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バッドエンドを迎えた世界  作者: ぱれつと
チャプターⅠ 異世界生活スタート
9/42

7話 1日目・END

 ランビリスさんは仕事の続き、イアは本を取りに行くということで、一人残された俺は、つい先程自室となったばかりの部屋を見ることにした。


 木製の扉をドアノブを捻って開けると──そこにあったのは、木の温もりだ。床も壁も木製。


 家具はベッドと机と椅子とクローゼットがあるだけで、必要最低限の物だけだ。全部屋にこれと同じだけの家具が置かれていると考えれば、めちゃくちゃ凄いんだが。


 広さは大体5畳分くらいかね。


 証明は、扉横の壁にあるスイッチを押すと、電球的なやつの中に炎がつく仕組みだった。この部屋で唯一の異世界要素である。


 そして扉と対になる位置には、窓もあった。なんとなく、窓から首を出して景色を見てみる。

 そこからは、鮮やかな緑の森が広がってあるのが見えた。


 また今度、散歩がてら散策してみよう。昨日までの俺なら、パソコンゲームばっかに没頭していて、外に散歩しに行こうなんて絶対に考えなかっただろうな。


 そういえば、この世界にスマホとかパソコンとかあるのか? ……絶対ないだろうけど。

 あ~大丈夫かな電気機器のない世界で俺生きていけるかな。


『コンコン』


 その時、俺の不安を下記消すように、扉を2回ノックされる音が聞こえた。


「どうぞ~」


 と答えると、入ってきたのはイアだった。手には本を抱えている。早速探してきてくれたらしい。


「お邪魔するわね。──はい、本を持ってきたわよ。一先ず、パラミシアの昔話が載る絵本を3冊」


 そう言いながら、イアが本を机の上へ置いた。絵本というだけあって一冊一冊が薄いため、積まれても高さはあまりない


「ありがたいよ。そうだ、イアはいつも何してるんだ?」


「日課ってこと? 私は剣術の稽古ね」


「めっちゃ偉いな」


「……私にできることは、それぐらいだから」


「イアさえよければ、俺にも今度教えてくれないか?」


「頼まれなくても、護身術程度なら教えるつもりよ。死なれても困るし」


「サンキュー」


「別に。それじゃあ私は退出するわね。読書に励んで」


「ああ」


 イアが部屋を退出した後、俺は椅子に腰掛け、机の本に手を伸ばした。


 積まれた本を一つ一つ手に取り、表紙がよく見えるよう横一列に並べ直す。

 タイトルは『竜の友達』『幸せの妖精』『桃太郎』


 ──ん? 1冊、明らかに見覚えのある昔話が……

 そう、あの有名な『桃太郎』だ。何故?!

 ページをめくって内容を確認してみたが、やはり知ってるものと同じ。

 そして文字も同じだった。平仮名、片仮名、漢字で構成されている。


 俺は残る二冊『竜の友達』『幸せの妖精』の内容も確認した。


 だがやっぱり、昔話というだけあって内容は幼稚向けだ。こちらも文字は日本と同じだった。


 内容を紹介すると

『竜の友達』……仲間のいない一匹の嫌われものの竜が、森の動物を助けたことで友達がたくさんできる話。


『幸せの妖精』……見つけた者には幸せが訪れると言われている妖精を探す、子供たちの話。


 昔話という仮想の物語ていうか、パラミシアなら本当のことを物語にしてそうだよな。実際ドラゴンいたし。幸せの妖精もいそうな感じするわ。


 本をまた机に積み、俺はベッドへ横になった。

 家のベッドの方が寝心地はふわふわだったが、どうであろうとやはり、ベッドというのは心が落ち着く。


 壁を見るとかけ時計あった。時刻は4時30分となっている。


 ルアの言っていた夕飯の時間まで、あと1時間半か。


 疲れたし──寝よう!


 自分で思っていた以上に疲労は溜まっていたらしく、目を閉じると俺は一瞬で眠りの深海へ溺れた────



  ◇◇◇



『ドーン!ドーン!ドーン!』


 耳元で、鼓膜が破れそうな程強烈な音が聞こえた。


 無防備な状態で不意をつかれた俺は、驚きで飛び起きる。し、心臓飛び出るかと思った……


 バクバク鳴る心臓を押さえながら、音の聞こえた横を見る。そこには、フライパンとお玉を持ったルアがいた。


 睨まれてはいないのに、感情のない無表情のせいで少し体が縮こまる。


 そのルアのオーラと、先程の爆音アラームで眠気は全て吹き飛んだ。ありがたい。……ありがたいこと……なのか?


