表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バッドエンドを迎えた世界  作者: ぱれつと
チャプターⅡ 仲間
40/42

37話 幽霊のいる隣町

 先日、○○県○○市の住宅街にて、火災が発生しました。

 火は、通報から1時間程で消し止められましたが、焼け跡から一人の焼死体が発見されました。身元は現在調査中ですが、この家に住む長男、“萃田 緑牙さん、二十歳”と連絡がついておらず、焼死体はその男性のものと思われています。

 辺りの住宅へは引火しておらず、怪我人もこの焼死体の方以外は発見されておりません。

 また、今回の火災は近日○○市で放火を繰り返す放火犯による連続放火事件とみられており、警察はその放火犯の行方を追っています。


 以上、最新のニュースでした。



  ◆◆◆



 キッチンからは、じゅーっとフライパンで何かを焼く音が聞こえてくる。そこに立っているのはルアで、毎度ながら、食欲を掻き立てられる音だ。


 そーだ、前にハンバーグを作った時、面倒臭がって空気を抜かずに焼いたら、見事に肉がボロボロになって、ひき肉の炒め物と化したことあったなぁ。

 皆、料理は行程を怠っちゃあならねーぞ。怠った時、そこに出来上がるのは料理とは言えない無惨な代物だけだ。


 朝食が出来上がった気配を感じ、椅子に(もた)れ掛かって崩していた姿勢を正した。ルアに見つかれば、どんな小言を言われるか目に見えている。


「リョーガ、これとそれを運んでください。トパーズ、外にいるサファイアを呼んできてください」


「はーい」

「はーい!」


 ルアの指示に従い、トアは下へイアを呼びに、俺はキッチンから料理を運ぶ。

 最初の頃はどれが誰かまったく分からずテンパったが、今やどの食器、どの量の料理が誰のものか、この具竜荘でルアの次に熟知していると言えよう。

 他と比べて明らかに量が多いのがイアで、逆に一番少ないのがルア。少し年季のある食器に乗った料理がランビリスさんで、逆に一番食器が真新しく光っているのがトア。特に特徴のないのが俺だ。


 ルアと手分けして料理を全て並べ終える頃には、イア、トア、ランビリスさんもラウンジへ戻ってきていた。


 もうすぐ7月を迎えるパラミシアは、クーラーならぬ“冷風機”が部屋をキンキンに冷やしてくれている。半袖で剥き出しになっている肌に冷気がささって、ちょっと痛い。


 各々が席に座り、いただきますをしてから食事を始める。

 主にトア中心となり、毎朝の食事は笑顔と会話が絶えない。


 その日は朝食を終えた後、ルアとイアが出掛ける準備をしていた。


「どこか行くのか?」


 俺がそう問うと、ルアが頷いた。


「隣町で、月に一度の定期市があるんです。そこへ買い物へ」


「安い品物や、珍しい骨董品とかが集まるの。見て回るだけで面白いわよ」


「へぇ~」


 それは確かに面白そうだ。


「俺もついて行っていいか?」


「いいわよ。私と同じで荷物持ち要員ね」


「そんなに何か買うつもりなのか?」


「まぁ、安いので。日持ちする食品を少し買い込もうかと」


「でもそれなら、無限袋使えばよくないか? ほら、あれって無限に物が入る四次元ポケットなんだろ?」


 ルアが顔をしかめる。


「贅沢言わないでください。無限袋は、宝具の中でも希少な種にあたるんです。そんなポンポン何個も持っていません」


「えっ、でもアステリ洞窟行った時は、2個あったよな?」


「食材を買うんですよ? 一度魔石を入れた無限袋に、新鮮な食材を入れるなんて……想像しただけでおぞましいです……」


 顔を青くするルア。そこまで嫌なのか……

 確かに、衛生的には良くはないかな。でもじゃがいもとか、普通に土ついた状態で売られてるぞ? あれと同じなのでは……


「あっ、そういえば知ってる? 隣町で最近、()()()()()()()()()って噂」


「幽霊?!」


 思わず叫んだ。

 んな非科学的な……いや、パラミシアだと、普通にいそうなところではあるが──


「そもそも、幽霊なんて本当にいるのか?」


「いますよ」


「──へっ?」


 そうあっさり肯定したのは、なんと一番幽霊とか信じていなさそうな、あのルアだった。俺は幽霊の話以上に面を食らう。


「ほんとルア! 本当にユーレーっているの?!」


 うわびっくりした!!

 いつの間にか俺の隣で今の話を聞いていたトアが、ビー玉のような純粋な瞳でルアに尋ねた。


「はい、本当です」


 淡々とルアが、当たり前のように肯定する。

 もしかしてルア、霊感少女か?


「あら、ルビーって霊感あったかしら?」


 俺と同じことを思ったのか、イアが俺の心を代弁してくれる。


「ありません」


 ずこっ!


「じゃあなんでそんな自信満々なんだよ……」


「幽霊が存在するという事実を知っている。理由なんて、僕にはそれだけで十分なんですよ」


「へ、へぇ……そうか……」


 そんなはっきり言われると、逆にもう何も言えねぇ……

 これ以上追及は無駄と判断し、引き下がることにした。よし! 幽霊はいるんだね!


 午前10時頃、俺たちは隣町“ナプト”へ向けて出発した。


 トアも行きたがっていたが、体調を診てもらう定期検診があったため、今回は泣く泣く留守番だ。どうやら、幽霊に会いたかったらしい。

 ……代わりに俺が探すか、噂の幽霊。


 ナプトへは、歩いて20分程度で着く。天気は良好で、気温もそれなりだ。日本の夏程暑くなかった。



 そしてこれが、対となる()()()()()()のきっかけだったことを、俺はまだ知らない────

2章スタート!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