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バッドエンドを迎えた世界  作者: ぱれつと
チャプターⅠ 異世界生活スタート
6/42

4話 双子の少女

 二人の少女について、歩くこと20分。


 二人は、ある建物の前で立ち止まった。カントリーな雰囲気のある店だ。


「ここは“アップルカフェ”。落ち着いて話をするには丁度いいお店よ」


 暖色の扉を開け、中に入る。

 中もまた、外観のイメージそのまま、カントリーで可愛らしい内装だった。


「いらっしゃいませ、何名様でございましょうか」


 奥から人間のウェイターさんが出てきて、日本と同じ決まり文句を言う。なんか、異世界感ないな。


「3人よ。周りにあまり人のいない席がいいのだけど、案内してもらえる?」


「かしこまりました。ではこちらへ」


 ウェイターさんに案内された席は、サファイアの求めた条件を満たしており、周りに人はいなかった。

 そもそも店内にいる客が、結構少ない。


 席に座ると早々、少女二人は立ち去ろうとしたウェイターを呼び止め


「「アップルパイを」」


 と声を揃えて注文した。ちなみにメニューは見ていない。常連さんかな?


 俺も何か注文しようとしたが、現在所持金なしの無一文ということを思いだし、出かけた言葉を飲み込んだ。

 というか、仮に金を持っていたとしても、ここで日本円を使えるかどうかも疑問だしな。てか使えたら怖いわ。


「かしこまりました」


 ウェイターさんが立ち去ったのを確認した後、サファイアが口を開いた。


「まずは自己紹介ね。あなたの名前は?」


 そういや、まだ言ってなかったな。


「俺の名前は萃田 緑牙だ。地球から──」


 俺が続きを発するよりも先に、サファイアが話を遮った。


「名字は名乗らない方がいいわ。パラミシアで名字を持つのは、由緒ある家系の人だけだから。下手に一般市民が名字を名乗ると、面倒なことになるわよ」


「おっおお、分かった」


 なんか昔の日本みたいだなぁ。

 面倒事に巻き込まれるのは勘弁願いたいため、ガチで気を付けよ。


「話を遮って悪かったわ。続けて」


「ああ。さっきも話したとおり、俺は地球から来たんだ────」


 そこから俺は、地球なにそれ? な二人にとっても素晴らしく、分かりやすいように、地球とは何かを説明をした。

 俺の説明が素晴らしすぎたのか、二人は呆然と聞いてるだけだったけど。いや~流石は俺☆(絶対、100%違う)


 地球の説明が終わった後に聞かれたのは、どういう経緯があって、俺がパラミシアにきたのか。

 しかしこれに関しては、逆に俺が聞きたいくらいだ。だって、寝て起きたら大草原にいたわけだし。何を説明しろと?


 ということで困った俺は、まぁ何かしらの原因があったのだろうと思われる昨日の出来事を、大まかに話した。ゲームとか、そういうのは説明から省いて。

 なぜかって? 俺が引きこもって永遠とゲームしてたオタクだって、出会って早々思われたくないからだよ! 分かる人なら分かってくれるだろ? この切実な気持ち!

 パラミシアに、ネットゲームがあるのかも不明だけど。


 一通り全ての説明を終えて、俺はふっとため息をついた。

 当たり前のことを、それを知らない人に説明するのって、意外と神経と頭と体力使うんだなぁ……


「……まとめると、あなたはこことは違う世界、地球からやってきた。その原因は完全に不明。ということね」


「そういうことです……」


 話ながら自分でも思ってたけど、マジで意味不明だよな。一体、俺の身に何があったんだよ! 神様がいるなら今出てきて教えろ!


 すると横から、人の気配がする。


「お待たせいたしました。こちら、アップルカフェ名物、アップルパイでございます。オーダーは、以上でよろしかったでしょうか?」


「ええ、ありがとう」


 タイミングよく届いたアップルパイが、サファイアとルビーの前へ置かれた。


「ごゆっくりどうぞ」


 俺だけ一人、何も頼まなかったのを怪訝に思う視線を感じつつ、ウェイターはそのまま空になったお盆を持って立ち去った。

 結構視線痛がっだよ~!