「夕食の時間です。しゃきんと起きてください」


「あのぉ……できればもう少しおしとやかな起こし方を……」


 耳がキーンってなってるんですが……


「最初はおしとやかに起こしていましたが、リョーガにまったく起きる気配がなかったので致し方なく。死んでるかのように無反応でしたよ」


「死んでるとか不吉なこと言うなよ!」


 しかしルアは、俺の完璧なツッコミを華麗に無視して


「夕食が冷めてしまいますから、早く来てくださいね」


 それだけ言い、背を向けて部屋を退出して行った。


 呆然とその光景を見送った後、俺もベッドから降りて立ち上がる。

 足元は、まだ少しふらついた。


 ……寝てもこの世界で起きたということは、やっぱり現実なんだな。……ちょっと安心した。


 部屋から出ると、ラウンジへ直行だ。


 中央のテーブルには、既にイアとランビリスさんが座っていた。


「遅れてごめんな」


 二人に手刀を切り、俺も空いていた切り株──じゃなくて椅子に座る。


「ルアがあの起こし方をしたってことは、随分爆睡していたようね。疲れが溜まっていたのかしら?」


「多分そうだろうな。実際、今も頭の中がパンク状態だよ」


 よく考えたら今日俺、30分近く延々と歩いてその後息つく暇もなく、ややこしいパラミシアの情報を脳みそに入れたんだもんな。

 自覚したら、もう体ボロボロだわ……


 そこへキッチンからルアが戻ってきた。もちろん、フライパンとお玉は持っていない。


 そういや、イアたちの方ばっか見てて、夕食のメニューを見てなかったな。これは──


「唐揚げ?」


「はい、唐揚げです。お気に召しませんでしたか?」


「あっいや全然そういうことじゃなくて、まさか俺の知ってる食べ物が出てくるとは思わなかったからさ」


「あなたのいた、地球と同じ食べ物がってこと?」


「ああ。料理も地球と同じなのかなぁ」


「全て同じ、というわけではないかもしれません。たまたま今回の唐揚げが同じだっただけという可能性も。それに、美味しい食べ方を追求する以上、同じような食べ方にたどり着くというのも、当然のことかと」


「あっ成る程」


 流石は料理を担当してるだけある。食に関しては一番知識が豊富そうだ。


「とにかく、雑談は止めて早く食べましょう。せっかく僕が作った料理が冷めてしまいます」


 と、いうことで──


「いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

「いただきます」


 勢いで言ったが、パラミシアのご飯の際に言う挨拶も同じようだな。

 冷静にそんなことを思いつつ、俺は真ん中の大皿に山のように乗せられた唐揚げを一つ摘まみ、口に入れた。

 あっ、ちなみに箸を使ってるぜ。箸も日本特有なはずだが、これも同じだったな。


 噛んだ瞬間、口の中で唐揚げからサクッていう音がした。そしてすぐに、じゅわっと肉汁が溢れてくる。


「めっちゃうま!? こりゃ絶品だなぁ」


 思わず叫んでしまう程、マジでこの唐揚げは旨かった。ヤバイはこれはヤバイ。


「お気に召されたようでなによりです。ただ、声量はほどほどに」


「あっすみません」


 (たしな)められながらも、俺はまた唐揚げを頬張る。……やっぱ旨いわ。


「そうだリョーガ、さっき部屋に持っていった本だけど、どうだったの?」


 白米を食べながら、イアが聞いてきた。

 唐揚げを飲み込んでから、俺もその質問に答える。


「言葉は全部同じだったよ。更に更に驚くなかれ、桃太郎に関しては、日本にもあった物語で、内容も完全一致だったんだ!」


「まあ、それは確かに驚きの事実ね」


「だろだろ?」


 また唐揚げを取ろうと大皿を見ると、既に唐揚げは残り3個だった。

 更に今、イアが1個取ったため、残り2個。そういえば、よく思い出してみると、大皿に乗った唐揚げの半分くらいはイアが一人で食べていたような……

 見かけによらず、結構大食いか?




