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バッドエンドを迎えた世界  作者: ぱれつと
チャプターⅠ 異世界生活スタート
8/42

6話 常識は異ならない?

 アップルカフェを出た俺たちは、人目につかない路地裏を進んでいた。


 ここに来るまでに頭の整理は済んだため、俺は気兼ねなくまた疑問を口にする。今思っている、この疑問を──


「……なあ、マジでこんな道通るのか?」


 今俺たちが進んでいる路地裏は、幅が人一人ギリギリ通れる程しかない。明かりもないから、夜とか通ったら真っ暗で何も見えないんじゃってくらい。

 そりゃあ、不安にもなりますよ……


「マジよ。怯えてないで、ちゃんとついてきて」


「怯えてはおらんわ!」


 そうこうしてるうち、1、2分で路地裏を抜けた。


 するとそのには──なんということでしょう、3・4階建てくらいの()()()()()()()()があるではないですか~☆


「ここよ」


 素っ気なく言うイア。


 いやいや誰が想像できるかよ……薄気味悪い路地裏を抜けた先に()()()()()()()()、そこにオシャレ~な建物が建っているなんて!

 驚きで目玉が飛び出しそうになったわ!


「ほら、突っ立ってないで。早く中へ入るわよ」


 人の心情も知らず、すたこらさっさと入って行く双子の後を、俺も慌てて追いかける。


 扉を開けると、チリンという鈴の音が鳴った。


 そして建物内で真っ先に視界へ入ったのは、所狭しと置かれた道具や武器の数々だ。剣や槍はもちろん(?)のこと、斧・ノコギリ・モーニングスターなんてもある。

 アンティークな内装と、雰囲気ががっちしていて、決して明るすぎない証明も、温かい感じがする。


 物珍しい風景に、思わず辺りをキョロキョロ見回す。見ていて飽きない。


 ──すると、フロアの奥からコツコツと、誰かの足音が聞こえた。


 反射的に、そちらへと視線を向けた。すると、奥から30歳くらいのおじさんが顔を覗かせた。……誰?


「おじさん、ただいま」


「ただいま戻りました」


 親しげに話しかける双子。もしかしなくとも、知り合いか?


「お~二人共おかえり。ん? 後ろの君は?」


 当然のことながら、見ず知らずの俺を見て、おじさんは首を傾げた。


 ここにきて人見知りビンビンの俺は、震える声をギリギリで抑えながら言う。


「はっは、初めまして! 緑牙と申します!」


 イアに言われたとおり、ちゃんと名字は言わない。この状況下でそこまで頭が回ったのは、マジで奇跡に近かった。


 そして反射的に深々とお辞儀も。


「そんなに改まらなくても大丈夫だよ。私は“ランビリス”、この店の主をしている者だ。リョクガくん、よろしく」


 ランビリスさんは、こんなヘタレな人見知りにも、優しく言葉を返してくれた。もうそれだけで、心ぽかぽかですわ。

 優しい人で良かった~~。


 と、いうことで疑問を投げかける。


「店、ですか?」


「ああ。ここは“宝具”を扱う店でね、趣味と実益を兼ねて営んでいるんだ」


「宝具?」


 また新たな用語がぁ……


 この疑問にはイアが答えてくれた。


「宝具というのは、“特別な力を持つ道具のこと”よ。宝魔具と違って、“ルーンを持たない人でも、誰であろうと使える”のが特徴ね」


「へぇ、そうなのか」


 便利そ~


「唐突だがリョクガくん、ルーンについては知ってるかな?」


「えあっはい。さっき二人から聞きました」


「ふむ。君にもルーンが宿っているようだし、私も伝えておこうかな。私のルーンは“フローライト”。宝魔の力は“武器の良し悪しの目利き能力”だ。宝魔具は“グノストスクル”といって、今つけてるこのモノクルのような物でね、“相手の宝魔具の見た目が分かる”優れものさ」


「ほ、ほぇ……ランビリスさんにもルーンが」


 ルーンを宿す人は少ないってイアは言ってたけど、結構いるくね? 俺が今日関わった人全員ルーン持ちだよな。似たような人たちはお互いに引きつけ合うって、こういうことなのか?


「私もルビーも、それでランビリスさんに宝魔具を教えてもらったの。私のはたまたまこの店に宝魔具があったのだけど──」


「僕のはありませんでした」


 そう言うルアの表情は、少し不満げだ。

 まあ無いもんはしゃあないって。


 というか、ランビリスさんの宝魔具と店の相性すげーな。

 まるで、某魔法使い映画で、魔法の杖を買っていた店のようだ。


「ところで、リョクガくんはうちへ何の用事だい?」


 えあっ、そうだ。危うく本来の目的を見失しなうとこだった。


「ここにリョーガを住まわせてあげてほしいの。詳しい説明は、きちんと夜にするから、お願いできないかしら?」


 代表して言ってくれたのはイアだ。


 もはや、22歳という年齢の方がしっくりきてる。それに自分の方が年下っていう方が、色々気楽だったりするし。

 まぁ傍からみたら、俺が5歳年上のお兄さんなんだけど。妹の尻に敷かれる駄目兄貴って感じに映りそう~……なんかやだな。


「あ~そういうことかい。全然構わないよ」


 ふぇ?!