 そして俺は、二人の前に置かれたアップルパイをじっと見つめた。


「──なんですかそのひもじい視線は……食べずらいのですが……」


「実際ひもじいんだからしょうがないじゃんかぁ……」


 思えば俺、今日なんも食べてないのだ。だからめっちゃお腹が空いてるんですよ……


「一切れでよかったらあげるから、その視線は止めて頂戴……こっちの食欲が失せるわ」


「えっいいのか?! ありがとうございます!!」


 俺はテーブルに手をつき、深々と礼をする。食べ物の恨みが恐ろしいのと同じように、食べ物の恩は優しさの塊なのだ。


「いいわよそんなの。はい」


「どうぞ。味わって食べてくださいよ」


「本当にそうさせていただきます!」


 ということで、俺は2人から8分の1カットずつ、合計4分の1を恵んでいただいた。


 早速アップルパイを一口、味わって食べる。

 ──めっちゃ美味しかった。

 ていうかアップルパイなんて、食べたの何年ぶりだろ? アップルパイ、こんな美味しい食べ物だったのか……



 そしてちゃんと、話も再開させる。

 そっちが本来の目的なわけだし。


 次に始まったのは、サファイアとルビーの自己紹介。


「今までの会話で分かってるとは思うけど、私の名前はサファイア。この子の双子の姉よ。よろしく」


 この子、というのはルビーのことを指している。

 容姿が瓜二つってくらいに似てるから、多分って思ってたけどマジだったか。


()の名前はルビー、サファイアの双子の妹です。よろしくお願いします」


 そして今ここで、重大な事実が判明した。──ルビーは僕っ子だった! The女の子って見た目だから、ギャップが凄い。


 あっ、あとそれからもう1個思ったこと。


「名前長くね?」


 そう、名前長い問題。そこで俺は、素晴らしいアイディ~アを思い付いたのだ!


「そうだ、ニックネームをつけよう! え~と……サファイアなら後ろの二文字を取って“イア”! おお、いいじゃないか語呂がよくて。で~ルビーか。そのまま省略するとルビ。う~ん……微妙だな。ならルヒ? ルピ? いやこれもイマイチだ。なら二人双子だし、イアと似せる感じで──“ルア”! ルアがいいんじゃないか! うんうん」


 いや~我ながらネーミングセンスが素晴らしい。


「……勝手に人の名前を変えないでもらえるかしら」


「それにその僕のニックネーム、ルビーのルしか原形をとどめていないのですが」


 あれれ?

 しかし、当の本人さんたちは、お気に召さなかったようで、軽い文句を言われる結果となった。


「だってだってさぁ、ルビーはまだ良しとするにしても、サファイアなんて長すぎだろ」


 なんとか文句の雨から抜け出そうと、俺は必死で自分の意見を述べる。

 それが功を奏した。


「……まぁ、それには一応同意しますが」


「ちょっルビー?!」


「ふっふっふっ、残念だったなイア。これで2対1だ」


「はぁ……いいわ。好きに呼びなさい」


「僕も別に構いません」


「おっ結構あっさり。サンキュー。でもさっきまでの文句はどうしたよ」


「よくよく考えたら、呼ばれ方なんてどうでもいいことだったわ。じゃあこっちも、あなたのことを“リョーガ”と呼ぶわ。リョクガなんて、発音しにくいったらありゃしないもの」


「全然いいぜ~お好きにどうぞ」


 確かに、自分で言うのもあれだけど、緑牙って語呂悪いよな。


 と、ここで遅かれながら双子の詳しい容姿説明をば。


 サファイア──改めてイアは、水色髪で長さは腰半分くらい。頭の上で小さく二つ括りをしている。目の色は青色。服装は青色のポンチョ・水色のセーター・青色のスカート・黒い長靴下だ。うむ、全体的に青系が多い。年齢は12歳くらいか。


 ルアは、ざっくり言えばイアの服装を赤系にした感じ。桃色髪で長さはボブ。頭の上で小さく二つ括りをしている。目の色は赤色。服装は赤色のポンチョ・桃色のセーター・赤色のスカート・黒い長靴下だ。年齢はもちろん、イアと同じで12歳くらい。


 流石双子、めちゃくちゃそっくりだ。

 青いのがイア、赤いのがルアって感じ。


 ──て、ん?


