36話 一時のハッピーエンドを迎えた世界
やっほー皆様、おはよう、こんにちは、こんばんは、二度目の登場、正体不明の誰かさんだよ~!
いや~ほんと久しぶり、25話以来? また会えて嬉しいよ♪
え~ここで重大発表。本日で、『チャプターⅠ』は終了だ。
いらない部分を編集しすぎたせいで少々長くなってしまってごめんね。以後気を付けまーす!
さーてさて、しかしこれは、単なる序章に過ぎない。一つ目のイベントなんて、みんな優しいからね。
私は君たち読者と同じ、単なる一人の傍観者。
これから先、緑牙くんを待ち受けるものは何か、それは私にも分からない。
けれど、一つだけ断言できることがある。
緑牙くんが迎えるエンディングは、必ずハッピーエンドであることだ。……例えその下に、どれ程の屍を積み重ねても、ね。
何故なら、この物語の主人公は萃田 緑牙くんだから。
彼がこの物語の中心であり、彼がいるからこの物語は回る。
何と何が繋がっていて、何と何が過去・現在・未来に関わってくるのか──
全ての真実のピースがはまった時、完成する現実はどんな真相か。
ぶっちゃけ私もまだパズルを完成できていないから、どんな真相が出来上がるか楽しみなんだよね~♪
それじゃあ今回はこの辺で。
次は結構近いうちに会える気がするんだよねぇ。
楽しみにしているよ、まったね~♪
◆◆◆
「わ~! コスミマってこんな所だったんだ~!」
「マジかよスゲー、コスミマってこんなに人いたのか!?」
俺とトアは、初めて見る本来のコスミマの姿に、目を輝かせた。
後ろでイアとルアは、そんな俺たちを眺めている。
今、俺と三つ子は、元気になったトアにコスミマを見せて回っていた。
俺もあまりちゃんと案内をされていなかったため、トアと一緒にコスミマの散策を楽しんでいるところだ。
俺が前に見た時は感染症のせいでガランとしていた商店街も、今じゃ東京の原宿並みに賑わっていた。
これが本来あるべき、コスミマの賑やかさなのだろう。あの頃とは、まるで別の街だ。一応コスミマが、オミクロン大陸の中で一番の大都市であったことを思い出した。
「ねーねー! あっちのあれ何?! 美味しそー!」
一番楽しそうにしているのは、やっぱりトアだ。当然だろう、トアは、ずっと寝たきりで、こうして街を観光するということ自体初めての経験だろうから。
分かるぞ、俺も初めて秋葉原行った時は、テンション爆上がりしたからな。
「あれはわたあめね。甘くて美味しいお菓子よ。その隣がリンゴ飴で、さらに隣がフランクフルト」
この商店街、所々に縁日のような屋台が混じっているのはなんなんだ……?
目をつけた食べ物を片っ端から買っていく。いつの間にか、トアは両手にたくさんの食べ物を持っていた。そしてそれらを驚く程ぺろっと平らげる。それを見て、俺は目を見開く。
トアもイア同じく、かなりの大食いのようだ。
とゆーか気付いたら、イアも一緒にトアと同じ量を食べてるし……
「次あっちの食べたい!」
「私も食べる」
もはや食べ歩きがメインになっている二人を、俺はルアの横に並び苦笑しながら見守る。
ルアもやれやれと首を振っていたが、口元は少し綻んでいる。
二人の食べ歩きが終わるまで、俺とルアは近くの広場で腰を休めることにした。
「いいな~、こーゆー何気ない日常みたいなの」
空を仰ぎながら、俺は呟く。ルアは怪訝そうに俺を見た。
「別に、普段も何気ない日常ですが」
「でもこうやって皆で散歩する機会とか、あんまなかっただろ? それに今はトアもいる。普段とはちょっと違うと思わないか?」
「はぁ」
「あれ、思わない?」
それから少し、お互い無言が続く。
ある方角へ視線をやった時に、おれはふと思うことがあった。
「なあ、結局カメーロパルダリスの鐘が鳴ってから、なんか不幸なことあったか?」
思い出すのはこの世界に来て2日目の日のこと。もう随分と昔のことだ。
あの日、今日みたいにイアとルアに、コスミマを案内してもらっていた。その時、突如街の中央に、雲も貫く高さをした巨大な時計塔が現れ、鐘が鳴ったのだ。
カメーロパルダリスはその時計塔の名前で、鐘が鳴る時にしか姿を現さないという、異世界要素たっぷりのアンビリーバボーな時計塔である。そしてその鐘が鳴った時、パラミシアのどこかで天災級の不幸が起こるとか起こらないとか……(9話参照)
少しの間の後、ルアが口を開いた。
「僕が見知った情報では、そういったことが起きたという事実はありませんでした。ただ世間に出回っていない情報など、この世には山程あります。一概に、何もなかったとは言い切れません」
「──そうか~」
結局のところ、何も判明してないってわけね。
まぁ何もないならないで、それに越したことはない。平和が一番だ。魔王に支配されてるとかいう時点で、平和もくそもないかもしれんが……
「ルアはどう思うよ。不幸が起きるっていうカメーロパルダリスの噂、本当だと思うか?」
「さあ。質素な回答で申し訳ありませんが、僕はその噂に興味はありませんね」