 びっくりする程あっさりOKがもらえ、心の中でめっちゃ驚く。思わず声に出そうになったのは、内緒だ。


「何か事情があるんだろう? それなら、助け合わないとね」


 いい人だ!


「それに、サファイアちゃんとルビーちゃんが連れてきた人だ。悪い人なはずがないしね」


「ありがとうございます!」


 いい人だ!(二回目)


「いいんだよ。若い子が遠慮なんてするもんじゃあない。リョクガくんは、まだルーンが完全に宿っていないようだから、宝魔具の確認はまた今度だね」


「はい。あれっどうしてルーンが完全に宿ってないって分かるんですか?」


 俺、言ってなかったよな?

 瞳の色とかが邪魔して、見ただけじゃ水晶だとは分からないだろうし。


「簡単な話だよ。グノストスクルで、リョクガくんの宝魔具が映らなかったからね」


「あっ、なるほど」


 考えてみたら、確かに単純だな。


「ここの2・3階は“具竜荘”という住居スペースになっているんだ。部屋は、好きな所のを使うといいよ」


「私たちも、おじさんの具竜荘に住まわせてもらっているの」


「へぇ納得。でもなんで具竜荘という名前なんですか?」


「宝魔具の具と、竜ってなんかかっこいいなあって思ったからかな」


「は、はぁ……」


 俺たちはつい先程、そのかっこいい(ドラゴン)に襲われたんだけどな。……口にはしないけど。


 ランビリスさんにも、結構お茶目な一面があるようだ。そういう内面があった方が親しみやすくて、こちらとしてはいい。


 ────あっ!


「あの、俺所持金なんもないんですけど、お金は──」


「ああ、それは必要ないよ。私も一人は寂しくて部屋を提供しているだけだからね。私物さえ自分でなんとかしてくれれば、それでいいよ」


 神様だ!


「ありがとうございます!」


「私とルビーは3階の部屋を使っているから、リョーガ2階をつかったらどう? ……私はおじさんに少し話があるから、ルビー、リョーガの案内をお願いできるかしら」


「了解しました。それではリョーガ、こっちです」


 すたこらさっさと行ってしまうルアの後を、俺はとっとこついて行った。


 イアの、ランビリスさんへの話とは何なのだろうか? まったく想像がつかんな。……まあ俺には関係ないか。




 店の奥にあった階段を上がって、具竜荘の中へ。するとそこには、玄関らしき場所があった。

 階段を上がる前じゃなくて、上がった後に玄関があるのは、なかなか新鮮だな。


 その玄関できちんと靴を脱ごうとしたら、必要ないとルアに止められた。どうやらパラミシアは、土足式らしい。


 そして玄関を抜けた先──綺麗な家、というのが一番最初に思った感想だった。


 1階の宝具店の内装はシックでレトロな感じだったのに対し、具竜荘の内装は白と木材がほとんどな為、ナチュラルで明るい雰囲気だ。


 床はベージュのフローリングで、2階と3階は吹き抜けになっている。しかも階段もオシャレなことにスケルトン階段だ。

 そしてドアがめっちゃある。1……2……5……10…………20部屋以上はあるんじゃね?!


「このフロアの左奥にあるのは、見てのとおりキッチンです。その隣にある扉は洗面所とお風呂、更にその隣はお手洗いで、他は全て個室になります。現在はほとんどが空室ですが」