「なあ、よく見たら二人の()()()()()? があるけど」


 Why?


「それも知らないのね……。安心して、順を追って、ちゃんと説明するから。というか、()()()()()()()()()()()()()()()


「えっ──?」


 唐突に、サファイアが右手の指をパチンと鳴らす。すると目の前に、さっきドラゴンと戦っていた時に使っていた槍に似た、剣が現れた。

 召還的なやつなのか? この世界、ほんとなんでもありだな。


 更にこれでは終わらなかった。なんと驚くことに、剣が──鏡に変化したではありませんか~!?


「ええっ?!」


 咄嗟に驚きの声が出る。それが結構大きかったらしく、数少ない周りからの視線が痛い……


「ちょっ、こんなことであんまり驚かないでちょうだい。私たちも、あんまりこのことは知られたくないの」


「悪い……でも知られたくないなら、なんで俺の前でやったんだ?」


「あなたの瞳にも、宝石が入っているからよ。ほら、この鏡で見て」


 イアが指をくいっとやると、宙に浮く鏡が、俺の目の前にまでフヨフヨと移動してきた。

 俺は素直に鏡を手に取り、自分の顔を確認する。


「──なんじゃこりゃーー?!」


 そして驚いたことが3つだ。

 1つは、本当に瞳の中に宝石が入っていたこと。

 2つ、目の色が日本人特有の黒色から、()()に変わっていたこと。

 3つ目


「なんで俺()()()()()んだ~?!」


 そう、俺は若返っていたのだ。


 俺の現在の年齢は20歳。それなりに大人な顔立ちになってきていたはず。それなのに──鏡に写っている俺の顔立ちは、どう見ても()()()()()()()だった。


 どうりで体が少し軽くなっていたり、目線が若干低いと感じたわけだと、納得する部分はあった。しかしそれより、頭の混乱の方が断然大きい。


「若返っている? どういうことですか? 

リョーガは1()7()()ではないと?」


 俺の出した驚きの叫びを聞いたルアが、当然のことながら尋ねてくる。


「あ……えっと実はだな────」


 混乱する頭を押さえつつ、俺は地球にいた時の自分(つい昨日だけど)について、もう一度できるだけ詳しく二人に話した。

 流石に年齢とかは省いてたからな。


 ……ん? 待てよ? さっきルア、俺が17歳じゃなかったのかって驚いていた。確かに17歳頃の容姿にはなっているが、どうしてルアは今の俺を17歳だと断定した?

 ……まぁこれに関しては後回しにしよう。


 そして話していく中で、俺も少~しずつ心のゆとりも取り戻していく。


 きっとあれだ。異世界に転生して、見た目がまったく違う人物になってしまうあれだ。あれに近いやつだ。

 変わったのは年齢と目の色だけだが、一先ずは、そう結論づけておくことにしよう。


 ──いやまて、転生というのは、死んでから別の世界で記憶を持ったまま生まれることだ(個人の意見)

 でも俺、昨日はただベッドでいつもどおり寝ただけだぞ? 別に交通事故にあったりとかしていない。


 じゃあアニメとか、漫画とかでよくあるパターンで考えると──俺はパラミシアの誰かに召還された?

 ……あんな大草原の真ん中に? 召還場所ミスったか? だとしたらそいつ、相当な馬鹿だな。その人の将来が心配だわ。


 しかしここで発せられたイアの言葉で、俺の思考は全て持っていかれた。


「へぇ、リョーガが20歳だったってことは、()()()()()()()なのね」


「……えっ────?」

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