26話 犯人は
文量が多いと感じたので、少し文量を減らてみました。
森に入った俺とイアは、早速宝魔の特訓に取りかかった。
まずはイアが傷をつけた木をの表面を、宝魔で修復する練習。
難しいのかと思っていたが、傷口に手のひらを向け念じるようにすると、傷口がほわっと光り、案外あっさりと木の傷は修復された。
「結構簡単にいけるんだな」
「──簡単……なのかしらね……?」
「? どういうことだ?」
「いいえ、こちらの話。じゃっ、次は今より傷を深くするわよ」
そう言いイアは、ナイフに変身したオルタンシアで別の木の幹にバツ印の傷をつけた。
それに俺はそれに手のひらを向け、また念じるようにする。すると今度も、あっさり傷は修復された。
「……やっぱり簡単じゃね?」
「──リョーガと回復魔法の相性が、良かったのかもしれないわね。正直私も、ここまであっさり傷を治すとは思わなかったわ」
「じゃあ俺の才能!?」
「そう捉えていいと思うけど、あまり調子には乗らないことね」
「はーーい!」
いや~これは嬉しい! 才能らしい才能がなかった俺にも、遂に才能が!
そこからは、イアが木につけた傷を俺が治すという、その繰り返し。50回か60回ぐらいやったところで、次は折った木の枝を一本に治す練習。
これまたあっさり治る。いや直る? どっちでもいっか。
「剣術体術と比べても、凄い上達スピードね……。……ほんとにリョーガ?」
「失礼な! 正真正銘リョーガさんだとも!」
俺がうまく宝魔を扱えてたらおかしいか!
「ごめんごめん、あなたってどうしてもヘタレに見えちゃうから、つい」
「なっ……!?」
どうしてもヘタレに見えるってなんだよ゛~!! そこ、俺も気にしてるんだから言わないでくだせぇ……
「あっ、ごめん。また口が滑ったわ」
「もういいよ……ヘタレ代表として生きていくよ俺……」
「ごめんって。──でも戦闘じゃあ、弱そうに見える方が、返って相手に警戒されないから、その特性はプラスに働くわよ」
「えっ……やったーー! じゃあいいじゃん!」
よろこんでヘタレ代表として生きていこう!
「単純ね……」
ん……今なんか馬鹿にされた気がする。
「じゃあ木の枝の修復練習は終わりにして、そうねぇ……木の枝より、少し大きいもで修復練習ができるといいんだけど」
「でかいものかぁ……丸太とか?」
「丸太なんて、そう都合よくあるわけ──あっ」
「えっ何?」
俺、結構丸太って適当に言ったんだけど。まさかあるの? 丸太。
「腐食してなければ……リョーガ、ちょっとついてきて」
「お、お~、アイアイサー」
そう返事を返し、俺はイアの背中を追った。すると、見覚えのある場所に出る。そして、見覚えのある木も──
「この木って……前にイアがへし折った木じゃん」
俺がイアの怪力を見てみたくってお願いしたら、イアが“片手”で幹をへし折ったあの木。
……片手ですからね? その時は、一瞬夢でも見たのかと思っちゃったよ。……まぁ、もちろん現実だったわけだけど……
「そうそう、リョーガの我が儘を聞いてあげてね。まだ腐食も進んでいないようだし……リョーガ、この木を元に戻してみなさい」
「はあ?!」
いや、急に難易度上がりすぎだろこれは!?
木の枝レベルからいきなり木レベルに進化するのなんて早々ないぞ?!
「物は試しよ。リョーガには、回復魔法の才能があるんでしょ? 奇才さんなら、これくらいやってのけるわよね?」
「うっ…………おう、おう! やってやんよこんくらいこんちくしょー!」
自棄糞の叫び。
「は~い、頑張って。じゃあ私は幹を立てて支えとくから」
そう言い倒れた幹を起き上がらせ、イアは持った幹をその木の切断面に乗せた。
……よくよく考えると、一度折った幹部分を軽々持ち上げて支えるイアさん凄すぎません?
2、3mくらいある丸太を持ち上げてるようなもんだよこれ。ねえ凄いよね?!
それに驚きつつ、俺は木の切れ目の間に両手の手のひらを向け、また念じるように、力を送るようなイメージでやる。今度はさっきよりも、気持ち念を強めにして……
境目がほわっと光ったが、木に、すぐに変化は起こらなかった。しかし、10秒程で──
「うおっ!?」
俺自身が、驚きで声を上げてしまった。
先程まで片割れ同士だった木が、みるみるうちに繋がっていき、最終的には元々折れていたのかなんて分からない程に、木は修復されたのだ。
まるで早送りの映像を見ていたかのような、あっという間の出来事だった。
幹を支えていた手を離し、イアは切断されていた部分をまじまじと見る。
「へぇ~、随分綺麗に繋がったじゃない。100点満点の花丸をあげるわ」
「やったあざっす! にしてもほんと、凄いなこの力。……やっぱ俺、超いい能力手に入れちゃったかも」
「そうね、戦闘向きの力じゃないけど、仲間に一人はいて欲しいような能力ではあるわ」
よっしゃ素直に喜ぶわ!
