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美根我の仕返しの時間  作者: しろ組
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二、びずぃねすまんと黄賀忍者

二、びずぃねすまんと黄賀忍者


 美根我と逗子は、茶背広の男の足の向くままに、歩を進めた。しばらくして、瓦礫置き場と化した練兵所の運動場へ進入した。

 茶背広の男が、歩を止めるなり、振り返った。そして、「モーフォッフォッ。ここなら、人目に付きませんね」と、口元を綻ばせた。

「わ、私達を、どうにかするつもりですか!」と、美根我は、身構えた。金品目当ての強盗かも知れないからだ。

 その間に、逗子も、美根我の後ろへ、回り込んだ。

「モーフォッフォッ。これは、困りましたねぇ〜」と、茶色い背広の男が、眉根を寄せた。

 そこへ、黄色い忍び装束の者が、ラムネの瓶を両手に、二本ずつ持ちながら、着地した。そして、「冷たいラムネを持って来たでござる」と、告げた。

「囮さん、助かりました」と、茶色い背広の男が、目を細めた。

「あ、あなた方は、な、何者なんですか?」と、美根我は、警戒した。只者でないのは、一目瞭然だからだ。

「モーフォッフォッ。安心してください。私達は、ある者を追って、この街へ来たのですよ」と、茶色い背広の男が、告げた。

「ある者?」と、美根我は、訝しがった。にわかには、信じ(がた)いからだ。

「この街を焼け野原にするように、仕向けた人物とでも、申しますか…」と、茶色い背広の男が、あやふやに言った。

 その瞬間、「何だってぇ!」と、美根我は、怒りを露にした。妻と娘の仇と言っても良いからだ。

「私は、あなた方なら、信じられると思いましたので、お声を掛けさせて頂いたのですよ」と、茶色い背広の男が、動機を語った。

「しかし、模罹田とは関係は無いでしょう?」と、美根我は、眉を顰めた。模罹田が、燃爆に関係する者の知り合いとは、到底、思えないからだ。

「いえ。あの市場の取引先のBBCCという施設のゲスホという新入りの軍人が、身分を偽って、燃爆の研究をして居るのですよ」と、茶色い背広の男が、告げた。

「じゃあ、逗子も、研究材料という訳ですね」と、美根我は、理解を示した。堂々と、燃爆の研究なんて口に出来るものではないからだ。

「あたい、皆が来てくれなかったら、今頃は…」と、逗子が、言葉を詰まらせた。

「恐らく、飼い殺しでしょうねぇ」と、茶色い背広の男が、さらっと言った。

「で、私に、何をしろと仰られるのですか?」と、美根我は、尋ねた。そろそろ、本心を聞きたいからだ。

「あなたに、ある食べ物を作って頂きたいのですよ」と、茶色い背広の男が、勿体振った。

「ある食べ物?」と、美根我は、眉間に皺を寄せた。そして、「私は、在る食材で、賄いを作る程度ですよ」と、素っ気無く言った。料理人程の技量は無いからだ。

「お義父ちゃん、黄色い餡子のあんぱんなんか、どうかしら?」と、逗子が、提案した。

「う〜ん。味は、自信無いけど、作り慣れているから、黄あんぱんにしようかねぇ」と、美根我も、同意した。黄あんぱんが、無難だからだ。

「売り込みの方は、私達に任せてくれませんか?」と、茶色い背広の男が、申し出た。

「それは、構いませんが。あなたは?」と、美根我は、尋ねた。素性は、知りたいからだ。

「お人好しのびずぃねすまんとでも名乗っておきましょうかねぇ。モーフォッフォッ」と、茶色い背広の男が、言葉を濁した。

「分かりました」と、美根我は、聞き入れた。これ以上の詮索は、不味いと直感したからだ。

 間も無く、四人は、ラムネで、乾杯するのだった。

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