「ほんとに質素な答えだな。逆にお前が興味持つことって何よ」
「料理ですかね?」
「なぜそこで疑問系」
と、そんな時
「おーーい!」
トアの声が聞こえた。声の方を向くと、イアとトアが手にお団子を持ってこちらにやって来るところだった。
一体二人がどれだけ食べてきたのかは、なんか怖いから聞かないでおく……
「はい、ルア、兄貴、これあげる!」
そう言ってトアから、団子串を貰った。みたらし団子だ、美味しそう。
「お団子屋さんのおばさんがおまけしてくれたの。二人の分よ」
「あ、ありがとうございます……」
お団子を貰ったルアの表情がひきつっているのは、多分、イアが手に団子を食べ終えた後の竹串を4本持っていたからだろう。あれ全部食べたのかよ。
まあ貰ったお団子は、ありがたくいただく。
「いただきます」
口の中に入れた団子の味は、昔食べた祖母の手作り団子の味に、よく似ていた──
◇◇◇
「ただいまー」
空が赤くなり始めカラスも鳴く時間に、俺たちは具竜荘へと帰ってきた。
イアとトアの暴食っぷりには今日何度も驚かされたが、それも楽しかった思い出の一つである。
表扉、宝具店に続く扉を開けると、そこではランビリスさんが商品の剣を丁寧に磨いていた。
扉の鈴の音で俺たちの帰宅に気が付き、にこやかな笑顔を浮かべる。
「お帰り、コスミマの散策は楽しかったかい?」
「うん! スッゴク楽しかったです! さっすが大都市! 見たことない食べ物がいっぱい!」
やっぱ最終、食べ物に結び付くんだな。
「はは、それは良かった。食というのは、その人の体を作るものでもある。美味しいものを食べれば、それだけ体も元気になるというものさ」
「そーなの?! じゃあ俺もっと美味しいもの食べて、もっと元気になる!」
「トパーズは、もうそれ以上上がないくらい元気ですから、大丈夫ですよ」
「あはは、確かにそうね」
そしてトアが、この店の中を見渡した。
「ここ、見たことのない武器がいっぱ~い。これ全部おじさんのなの?」
「そうだよ。一応商品なんだけどね、なかなかお客が来ないから、私物化してきている物も多い」
まぁ、ここって結構分かりずらい立地にあるからな……
「そうだ」
ランビリスさんが、何かを思い出したように声を上げる。
「トパーズくん、君の宝魔具をまだ見てなかったよね。よかったら今から見させてくれないかい?」
それにトアは目を見開き、大きく頷く。
「うん! よろしくお願いします!」
「よし」
ランビリスさんは机の引き出しの中から、相手の宝魔具が分かるランビリスさんの宝魔具、グノストスクルを取り出した。
モノクル状のそれを装着し、ランビリスさんがトアを真っ直ぐ見る。
数秒の間の後、ランビリスさんは満足そうに頷いた。
「何か分かりましたか?」
トアが心配そうに尋ねる。
「ああ、分かったよ。しかもこの店にある物だ。待ってて、持ってくるからね」
そう言ってランビリスさんは、奥の扉を開け倉庫の方へと消えていった。
俺たちは顔を見合せ、トアの宝魔具を思案する。
「何かしらね」
「俺と同じで剣とかじゃないか?」
「兄貴は剣なんだ~。じゃあ俺もそれがいいな~♪ あれ? でも兄貴が持ってるその剣って、普通の剣だよね?」
トアが、俺が腰に差している剣を指差して言う。
「ああ、俺の宝魔具は“聖剣”でな。でもその在処が分からないから、今は普通の剣を使うしかないんだ」
「ええ!? 聖剣?! やっぱり兄貴って凄い!」
「い、いや~、それほどでも」
ここまで素直に褒められると、逆に少し恥ずかしい。淡白なイアや、毒舌のルアとは大違いである。
その時、奥の倉庫から『ドンガラガッシャン!』と物が雪崩を起こしたような音が響いてきた。
何事かと思いばっとそちらを振り返ると、扉の奥からもくもくと埃煙が舞ってきていた。更にその埃煙の奥から、ランビリスさんが姿を現す。
「大丈夫ですか?!」
俺は慌ててランビリスさんに駆け寄った。
けれどランビリスさんは何でもないように、ケラケラと笑う。
「いや~驚かせてごめんね。ちょっと商品の山を崩してしまって」
「それであんなに激しい音が……」
「ほ、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、後できちんと整理して片付けるからね。そうだトパーズくん、そんなことよりも、君の宝魔具があったよ」
いや、そんなことよりもって……
まぁランビリスさんが大丈夫と言っているなら大丈夫かな。
ランビリスさんが持ってきたのは、オレンジ色の淡い光を発している一本の剣だった。刃の部分が少しうねっていて、その形状は“炎”を連想させる。
「おおー! 剣だー!」
トアが嬉しそうにぴょんぴょん跳び跳ねた。
「この剣は“イフリート”というんだ」
ランビリスさんが、イフリートをトアへ手渡す。
「イフリートとは──」
と、ランビリスさんが剣の説明をしようとした途端
「わあっ!?」
トアが驚きの声を上げる。
何事か、見るとなんと、剣が炎を纏っていた!
