プロローグ、夢に出て来た少年の話
プロローグ、夢に出て来た少年の話
「美根我さん」と、子供に呼ばれる声が、聞こえた。
その瞬間、美根我は、目を覚ました。その直後、「わっ!」と、驚きの声を発した。眼前に、少年の顔が、在ったからだ。
「美根我さん、お久しぶりです」と、少年が、親密な態度で、挨拶をした。
「は、はあ…」と、美根我は、生返事をした。見覚えは有るのだが、誰なのか、思い出せないからだ。
不意に、「どうやら、お忘れのご様子じゃのう」と、少年から別の声がした。
「ええ!?」と、美根我は、目を見張った。少年が、声色を変えて発して居るようには見えないからだ。
間も無く、少年の頭髪から、黄色い玉に、手足の付いた小人が、現れるなり、「ピピピの森で、出会った黄玉ですよ」と、にこやかに、名乗った。
「ひゃっ!」と、美根我は、面食らった。記憶に無いからだ。
「父さん、仕方無いですよ。美根我さんからすれば、僕達は、夢の住人みたいなものですからね」と、少年が、淡々と語った。
「そうじゃったな。先日は、美根我さんの夢にお邪魔させて貰ったんじゃのう」と、黄玉の親父が、胡座を組んで、頷いた。
「ちょっと、思い出せませんね〜」と、美根我は、苦笑した。そして、「私を存じて居られるようですけど、あなた方は、いったい…」と、訝しがった。一方的に知られて居るのが、気味悪いからだ。
「わしは、ちょっと、噂を小耳に挟んだんじゃが、美根我さんの娘さんを拐かした連中が、許せなくてのう。そいつらに、お仕置きしてやりたくなったので、このような形で、相談に来たんじゃよ!」と、黄玉の親父が、理由を述べた。
「確かに、あの誘拐の件は、頂けませんね!」と、美根我も、怒りを露にした。逗子を営利目的で、誘拐した奴らには、落とし前を付けさせなければならないからだ。
「美根我さん、お仕置きのやり方は、わしらに任せて貰えんかな?」と、黄玉の親父が、申し入れた。
「と、申しますと?」と、美根我は、興味津々に、尋ねた。黄玉の親父のやり方に、興味がそそられたからだ。
「そうじゃのう。簡単に言えば、この世の血極を見せてやるつもりじゃ」と、黄玉の親父が、告げた。
「この世の血極ですか…?」と、美根我は、小首を傾いだ。燃爆以上の血極など、思い付かないからだ。そして、「どんな形でも構いませんので、お願いします」と、承知した。自分のやり方では、連中を追い込めそうもないからだ。
「わしらは、卑畜には、容赦しないのでな」と、黄玉の親父が、示唆した。
「父さん、止めは、美根我さんに、やらせては、どうですか?」と、少年が、提案した。
「うむ。一番、美味しいところを、美根我さんに任せるとしよう」と、黄玉の親父も、同意した。
「じゃあ、決行日は、お盆の頃で、どうでしょうか?」と、少年が、提案した。
「うむ。わしらの黄力が、高まる時期じゃから、それで行こう!」と、黄玉の親父も、賛同した。そして、「美根我さん。お盆に、また、お会いしましょう」と、告げた。
程無くして、「はっ!」と、美根我は、目を覚ました。だが、内容は、記憶に無かった。そして、時計を見やり、深夜の二時手前を視認するなり、「見回りの時間ですね」と、起き上がるのだった。