「でもどうしようかしら、これ以上の難易度になる植物を治すとなると……」
「……ないよな」
そもそも、真っ二つに折れてる木なんて普通ないからな。
「それ以上なんて、木っ端微塵になったのを治すくらいしか……」
「! それよ」
「……は?」
「だから、木っ端微塵にした枝を修復するの。リョーガにしてはナイスアイディアじゃない」
「……はあ?! おま……マジで言ってるそれ」
「マジマジ。というか、発案者はあなただけど」
「いや、ただの不可能に近い思いつきというか……」
「はいはい、頑張れ頑張れ~」
「く、くそぅ……他人事だからだってぇ……!」
「実際他人事だもの。大丈夫大丈夫、奇才さんならなんとかなるわ」
「根拠ないよな!?」
その後、俺の切願はスルーされ、イアが完膚なきまでに木っ端微塵にした枝を修復するという、鬼畜コースが始まった。
もちろんこちらはそう簡単に成功するはずもなく、数時間の格闘があったのは、いうまでもない話────
◆◆◆
一方その頃、イアの双子の妹──もとい三つ子の妹、ルアは、コスミマの商店街を訪れ夕食の食材を調達していた。
まだ昼食も済ませていないが、昼食は具竜荘に残っている食材だけでなんとかなる。
それに、少し空腹を感じながら買い物をしていた方が、夕食のメニューも思いつきやすいというものだ。
感染症の影響で、相変わらず街は閑散としているが……
それでも、慣れ親しんだ街だ。歩いているだけで、心は落ち着く。
コスミマに来て8年……随分経ったように思えるが、未だにあの村で過ごした時間の方が長い。そう思うと、そこまで経過していない時の流れに、少々驚きも感じた。
いつもの八百屋の前で立ち止まり、色鮮やかな食材に一つ一つ目を通す。すると、奥にいた八百屋のおばさんがルアに気付き、声をかけてきた。
「やあルビーちゃん。今日は随分と早い時間にやって来たんだね?」
野菜から視線を上げ、ルアもおばさんと目を合わせる。
「はい、今日はそういう気分だったので。夕食の食材を買いにきました」
「晩御飯かぁ。今日ならじゃがいもと人参を、安くしておくよ?」
「じゃがいもと人参ですか……確かさやいんげんが家にあったはずなので……今日は肉じゃがにしましょうか」
「おお、いいね~肉じゃが。おばちゃんも大好きな料理だ。じゃあついでにトマトもサービスしとくよ。サラダにでもして、一緒に出してやってくれ」
「ありがとうございます」
「はいよ~。そういえばこの前、ルビーちゃんとサファイアちゃんと一緒に歩いてたお兄さん、見かけない子だったね。ルビーちゃん達の知り合いかい?」
お兄さん……十中八九、リョーガのことだろう。
「知り合い……まぁ、はい。訳あって、今は具竜荘の住民です」
「へぇ、ランビリスの所かい。あそこ、あんだけ条件もよくて内装も綺麗なのに、どーして住民がなかなか増えないのかねぇ。ルビーちゃん達がこの街にやって来た時以来だから、住民が増えるのなんて8年ぶり?」
「そうなりますね。まあ、目立たない場所にありますから。知る人ぞ知る秘境のようなものです」
「あはは! 秘境、確かにそのとおりだ。──はい、全部で銅貨82枚だよ」
ポケットからカードを出し、おばさんに渡す。壁に埋め込まれた石盤のような物にカードをかざすと、石盤はほわっと光り、会計が終わった。カードを返却され、またポケットに戻す。
「はい、いつもご贔屓にしてくれてありがとね」
おばさんから商品を受け取り、ルアは肉じゃがの材料である牛肉と白滝を買いに、別の店へと向かった。といっても、数歩歩けばつく距離だが。
どこの店でもたわいのない話をし、無事肉じゃがの材料は揃う。
商店街を抜け、具竜荘へ戻ろうとした、その時だった。
ルアは視界の少し遠くに、一人の少年を捉えた。その少年は、周りに人がいないのを確認するかのような動作をみせ、そのまま人気のない路地の方へと姿を消す。
コスミマでは、初めて見る顔だった。
そもそもコスミマは、ここオミクロン大陸の首都にあたる地域なため、知らない人がいたところで、別に不思議ではない。──そう、知らない人、ならば……
「魔族……」
ルーンを宿す瞳を光らせ、ルアは小さくそう、呟いた────
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