037話 ルーシファス・ゼブフ・アスタロッド(07)
「ありがとう。ネフェル。やはり貴女の所にきて正解でしたよ。これを飲んだら執務室に戻り、また仕事に励みますよ」
幾分でもルーシファスさんのお疲れが和らいだようで私は嬉しくなりました。
「あっ。そういえばいただいたお花。このままにしておいては可哀そうですね。花瓶に差しておきます」
そういって私は窓際にあった花瓶に花束を活けました。
白磁の花瓶に色鮮やかな花束が良く映えます。
窓の外が快晴ということもあって、より色彩が美しく映りました。
「へえ。花束を花瓶に活けてくださるんですね」
ルーシファスさんがそう仰るので、私は「?」となりました。
あれ? お花は花瓶に活けるものではないのでしょうか?
「ネフェルの姿をしているけど貴方はネフェルじゃない。でも、ネフェルの姿の貴方が僕の贈った花束を花瓶に活けて下さる光景は、非常に光栄で嬉しいですよ」
そういうとルーシファスさんは膝を折り、私の手を取って甲に口を寄せてくださいました。
海外の映画では良く観る憧れのシーンだったので私は舞い上がりそうになりましたが、同時に「あ……。これはまた何かやってしまったな」と勘づきました。
(あの、お母様。これはやはり……)
私がそういうと、またしてもお母様の深い溜息が返ってきました。
(そうじゃ。やってしまったな。贈られた花束を花瓶に活けるということは、相手の好意を受け入れたという意思表示じゃ。同姓であれば刎頸の交わりの申し出の承諾、異性であればプロポーズの受け入れにも匹敵する行為じゃ。しかもよりによって窓際の花瓶に活けるとは……。窓の外をみてみよ)
お母様にそういわれて私は窓の外を確認してみました。するとそこには人だかりが出来ていて、皆、こちらを見上げ、花瓶に活けられた花束を指差して驚かれているようです。
(あ、あはは……あははははは……。人だかりができてなんだか大騒ぎになっていますね。あははははは……)
(分かり易く言うと貰ったラブレターを窓に張り出したようなものじゃ。妾が花束の送り主の好意を受け入れたことを宣伝しているようなものじゃ)
私は「ピキーン!」という効果音と共に、石になってしまったかのように身体が硬直してしまいました。
「す、すぐにお花を移し……ます……」
グギギ……ガギギ……と無理やり身体を動かし、私は花瓶に向かいましたがお母様に止められました。
(よせ。もう手遅れじゃ。今更どうしても話題となった噂は書き消せぬ。それに気にせずともよい。ルーシファスも民衆も妾が人妻だと承知している。このことも妾がルーシファスの労を労う最高のおもてなしと理解されるじゃろう)
(あ、ありがとうございます、お母様。以後、本当に気を付けます)
(まったくだ。くれぐれも頼むぞ)
私はお母様はの寛容さに感謝しました。
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【後書き】
因みに、後日、心優はお母様に「それでは魔界では花束をいただいたら、花瓶に活けずにどうするんですか?」と訊いたところ「暖炉にくべる」とのお答えでした。
驚いた心優ですが、お母様曰く「このようにせっかくの花束を無下に扱われる屈辱に耐えることは魔界の紳士の美徳なのじゃ」とのことでした。
なるほど。異性を口説き落とすのは魔界でも大変なんですねと思った心優ですが、それでもせっかくのお花を暖炉に投げ込むことは忍びなく「例えばドライフラワーにするのはダメですか?」とさらに訊いたところ、お母様は邪悪ともとれる笑みを浮かべ「ほう……。なかなか良いな。花が萎れ、色褪せ、カラカラに干からびて朽ちていく様を見せつけてより屈辱を長引かせるというわけじゃな。さすがの妾もそこまで意地悪ではなくてな。一瞬で苦しみが終わるよう、暖炉にくべていたのじゃが、この件に関してはおぬしの方が一枚上手のようじゃな」と心優はあらぬ誤解を招いてしまっておりました。
文化の違い。まさにカルチャーショックですね。
そんなこんなですが、ここまで私の小説を読んでいただきまして本当にありがとうございます。
(⋆ᵕᴗᵕ⋆)
ルーシファスさんは王子様キャラですが糸目属性があり、ここぞというときは「カッ!」と目が開きます。
(`⊙ω⊙´)カッ!!
次はいつルーシファスさんの目が開くのか? 乞うご期待いただけますと幸いです。
(⋆ᵕᴗᵕ⋆)
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