけのもの
第4章
てまにゃんは先頭をあるくのをやめ、わたしたちに道をゆずった
霧でぼやけた先にコテージらしきものがみえてくる
コテージの前で、おなかを空かせただれかが待っているのがみえた
その人はわたしに大切な何かを伝えたひと