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063話 ネフェルは押しかけ女房!?(03)

「グランダム兄さん、ウィンリル、お気づきですか?」


 ルーシファスはグランダムとウィンリルにヒソヒソと話しかけた。


「気付かないでか」


「もちろん気付いているよ、ルーシファス兄ちゃん。ボクたちが考えている事は一緒だよね」


 三人は目配せをした後、お互いに頷き合った。


「ええ。ネフェルさんはとても有能です。この方がいてくださればスレキアイ兄上の部屋はいつも綺麗に整頓され、毎日美味しい昼食が食べられるようになるでしょう」


昭然(しょうぜん)だな」


「うん! 絶対そうなるよ!」


「ですのでネフェルさんには是非とも兄上の(もと)に留まっていただきたいと思います」


「同感だ」


「ボクも協力するよ! ルーシファス兄ちゃん、まかせて!」


「ええ。それでは宜しくお願いしますよ」


 三人はまたも目配せをしてお互いに頷き合った。


「お前たち。何をコソコソ話しておるのじゃ?」


 三人の不審な動きを察知し、スレキアイは弟たちをジロリと睨んだ。


「い、いや、兄貴。なんでもないぞ」


「そ、そうだよスレキアイ兄ちゃん。なんでもないからね」


「え、ええ。なんでもありませんよ兄上。それより今日の昼食は本当に美味しいですね。やはり整頓された部屋でいただく食事は気持ちが良いですね」


 あはは、とルーシファスはぎこちなく笑った。


「そ、それにちゃんとテーブルメイクされた食卓で、皿に盛り付けられた料理をいただくというのは背筋の伸びる思いだ。自然と食事も旨く感じる。食事とは毎回このようにありたいものだ」


 ん、んんンッ!と咳ばらいをして意見を述べたグランダムだったが、作為が駄々洩れでぎこちなく、台本を読み上げていうようになってしまった。


「あ、あと人数が多いのもイイよね。ゴハンは大勢で食べるに限るよ。いつもはボクたち四人だけだったし、今日は一人増えてまるでパーティーみたいだよ」


 ウィンリルはネフェルが食卓に同席していることをことさらに喜んで見せた。


 そんな弟たちのわざとらしい様子をみてスレキアイは長い溜息をついた。


「まったく。お前たちの考えていることはお見通しだ。ネフェルをここに留め置いておきたいのだろう?」


 グランダム、ルーシファス、ウィンリスの三人はギクリとした。


「まあ、よかろう。だが本人が本当にそれを望んでいるのかどうか、意思を確認する必要があるぞ」


 そういってスレキアイはネフェルに視線を向けた。


 グランダム、ルーシファス、ウィンリルも視線を向けたが、そうやってネフェルを見やると、ネフェルは大粒の涙をボロボロと流し、えぐえぐと嗚咽しながら食事を口に運んでした。


 その光景にウィンリルは面食らった。


「ええ~ッ!? 何ッ!? ど、どうしたのッ!?」


「す、すびばせん……。か、感情が許容値を超えて、涙となっで溢れているんでず……」


 そういってネフェルは尚もえぐえぐと嗚咽しながら料理を口に運んだ。


「な、何がそんなに感情を溢れさせるのだ?」


 さすがのグランダムも心配になってネフェルに優しく問いかけた。


「ま、まず、わだじのような下級貴族の娘が、公爵家の皆様のテーブルに同席させていただけたことが恐れ多くて……」


 それについてはルーシファスが「ああ、そのことか」と納得したようだった。


「そのことなら気にしないでください。公爵家といってもうちは序列は高くありません。何せ四大公爵家で序列が4番目ですからね」


「そうだよ、いらゆる「四天王で最弱」なんだから」


 ウィンリルも話を合わせ、冗談めかしてルーシファスに同調してみせたが、ネフェルはとんでもないといった様子で首を振った。


「そんなこどありまぜん! 四大公爵家で最弱であっても魔界には公爵家が666もあるのです! その公爵家のトップ4でず! そ、それがどれほど恐れ多いことか……!」


 ネフェルは本当に恐れ多いといった様子だったが、食事を口に運ぶ手は止めなかった。


「次に、私のようなモノに食事を与え、優じくじでくださることでず。略奪され、モノとなった私はどのような扱いを受けても文句は言えません。略奪された者は手足を枷で縛られ、地下牢につながれ、用がある時だけ出してもらえると伺っていました。ですので、かように親切にじでいただけるとは思ってもおらず……。あ、でも、もしかしてこれは最後の晩餐なのでしょうか? だとじたらなおのごど、この食事を精一杯味わおうと思いまず」


 そういってネフェルはさらに料理を口に運んだ。


「最後に……、最後にこの晩餐が───この最後の晩餐が……ッ! どえりゃぁうまかすぎるんですだぎゃ~ッ! ほっぺがおぢるだぁこのことだっぺッ。こんなうんめぇご馳走はうまれて初めて食べただ。ナイフとフォークがとまんねぇです。いぐらでも料理を口に運べますだぁ」


 そういってネフェルは涙を撒き散らしつつ、すごい勢いで食事を口に運び続けた。


「忙しい娘だ。本人の意思を確認する前に、食うのか泣くのかどちらかにさせねばならんな」


 スレキアイはため息をついた。


 そしてそれには弟たち三人も同意だった。

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