プロローグ
結婚してひと月。
幸せの絶頂です。
私はいつものように、国の王である愛する旦那様の帰りを待っていました。
「おかえりなさ……どうしましたか?」
てっきり旦那様が帰ってきたと思ったら、多くの部下が私の部屋を押し寄せてきました。
なにやら、大きな箱のようなものを持っています。
馴染みの神官アウリスが、代表して目を伏せながら私に言います。
「リュミエール様、エドヴァン王が急逝されました」
「急逝?」
言葉の意味がわかりません。
わからないというより、わかりたくない と言った方が正しいかもしれません。
私はアウリスに促されるように、箱の中を覗き込みました。
愛する旦那様が、しずかに眠るように横たわっていました。
見た目だけで、眠っているようにと言わなくてはいけないのは、胸に大きな傷を負っていたからです。
誰がどう見ても致命傷にしか見えません。
私は、震える手で旦那様を触れました。
氷でも触ったような冷たさでした。
「あああ、どうして……?」
声にならな叫びが喉を突き上げ、涙が頬を伝います。私の膝から崩れそうになる体をアウリスが支えてくれました。
「魔王です」
「魔王?」
その言葉に、胸がひどくざわついた。私の耳は何か聞き間違えたのではないかと思いたくなりました。
魔王は、遠い異国の地に現れたという噂は聞いていました。
「王は、魔王と会談し、卑劣な策略に嵌り、命を奪われたのです……!」
「なぜ、旦那様は、魔王と会談をして……」
「それは、わかりません。一人で大丈夫だと言われていたのですが」
アウリスも困惑しています。
それに、もう今更です。
旦那様は死んでしまった。
その事実だけが、胸に突き刺さり、絶望が心を覆いつくします。
私の手は自然と、胸につけていたおばあ様の形見であるペンダントを握りしめました。
それは幼いころから私を守り、導いてくれた大切なものでした。今、この場で唯一の希望になれるような気がして――いや、そうであると信じたかったのです。
胸の内から、なにか今まで感じたことのない力を感じました。
それをペンダントに込め、強く願います。
もしやり直せるのなら、この運命を変えて、旦那様が命を落とす前に戻りたい……!
強く願いを込めた時、ペンダントが光り輝き、そして――。