 そして食事も一段落して────


「それじゃあ改めて、私の自己紹介をしようか」


 そう言い始まった、ランビリスさんの自己紹介。そこで判明した、驚きの事実が──


「ランビリスさん今年で“340歳”!?」


 そ、そっか……ルーンが宿ると老いがなくなるから、それぐらい生きてても不思議ではない──のか?

 30代の見た目にしては、年期のある落ち着いた雰囲気があるな~って思ってたが、そういうことか。

 にしても長生きの次元越えてとるわ!


 ちなみにランビリスさんの容姿は黄褐色の髪色で、瞳の色は青緑色、イメージは優しいおじ様って感じ。そして実際優しい! こんな父親がほしかったぁ……


「うんうん、やっぱりそういう新鮮な反応が当たり前だよねぇ。サファイアちゃんとルビーちゃんは全然驚いてくれなかったから、なんだか嬉しいなぁ」


「二人は驚かなかったんですか?!」


「ええ。理論的に考えて、あり得ない話じゃないもの」


「どんだけ肝が座ってんだよ?!」


「そういうことではない気が……」




 と、まあ色々あったがその後、続けて俺の事情説明も始まった。


 話した内容は、基本カフェで双子に言った説明と同じだ。2回目なため、話は結構スムーズに進んだ。3人が、俺の話を遮らず静かに聞いてくれたというのもあるだろうけど。


 そして全ての話を終えて────


「異世界……地球か。信じがたい話ではあるが、君が言うんだ。真実なんだろうねぇ」


「し、信じてくれるんですか? こんな突拍子もない話……」


 俺は驚き、目を見開く。


「ああ。──私はね、人の善悪の目利きも得意なんだよ。君は善人だ、嘘はついていない」


 そう言いランビリスさんは、優しく笑った。


 なんちゅー心の広い優しいおじ様……この人こそ本物の善人だろ。


 ────しかしルアは、隣で一人声を震わせ……言った。


「……おじさんは、善人だからって人を簡単に信用しすぎです」


「ど、どうしたのルビー?」


 サファイアも驚いたようで、ルビーに声をかける。だがルビーはそれに答えず、言葉を続ける。


「善人だからといって、この人が信用に値する人間かどうかは、別問題だと思います。僕は……()()()()()()()()()()()()()()()()


 その声は、少しの怒気が含まれているようで……それでいて……とても悲しげなものだった。


 ガタリと音を立て、ルアが椅子から立ち上がる。

 そして食器をキッチンまで運び、シンクで水に浸けた。


「食べ終わった食器は、水に浸けておいてください。……ごちそうさま」


 呟くようにそう言うと、ルアは自室に戻って行った。まるで、人を突き放すかのように……


 その背中を見届けてから、イアは


「……悪く思わないであげて。あの子は昔からあまり、人を信用しようとしないの」


「……い~や、ルアの言っていることは最もだ。出会って初日の男を信用する人なんて、いないだろうさ。お前らからの信用は、行動と態度で得てみせる。──ランビリスさん、改めて尋ねます。俺は、ここに住まわせてもらっていいんですか?」


 この質問に、ランビリスさんは笑顔で


「うむ、もちろんだ。好きなだけいてくれ。知らないことだらけで戸惑うことがあれば、いつでも聞いてくれていい。その代わり私も、君の住んでいた地球について、また詳しく教えてほしいな」


 はっはっはっと、ランビリスさんは笑う。

 なんて心の広いおじ様だ。感謝感激雨あられですわぁ……これこそまさしく人間国宝!


 それに俺自身が、ここまであっさり受け入れてもらえるとは思ってなかったから、正直今心の中でめちゃ驚いてる。

 俺、運が良かったなぁ……


 その後少し雑談を交え、時間も時間ということで解散となった。


 とりあえず今は、ルーンが完全に宿るのを待つことに。遅くても、1~2週間くらいで宿るらしい。早いのか遅いのか分かんないな。


 最後にランビリスさんが俺に向かってこんなことを言った。


「それにしても、不思議な話だ。ルーンというのは普通、長き時間を魔力濃度の高い場所で過ごさなければ、絶対に宿らないとのだというのに……その地球という世界は、魔力濃度の高い世界なのか?」


