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少年少女、痛み分け

 ──この街に潜む秘密組織を倒すため、手伝ってほしいんです。


「いやいや、そんなのいるわけないだろ」

「オカ研部長の立場としては、“いる”って言いたいところだけど。でも、あの子ってなかなか妄想に入りこんじゃうところがあるのも事実なんだよね」

「ヘビーだな……。結局押し切られて、調査に付き合わされることになったし」


 日が落ちゆく帰路を、双葉と並んで歩く。

 からっとした空とは反対に、心は沈み気味。

 最終的に、僕は校内での評判を守ることを選択した。

 現状でもカースト下位ではあると思うが、「後輩をむりやり襲おうとした人間」なんてレッテルを貼られたら最底辺である。

 あと一〜二年ある高校生活を蔑まれて生きるのは、とてもつらい。


「まあ、調査すること自体は別にいいんだけど」


 しばらくは休校だろうし、だからと言ってすることもないしな。

 四谷から聞いた緑の霧の話もあり、謎に対しての好奇心が昂っている。

 それに、もともと調べるつもりではいた。


「とは言っても、具体的にどんなことをするの?」

「まずは地震当時のことを聞きこみかな。あと緑の霧とやらの範囲も調べたい」

「大丈夫? 体力もつ?」

「おいおい、舐められたものだな。実は日頃から運動してたりするのさ」

「へ〜、意外」


 体力がないと万事がダメ、と気付いてからは、こまごまとウォーキングをしたりしている。

 最低限の健康的な生活だ。おかげで、体力テストの結果もクラスで中ほど。

 ……基本的な身体スペックが低いので、平均レベルにいられるだけ前進である。そう思いたい。


「あとは電気施設も気になるな」

「なるほどね。でも……」

「双葉もうすうす気付いてるだろうけど、正直僕は荒唐無稽な話だと思うよ」


 フィラデルフィア実験は、「電磁コイルの力で船を透明化させる」というもの。

 案として挙げてはみたものの、恐らく実行は不可能だろう。

 状況から判断するに、規模はおそらく市全体、もしくはそれ以上。


「まず一つに、前例がない。二つ、理論がない。報告書もない架空の実験が、裏付けになるものか」


 そんなおかしな計画を推し進める組織があるだろうか?

 ほかにも、動機がない。人員がいるはずない。予兆もない。無いことづくめである。


「僕は、オカルトを否定するために調査をする。この世に不思議なことなんてないし、秘密組織もいない。すぐにでも反証してみせるよ」

「けーちゃんは、変わったね」

「変わらない人間なんていないさ」


 さびれた煙草店、突き当たりの丁字路。

 じめっとしたぬるい風を浴び、立ち止まってカラスの声を聞く。


「じゃあ、また明日」

「……?」


 手を振って別れようとしたのだが、双葉は訝しむような妙な表情。

 なにか、変なことを言っただろうか。


「アンタ、もしかして忘れたの?」

「んん?」

「あたし、こんなんなっちゃったから帰っても仕方ないのよ。だから、ついてくって言ったじゃない」

「……ああ!」


 そういえばそうだった。

 考えごとに夢中で、すっかり忘れてたな。


「いま思い出した、って顔ね。ほんと、抜けてるところがあるんだから」

「お前はいいのかよ。幼なじみって言っても、男の家に泊まるとか」

「べっつに? なんも問題ないけど? むしろけーちゃんのほうが気にしてたり?」

「んなわけないだろ。色気もないし、女として意識したことなんてないが?」

「はぁ〜〜? むかつく……!」


 思えば、昔から互いの家に泊まっていた関係だ。

 いまさら困ることもないだろう。さっさと帰って、寝るとするか。


◇ ◆ ◇


 困った。

 おかしい。同じ空間に家族以外の異性がいると、こうも調子が狂うものか。

 自室のベッドに腰かけ、深くため息をつく。


 生活に関しては、たしかになにも困ることはなかった。

 双葉は食事を必要としていない。そもそも物質がすり抜ける。

 汚れないのでお風呂も不要。アイツとしては、乙女の沽券として葛藤があるらしいが。

 ただ、ほかの人間には見えないため、布団を敷くのは不自然になってしまうだろう。


(というか、双葉の状態がよく分からん!)


 物には触れられないのに、地面や床を通り抜けたりはしないし。地味に不思議だ。

 聞いたら教えてくれるのだろうか。いや、セクハラになりうる……?

 どっちかと言うとゴーストハラスメント? それも意味不明か。


「なによ、さっきから難しそうな顔して」

「ちょっと深淵に思いを馳せてるだけだよ」

「はぁ……。それより、あたしはどこで寝たほうがいいの?」


 先述のとおり、布団を用意するのは傍目から見て変。

 それならば、妥協案にはなるが。


「僕はソファで寝るから、双葉はベッドを使いな」

「えっ、嫌よ。気を遣わせるくらいなら、あたしがソファにする」


 即答されてしまった。

 双葉は曲げたりしない。このままだと、本当にソファで眠るだろう。

 しかし、人間としてここは退けまい。


「それこそ気を遣う。絶対に、ベッドを使ってもらうよ」

「寝覚めが悪いじゃない。けーちゃんこそ、ベッドに寝るべき!」

「だったらいっそ、二人でベッドを使うか?」


 ここは攻めの一手。

 流石にこれを聞いて、なおも意見を押し通してくることはないだろう。

 悪いな双葉、僕の勝ちだ。


「っ、いいじゃない。二人でベッドに寝れば解決ね」

「は……?」


 馬鹿な。攻め返された……だと。

 どうする? どうすればこの頭脳戦を制し、アイツにベッドを譲ることができるんだ?


「もしかして、意識しちゃうから無理だとか? けーちゃんったら、思春期なんだから」


 ぷちん。


「は? ちんちくりん相手に意識なんてしないが? そこまで言うなら、一緒にベッドを使ったらぁ!」


 僕は、後にその発言を悔いることになる。

なんやなんや、いちゃいちゃしとるやん!

くそっ、じれってえな。ちょっとやらしい雰囲気に……。えっ、ダメ? レーティング変わっちゃう? そっかぁ……。


読んでいただけて嬉しいです。BIG LOVE

いいねや評価ポイントをいただけると、青春敗者の作者が喜んで続きを書きます。

感想やレビューも……もらってみたいな! って気持ち。

ではでは、また次回!


(それはそれとして、後書きってなにを書けばいいの?)

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