 ルアよる淡々とした具竜荘の説明は続く。


「そしてここはラウンジです。食事の際は、ここで皆で食べます。言うなれば憩いの場ですね」


 ラウンジの中央には、大きな切り株の円テーブルがあった。椅子は切り株のようになっている。森の小人なんかが、集まってお茶会でもしていそうだ。


「と、いうことでリョーガ、さっさと部屋を選んでください」


 ……時々敬語に混ざる口の悪さは、何なのだろうかか。

 そう思いながら、俺はさっと部屋を選んだ。場所はこのフロアで、玄関から右の一番手前の部屋だ。理由は単純に、出入りに一番便利そうだと思ったから。


「そこですね。なら表札を」


 いつの間にどこから出したのか、ルアから木の板とペンを渡される。

 俺はそれに、一応カタカナで名前を書いた。

 書き終わった表札を、ルアに見せる。


「これで分かるか?」


「はい、分かります。ちなみにそれは、僕を馬鹿にしているのですか? それとも、字が汚いから読めるかということですか?」


「違う違う、世界が違うから、文字も違うんじゃないかと思ってな」


 俺のその言い分に、納得した顔のルア。


「そういうことですか。ご安心ください、パラミシアの文字と同じです。地球の文字は、これだけなんですか?」


「いや、地球全体で見れば、文字は数えきれない程ある。俺の住んでいた国にあるのは、平仮名、片仮名、漢字の3種類だ」


「3種類ですか。パラミシアと同じですね」


「パラミシアも?」


「はい。よければ後程、パラミシアの本を持ってきしょうか?」


「おっ、それはよろしくお願いするよ」


 そして表札を、ドアの隣にある窪みに入れた。見事にジャストフィットだ。


 言葉が通じるから文字もいけるかなって思ってたら、マジで大丈夫だったな。


「パラミシアって、大陸が24もあるのに言葉が共通なんだな」


「そうですね。僕としては、同じ世界なのに言葉が異なる地球の方がおかしいと思いますが」


「ん~そうか?」


 確かにルアからすれば、そういう考えになるのね。

 地域によって言葉が異なるのって、有名な神話だと『バベルの塔』があったよな。昔、神話にはまってめっちゃ調べてたっけ。

 そういやドラゴンも、ヨーロッパの方の伝承や神話に出てくる生物だったな。


「あっそうだ。話変わるけど、二人の親は? まさかとは思うが、ランビリスさんが親なのか?」


 ここまで、二人の両親らしき人物を見た記憶がないため、気になり尋ねる。まぁランビリスさんが親ってことは、さっきの会話からあり得ないか。


「……僕たちに親はいません。おじさんはそんな、家がなくさ迷っていた僕たちを助けてくださり、ここに住まわせてくれました。本当に……感謝してもしきれない存在です」


「……そっか」


 と、そこへ


「お待たせ。少し話が長引いたわ」


 イアとランビリスさんが揃って戻ってきた。


「まったくです。待ちました」


 俺は二人に、部屋が決まったことを伝える。

 その時にイアが若干驚いたように感じたのは、気のせい……か?


「ねぇルビー、今の時間は分かる?」


「丁度、申の刻です」


「申の刻?」


「つまり16時ね。もうそんな時間……というかいつも言ってるけれど、普通に伝えてもらえるとありがたいんだけどねぇ」


「十二支を使った方が、かっこいいじゃないですか」


 あはは……あるある、謎のこだわりな。


 ん……待てよ? 十二支って()()()()()()()だよな? なんで()()()()()()()()()()()()()

 ……まっ考えてもわかんねーしおいておくか! こういう思い切りも大切だぜ?


 そういえば、パラミシアの日付とか暦を聞いてなかったな。一応聞くか。


 と、いうことで尋ねてみると


「今は西暦3110年4月20日月曜日です」


 あれれ、暦も日本と同じ感じ?

 ……念のため、パラミシアの暦を一から説明してもらった。


 まとめると

 1年は1月から12月まであって、合計365日。1月、3月、5月、7月、8月、10月、12月は31日まで、他は30日まで。4年に一度、366日になる。1週間は7日間で、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日という。


 それを聞いて、俺は唖然とした。……するよね?


「地球と完璧に同じ感じ……」


 もうここまでくると、逆に怖いのよ! ここは地球かよ日本かよ! 異世界のパラミシアじゃあなかったのかよ!


 流石のイアたちも、驚きの感情がよく伝わってきた。


「地球?」


 一方、俺の事情をまだ説明していないランビリスさんだけは、よく分からないと首を傾げている。


「リョーガの事情説明の時に、まとめて説明するわ」


 ランビリスさんはそれで納得し、人のいい笑顔を浮かべた。


 俺は一応、そう一応、またまた尋ねる。


「ち、ちなみに1日は24時間だったり?」


「ええ、そうよ」


リョーガ「0時から11時59分までが午前で、12時から23時59分までは午後?」


「はい、そのとおりです」


 これも同じ……ここまで同じだと流石に怖いぞ……

 偶然の神様怖い!


「まぁ良かったじゃない。常識を一から勉強し直す手前が省けたわ」


「……それもそうだな」


「それでは、酉の刻になりましたら夕食なので、それまでは部屋で暇を持て余しておいてください、リョーガ」


「酉の刻?」


「18時のことよ」


 横からそっと教えてくれたイアは、もう諦め顔だ。俺は苦笑いを返しておく。


「あっじゃあさルア、さっき話してた、パラミシアの本を読ませてもらいたいだけどいいか?」


「パラミシアの本? ルビー、そんな約束をしていたの?」


「はい。リョーガの世界の文字と、パラミシアの文字が同じ可能性があったので、直接見てもらった方が早いと思い」


「そうだったの。それなら私が用意するわ。ルビーは夕食の準備もあることだし」


「おっルアが夕飯作ってるのか」


「はい。この家の家事全般は、いつも僕がしているので。……ということで失礼します」


 礼儀正しく輪の中から抜けたルアはキッチンへ向かい、早速夕飯の準備を始めたようだ。


 今にも、俺の腹の虫は鳴りそうである。

 実際俺は今日、二人に恵んでもらったアップルパイ4分の1しか口にしていない。そのためちょー空腹なのだ。


 早く俺に食べ物を~! と心で叫びながら、俺はルアの後ろ姿を見守った────

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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次話も読んでいただければ嬉しいですm(_ _)m

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