迎え盆の運転代行
8月13日のこと。
父親の初盆ということもあり、墓参りに行って来た。
墓の掃除をし花を手向けた後、霊園の出口近くで持っていたやかんを返すと、ふと肩が重くなった気がした。
水を入れ過ぎてたからかなと思う。
誰かに呼ばれたような気がして、振り向くと「坂上家先祖代々の墓」と書かれた墓石が目に入る。
坂上さんという名には覚えがあった。
確かうちの実家の近くにいたような……
帰りの車を運転しながら思い出そうとしたのだが、肩の重さが気になって思い出せない。
実家の傍まで来て角を曲がろうとした時、
「すまんかったね」
と声が聞こえ、すっと肩が軽くなった。
その声に聞き覚えがある。
いつも車椅子で散歩していたおじいさんだ。
そう、あのおじいさんの名前が坂上さんだった。
父より少し前になくなったとは聞いていたが……
実家で仏壇に線香をあげていると、煙の中に坂上のおじいさんの姿がぼんやりと浮かび、こうつぶやいた。
「足が不自由だったもんでな、ちょっと真也くんの肩を借りて家まで連れてって貰いましたわ。
うちの息子どもはなかなか墓参りに来てくれんのでな。
ありがとうさん」
送り盆の日には別の道を通って行こうと心に決めた。