第二十二話 目隠し出陣
そして戦場は停滞したままだった。
何日も何日も戦況は変わらない。
そんなある日、ご主人様の部屋に呼ばれた。
「今日はだな。国から新しい拘束具を持ってきたから試したいんだ」
そう。急に言ったご主人様。その手の中にはたくさんの拘束具があった。
俗にいうギロチン拘束具や、バイオリン型首枷、さらには、普通の口枷もある。
ご主人様は変態だ。この前の貼り付け拘束みたいなものを今日もやるのだろう。
「あの、ご主人様。まさか今日はこの拘束具をつけて寝ろという事ですか?」
「決まっているだろう。この拘束具をつけて生活してもらう」
憂鬱だ。
そして私の首にはギロチン型拘束具がつけられた。
大まかに言えば、首と両の手を一つの木の板で拘束してしまおうという物だ。
ああ、最悪だ。なんでこういった高速の仕方をするのだろう。さらには、口に、ギャグボールという大きな丸い物を加えさせられた。そのおかげで口からよだれが止まらない。
「ふぬぅいぬと」
「お前はなんて言ってるんだ?」
喋れない。自分の意志を言えない。さらに、足も、頑丈な鉄の枷に括り付けられた。長い鉄の板だ。そして、最後に目に布をかぶせられる。
「これでお前は何もできない」
「ふぐぅ」
嫌だ、何も見えない。何もしゃべれない。
今まで地獄だったけど、まさかここに来てこんな地獄のような責めをされるとは。
そんな時、後ろからこちょこちょされた。
正確には後ろかどうかわからない。ただ、うしろからくすぐったい感覚を覚えたから、背中からだと思っただけだ。
なんて地獄だ、これを地獄と呼ばずになんというのか。
これ、もしかして拷問に当たるんじゃ。
本当にこの人、誰か止められないの?だって、本当におかしいじゃん。
こんな変態。
むう、まさか明日まで来れ?
ちょっと寝られないんだけど。てか、地獄のようなくすぐりなんだけど。
「いdjんcじしdsかいぽlkじょさl」
言葉にならない叫びが周りを覆う。
よだれもやばいし。誰か本当に助けて。
その後暫くして、くすぐりは治まった。
だけど、まだ油断はできない。あの人なんだから。
そんな時間が続く。そう言え場訊いたことがある。戦場では性欲が溜まる。そのための慰安婦がいる。
恐らく私は疑似的にそれを体験しているのだろう。
慰み物にされてないだけましと言えるだろう。
いや、同じくらい地獄かもしれない。
何も感じない今、苦痛でも味わった方がましなのだろうか、
それこそ先ほどのこちょこちょのほうが。
……いや、マシなわけがない。
そもそも私は他人に犯されたことなんて無い。普通に未知の世界だ。
とはいえ、他人に胸を揉まれたいかというと答えは絶対にNOだ。
何しろ、私でさえ、自分の胸を触ったことがない。
さて、地獄だ。
考えことで、時間を潰していたが、まだ十分すら立っていないだろう。
今、ご主人様は今の私の状態を見て、興奮している。そう考えたら屈辱だ、
やば、よだれがたれてきて、気持ち悪い。
ああ、全てが意味が分からない。
もしかして、戦争が終わるまで、永遠にこの地獄は続くの?
嫌だあ。
「朝だ」
そのご主人様の声で目が覚めた。
「もが」
口枷のせいで返事が出来ない。
「じゃあ、この状態で、出撃をしよう」
「……」
は?
今なんて言ったの?
このまま出撃?
冗談だよね?
流石に冗談であってほしい。
その次の瞬間、私は馬に乗せられている感触を感じる。目隠し、口枷、そしてギロチン。
完全に、戦場に出る姿ではない。
しかも感じ的に、これご主人さまの後ろだよね。
本当にいい加減にして。
本当に、この人死んだ方が良い。
今、私がどう見られているのか分からないけど少なくとも良い。
周りから弓矢の音が聞こえる。なんだあこれらすべてが嫌だ。
刺さるのか刺さらないのか分からない矢。これが私の恐怖感を増している気がする。
何よこの地獄は。本当に嫌になってしまう。
しかも、段々と怒号が聞こえ始めてくる。
その声は私をおかしくさせるようだ。
断末魔、そして叫び。視界が封じられてるからこそわかる。
この戦場は地獄だ。地獄度合いがさらに跳ね上がっている。
(っ痛)
弓矢が当たった。でも、どこに当たったのか分からない。
痛み的に、腕だろうか。
でも、どこか厳密には分からない。
分からない、分からないよ。




