8.結論
魔王は愛する旦那様のそばに転がっていた聖剣を拾い上げ腰につけます。
聖剣は、そこにあるべきだと言うように、魔王の腰で光輝いています。
私は、周りの状況を確認します。
戦いでチャペルは酷い有り様ですが、旦那様以外に怪我人もありません。
ただし、旦那様は、もうこの世にはいません。
再び迎えた結末。
繰り返される悪夢。
だけど、気持ちは最初の時の流れとまるで違います。
「そういえば、ちゃんと答えていませんでしたね」
魔王は聖剣をとつとつと語り始めました。
「私は一度目、もの言えぬあなたの民衆の代わりに窮状を伝えました。そもそも私は、他国を自分の意志で攻めたことはありません」
ニルナ様から、伝わってくるのは、溢れんばかりの愛国心。
それだけです。他国を侵略しようなんて意志はまるで感じません。
「そうして友好を結び、国民を救うと言ってくれました。それから友好を結んだ証に、私の聖剣を見せて欲しいと言われたので、私は彼に聖剣を渡しました。その後、彼は丸腰の私に聖剣で切りかかってきたのです」
ニルナ様は悲しそうに、聖剣を見つめていました。
「その後の結末は、あなたも知っての通りです」
最後の戦いは、いわば蛇足。
魔王は、時の流れ二週目に見せた爆炎剣を見せてもいません。
皆を巻き込まないように加減してくれたのでしょう。
「さて、本題に入りましょうか」
ニルナ様は、そう前置きしました。
「王は死に、子供はいません。王妃であるあなたが次なる王でしょう」
戦いが終わったのを感じて、皆も様子を見に戻ってきていました。
「他に私の前で王を名乗りたい者がいれば、別ですが?」
魔王は結婚式に集まった貴族達を睥睨しました。皆があまりの怖さに震え上がります。
名乗り出るものは、誰もいません。
ニルナ様は、頷いて私に言いました。
「ならば、新たなシャルディアの王リュミエールに問います」
しっかり見つめた魔王は私に問います。
「あなたの愛する旦那様は死んでしまいましたが、過去をやり直しますか?」
この胸に愛はもはやなく、私はためらいもなく言いました。
「いいえ」
ニルナ様は、にっこり笑うと言いました。
「では、私と我国サンヴァーラと友好を結んでいただけますか?」
「はい。もちろんですわ!」
こうして、めでたく、シャルディア王国とサンヴァーラ王国は国交を結ぶに至ったのでした。
新たな素晴らしい未来を紡ぐために。