六、黄あんぱんブーム
六、黄あんぱんブーム
美根我は、寝泊まりして居る小学校の調理室で、黄あんぱん作りに、精を出して居た。
「美根我さん。黄あんぱんの売れ行き、順調ですね~」と、茶色い背広の男が、声を掛けて来た。
「いやぁ〜。茶柱さんのお陰で、日に日に忙しくなってますよ〜」と、美根我は、満面の笑みを浮かべた。自分の作った物が認められているという事に、手応えを感じて居るからだ。
「モーフォッフォッ。美根我さんのお人柄が、呼び込んで居られるのですよ」と、茶柱が、称賛した。そして、「銭市場は、見る目が無かったですねぇ~」と、口にした。
「銭市場へ、売り込みに行かれたのですか!?」と、美根我は、驚きの声を発した。初耳だからだ。
「はい。最初に。でも話を聞いて貰えない上に、利用まで断られましたよ」と、茶柱が、語った。
「散々でしたね」と、美根我は、労った。知らないところで、動いてくれて居た事に、感謝しかないからだ。
「モーフォッフォッ。銭市場以外は、好感触でして、この街で、黄あんぱんを置いていない量販店は、ありませんよ」と、茶柱が、にこやかに言った。そして、「銭市場は、恐らく、黄あんぱんの評判を聞き付けて、誰かを寄越すかも知れませんが、黄あんぱんの取り引きを断ってくださいね。すでに、銭市場の方から、断られて居ますので…」と、理由を述べた。
その瞬間、「勿論です!」と、美根我は、即答した。逗子を痛め付けた奴の店と取り引きなどする気は無いからだ。そして、「私は、黄あんぱんで、儲けさせる気なんてありませんよ」と、言葉を続けた。
「モーフォッフォッ。私も、銭市場の方には、一応、忠告しましたし、まさか、自分の吐いた言葉に責任を持っているのなら、来ないと思いますけどねぇ」と、茶柱が、見解を述べた。そして、「お邪魔しましたねぇ」と、その場を後にした。
「さあて、もうひと頑張りしましょう」と、美根我は、気合いを入れ直した。黄あんぱんのブームが、励みになるからだ。そして、作業を再開するのだった。