第1話
「くきゅっ!?」
こんにゃくだ。
こんにゃくを喉に詰まらせてしまったのだ。
やってしまった。
あんなにお母さんによく噛むように注意されていたのに。
息が出来なくて、目が底でチカチカするそこで私の意識は途切れた。
────
「こ、こんにゃくッ!!」
「大丈夫かの?」
「こ、こんにゃくが……」
「そのことだが、すまなかったのう」
「え?」
どういうこと?
私がこんにゃくを喉に詰まらせたのはこの神様と何か関係があるの?
「おぬしがこんにゃくを喉に詰まらせたのは、わしのミスじゃ」
「はぁ!?」
「わしはこんにゃくの神。こんにゃくを司る偉大なる神じゃ」
こんにゃくの神?
そんな神、聞いたことがない。
「本当に申し訳ない!」
「ミスなんだったら生き返れたりって……」
「それは無理じゃ。わしの力不足ですまないのう」
生き返れないのか……。
人生これからって時に……。
「しかし、わしより位の高い神に相談して、おぬしは異世界に転生できることになったのじゃ」
異世界!
チート能力を手に入れたりできるのかな!
「どんな世界なんですか?」
「魔法があって、地球にはいないような生物もたくさんいるのじゃよ!」
「魔法って私も使えますか!?」
「使えるはずじゃ。ミスのお詫びに使える魔法やスキルを強いものにしておいたのじゃ」
こんにゃくの神様!
なんて良い神なんだ。
「では転生するがもう要望はないかの?」
「えっと…この世界の情報がもっと欲しいですね」
「後でなんとかしておくのじゃ。頑張るのじゃ!」
なんとかしておくって。
本当になんとかしてくれるのかな?
もう家族や友達と合えないのは悲しいけど、普通の人より強い魔法やスキルが使えるんだから、これから頑張っていくしかないよね!
私の新しい人生の幕開けだ!
────
『──エメルさん』
「ハッ!」
何の声?
機械音声?
『私は神からの頼みであなたのお手伝いをさせていただきます』
「こ、こんにゃくの神!」
助かった。
賢そうなAIじゃないか。
これでこの世界のことも安心だな。
「お名前は?」
『ありません』
「じゃあ私が付けるね。えーっと……」
AI感あって、可愛い名前……。
というかこの世界寒い。
冬にしても寒い。
こんなとき暖房でなら……。
暖房、といえばエアコン。
エアコン……。
エア!
「エア!エアって名前はどう!?」
我ながら良い名前だと思う。
AIのエアも残ってる。
エアコンからの発想だけど。
『ありがとうございます。では、今後はエアとお呼びください』
「はい!」
エア、エア……。
正直、私にこんなにネーミングセンスがあったなんて驚きだ。
エアってすごい機能あったりするのかな?
エアに期待しつつ寝床を探す。
木々の間から沈んでいく夕日が見えた。