 これに俺はなんと答えていいのか分からず、苦笑いで首を傾げるだけとなった。


 食器はちゃんと水に浸け、俺は自室に戻る。


 そして一人、ベッドへダイブし横になった。上に見える天井も、木製だ。


 ──こうやって唐突に一人になると、やっぱ色々考えちゃうよな。

 つい昨日まで、いつもどおり家のベッドで寝ていたのが嘘のように思えてくる。


 っと危ない。寝る前に、腰に着けた鞄は外さないとな。こういうのって、寝返り打った時に下になると地味に痛いんだよ。


 ベルト式になっている物だったが、寝っ転がったままでも結構すんなり外すとこができた。

 だが結局立ち上がり、少し離れた位置にある机まで、鞄を置きに行く。


 ──ん?


 その時、何か違和感を感じた。

 ()()()()()()()()()()


 鞄を傾けてみた。──うん、やっぱ入ってるな。


 俺は鞄のボタンを開けて、中身を探った。そしてその謎の中身は、結構すんなり見つかって──(いや当たり前じゃん、それしか入ってないんだから)


 鞄の中に入っていたのは、無色透明の水晶だった。……()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……


 俺は水晶を手に取る。

 宝石かって程綺麗だ。目利き能力なんて俺にはないが、思わず見とれてしまう。


 にしてもいつの間に入ってたんだ?


 ──これって、俺がこの世界で持っていて、唯一知らないし心辺りのない物になるのかな。

 いや、異世界にいるのに、元の世界での俺の所有物を着ている方が、普通に考えるとおかしいことかも……まあいっか!

 水晶を鞄へ戻す。


 そしてまたまた、ベッドへとダイブした。


 天井を見て、考える。


 ──にぃしてもなぁ……俺が思うのもあれだけど、ここまで物事がスラスラ進むとは驚いた。

 普通もっと警戒されるだろうし、異世界から来ましたー! なんて話、絶対信じてもらえないだろう。

 俺としては、この世界が異世界であって、正直俺自身がまだ信じきれていない。もしかしたら、次起きた時には元の部屋のベッドで寝ていた可能性も、って思ってたりする。


 でも多分、それはないんだろうな。


 どういう事情があって、俺が漫画にあるような異世界転生をしたのかはまったく分からないけど……考えてもしょうがないか。

 俺が今、地球以外の世界──パラミシアにいるというのは、否定のしようがない事実なのだから。

 それが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 なら難しいことは考えないで、これからの異世界ライフを楽しもうではないか!

 適応能力だけは人一倍優れてるって我ながら自負してるからな!


 それに……元の世界に帰りたいとは思わないし。帰ったところで、俺に居場所なんてないんだから。


 ん~ただちょっと心残りなのは、人気漫画の最新巻をまだ読んでいなかったこととか、もうゲームができないかもしれないってこと。

 これ、結構重大な問題だぞ!


 あと俺のパソコン! 誰かに中身見られたらと思うと、赤面せずにはいられない。……別にやましいものがあるわけじゃないよ?

 ヤバイなぁ……パソコンだけ回収するか破壊したい……


 ──と、まあここまでもちろん、全部本心だったがそれよりも──重大なことがある。


 俺は、カフェでイアから聞いた、この世界が支配されているという話を頭の中で再生した。


 ……やっぱり、ここはRPGの世界でも、なにものでもないんだな。

 俺のやってきたRPGゲームは、最後必ず勇者が魔王を倒して、世界に平和が訪れる。何度負けても、()()()()()()()すればまた何事もなかったように()()()()()だ。

 でも、それができるのはゲームだから。現実は、ゲームのようにコンティニューができない。

 どこかで聞いたことがある。ゲームのコンティニューは、同じ世界をやり直しているのでなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと。

 だから、勇者が負けて“バッドエンド”となった世界がその後どうなったのか、プレーヤーは知ることがない。プレーヤーが知ることのできるのは、ハッピーエンドを迎えた後の世界だけ。


 ……つまりここは、“バッドエンドを迎えた世界”なんだ────

ようやく1日目が終わりです。

非現実的な現実を平然と受け入れる、リョーガくんの適応能力が凄いですよね(;´∀`)


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

よければブックマーク、評価の方をしていただければ、とてもとても励みになります。

次話も読んでいただければ嬉しいですm(_ _)m

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