イフリート=炎から生み出された精霊
あっ、なんか色々納得。
「おじさん、これがイフリートの持つ力なの?」
少々驚いた様子で、イアが聞いた。
「ああ、そうだよ。イフリートは、適合者が持つと炎を宿す剣。ただその炎は本物ではなく、幻影なんだ」
「えっ嘘?! でもこの炎、熱さを感じるよ?」
「そう、それがこの剣の面白いところでね。その炎は幻影でありながら、熱さを持つんだ。しかし幻影だから、相手に外傷を負わせることはできない。あくまでその熱さも幻影というわけさ。だから、直接の外傷を与える方法は普通の剣と同じだね。切れ味の方は、私が保証するよ」
「へぇ~、凄い! こんな凄い剣が、俺の宝魔具なんてびっくりだよ!」
俺もびっくりしている。幻影でありながら熱さを持つ炎なんて、驚くなという方が無理な話である。外傷が与えられなくても、熱さで相手を戦闘不能にはできそうだ。
「同じような氷の剣とか、電気の剣とかありそうだな」
この俺が何気なく言った言葉に、ランビリスさんが頷く。
「リョクガくん、面白いことを言うねぇ。ああ、実際にあるよ」
「えっマジですか?」
「電気の剣はここには無いけど、氷の剣“フェンリル”は昔、“メフィ”ちゃんという適合者の子が受け取っていったよ。……今頃どうしているのかなぁ」
「よくその子の名前まで覚えていますね」
「好奇心が体の中から溢れ出しているような子だったからね。少し印象強く残っているんだ。────それに……」
「?」
ランビリスさんの表情が、少し寂しげになる。
「どうしましたか?」
「あっ、いや、何でもないよ。そうだ、折角だし、今から剣を練習してきたらどうだい?」
「ふおぉお! やりたい! 俺やりたい! イア、俺に剣術教えて!」
「私?」
「うん! あと兄貴も!」
「俺も?!」
イアは分かるが、何故俺も指名されたのかがまったく分からない。俺弱いよ? 絶対トアの方が強いよ?
「じゃっ、僕は夕食を作ってくるので」
会話の流れを完全無視し、ルアがスタコラサッサと階段を上って具竜荘へ戻っていく。
ランビリスさんも武器の手入れを再開させた。
俺とイアは、トアに手を握られ外に出る。
「なあ、俺なんか、絶対なんの役にも立てないと思うぞ?」
俺がそう言うと、トアはこちらを振り返って笑った。
「そんなことないよ! 一緒にいてくれるだけでいいんだ。兄貴やイアと一緒にいられるだけで、俺は幸せだから!」
…………
「なんていい子なんだ(泣)」
「何ガチ泣きしてるのよおじいちゃん」
「誰がおじいちゃんじゃ!」
「あはは! ほら、行こう!」
また強く、トアに手を引っ張られる。
空には闇が広がってきて、辺りは薄暗く不気味だった。けれどいつもより、森が明るい気がする。
きっとそれは──俺もイアもトアも、この誰も意図していない何気ない日常を、普通以上のものとして、感謝しているから。
こんな楽しい日が永遠に続けば、どれだけ幸せか。
俺もイアもトアも、きっとルアやランビリスさんも、今この瞬間、一時のハッピーエンドを迎えたこの世界で、幸せに笑っていることだろう────
チャプターⅠ 異世界生活スタート
~END~
チャプターⅡ 仲間 へ
続く────
最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!
無事『チャプターⅠ 異世界生活スタート』を完結させることができました。終わった感が半端ありませんが、まだ一章が終わっただけでございます(;^_^)
今後始まる『チャプターⅡ 仲間』も読んでいただければ、それ以上に嬉しいことはありません!
次話も是非m(_ _)m




