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バッドエンドを迎えた世界  作者: ぱれつと
チャプターⅠ 異世界生活スタート
14/42

12話 街の外

『クエスト:採取クエスト・長期クエスト』

『内容:魔石の採取』

『クリア条件:魔宝石を3種持ち帰る(その他の魔石も持ち帰れば、報酬追加)』

『難易度:★4』

『報酬:銀貨100枚』


 それが、イアが見つけてきたクエストの内容だった。

 この中で、俺が一番驚いたのはもちろん──


「銀貨100枚!?」


 そう、この豪華報酬だ。しかもクリア条件の項目に、その他の魔石も持ち帰れば、報酬追加ってあるからな。銀貨100枚以上に増えるというのか?!


 って……“魔石”ってなんだ?


「ここまで好条件の報酬は珍しいですね。難易度★4というのは、かなり難しいですが」


「そうねぇ。あっ難易度は★1~★5まであって、★1が一番簡単、★5が一番難しいっていう捉え方ね。あとは魔石の説明もしないとだけど──」


「洞窟についてからでいいのではないですか? これ以上立て続けに情報を詰め込んで、忘れられても面倒ですし」


「──それもそうね」


 俺の周りで、勝手に話が進んでいる模様。


「じゃ、このクエストを受注してくるわ」


 そう言いイアは、ギルドの中央にある円状の受付へ向かって行った。

 その背中を見送り、俺は机に置かれたクエストの紙を見る。


 難易度★4ってことは、少し難しいってとこだよな。魔宝石がどんなのかは知らないが、3種持ち帰るだけでここまでの難易度……場所が危険なのか、魔宝石がそれだけ貴重なのか……

 いずれにしよ、銀貨100枚相当の難易度ということだ。気を引き締めておこう。


 ……それに今回聞いたギルドの説明、どっかで読んだような、聞いたことがあるような気がするんだよなぁ……

 感覚でしか覚えてないけど、イアの説明を聞いた時に、記憶の中にある何かが刺激されたというか。う~~ん?


「何か悩んでいるようですが、どうされましたかリョーガ? 空っぽの頭を捻ったところで、何にもなりませんよ」


「空っぽ?! あ~いやそこじゃなくて……いや、大丈夫だ。こっちの問題だから」


 こればかりは、ルアやイアに頼っても解決しないだろう。


「ふ~ん……そうですか。そろそろイアも戻ってくると思います。────噂をすれば」


 ルアの言葉で、俺も受付の方へ視線を向けた。この疑問に対する思考は、一旦停止させる。

 イアがこちらへ戻ってきているとこだった。右手で丸を作っている。

 受注って、こんな早く終わるんだな。1分も経ってない気がするんだけど……


「受注完了。さっ、行くわよ」


「行くって、どこに採掘へ行くんだ?」


「“アステリ洞窟”よ。まあついてきなさい」


「今回は王道をいきますね。最早、他の人たちに採掘され尽くしていると思うのですが」


「そう思うでしょ? でも、その真相は現地に行ったら分かるわ」


「まさか、まだ魔石が残っているとでも?」


「ふふ、どうでしょうね。さ~行くわよ~」


 未だ、概要が完全に飲み込めていない俺とルアを置き、イアはささっとギルド外へ行ってしまった。

 全ては現地でのお楽しみ、と。


 俺たちもイアの後を追い、ギルドを去った。



  ◇◇◇



 歩くことまたまた1時間程度。

 ギルドから、元いた具竜荘の方角まで戻ってきた。()のアステリ洞窟が、こちらの方角にあるらしい。

 既に見慣れた景色となったこの場所に、少し安心感がある。


 そして今──俺たちの目の前には、真っ白い巨大な門が待ち構えていた。

 RPGの王都とかにありそうな、ちょー立派な門だ。出入り口と思われる部分は現在、木の扉で閉ざされている。


 ちなみにイアは、槍を持った門番と思われる男性と交渉中だ。


 待っている間に、ルアから説明を聞く。


「ここはコスミマの西端で、出入り門です。門はコスミマの東西南北に、計4つあります。僕たちと出会った初日にも、この門からコスミマへ入りましたよ」


「えっマジで? 全然覚えてなかった……」


「記憶力大丈夫ですか? 鶏か魚といい勝負です」


「それって3秒じゃねーか!」


 一応科学的には、鶏と魚も、3秒以上記憶が維持できることが証明されてるらしいけど。


 あと俺、普通の人よりは記憶力いい方だからな!


「話を戻しますが、門にはそれぞれ名前があり、ここが“白虎”です。ほら、出入り口の所に、虎の銅像があるでしょう?」


「あっほんとだ」


 金剛力士像の如く構えてるな。金剛力士像と違って、1つしかないのがちょっと寂しいけど。


「西端が白虎、南端が“朱雀”、東端が“青竜”、北端が“玄武”になります。細かいことを言えば──」


 ……あれ、これって四神じゃね? 四神は確か、中国の神話、天の四方の方角を司る霊獣だった気が……あ~そうだ、絶対それだわ!

 霊獣と方角の向きもばっちり一致してるし、確か白虎が司る色もこの門と同じ、白色だったはず。

 なんで中国の神話がパラミシアに?


「────聞いてますかリョーガ……」


「ふえっあ! あ、悪い、別のこと考えた……」


「……人の話はきちんと聞いててください。そんなに大したことは話してなかったので、別にいいですが」


「本当にごめん!」


「もういいですよ。話をまとめると、この4つの門からそれぞれ中央となる位置に、カメーロパルダリスがある、というだけの話です」


「カメーロ……なんちゃらってなんだっけ?」


 名前が長すぎて、記憶力の良さに定評のある俺でも、流石にすぐには覚えられないんだよ。どうしてこうもややこしい名前のものが多いのかねぇ。


「まぁこれに関しては、忘れても無理はありませんか。……コスミマのシンボルマークである、時計塔の名前ですよ」


「──あ、ああーー! それだー!」


 思い出した! あの時の会話がびびっと脳に駆け巡った!

 あのあれだろ? 鐘が鳴る時しか姿を見られない、不吉の鐘だったよな!


「……鐘が鳴ってから、まだ何かしら不吉なことが起こったという知らせはありませんが、警戒しておいて損はないかと」


「OK。鐘が鳴ってから、すぐに不吉なことが起こるってわけじゃあないんだな」


「そうですね。どういう間隔で鳴ってるのかも、一切不明ですから」


 ほんとに謎の多い時計塔なんだなぁ。


 そういえば四神でいえば、中央を司るのは“麒麟”だったっけ。

 カメーロパルダリス……おっ覚えられた! と、何か名前に繋がりがあったりは……『り』が共通してるだけで、なんもないな。キリンで英語表記にしても、Giraffe(ジラフ)だし……あー分っかんねー! スマホー! 翻訳機が欲しいー!


「また何か考え込んでいるようですが、ろそろそサファイアが、こちらへ戻ってくると思いますよ」


「──お、確かに手続きが終わったっぽいな」


 街の外には魔族が結構いるらしく、コスミマから出るだけでも、面倒な手続きが色々必要らしい。

 こういう手続きをきちんとしておけば、仮に魔族に襲われ怪我をしても、街から治療費を出してもらえるそうだ。日本でいうところの保険だな。

 というか、街から外ってそんな危険なのか……大草原で無防備に寝てて、よく無事だったよな俺。


 するとイアが、手続きを終えてこちらへ戻ってきた。

 多少げっそりしているようにも思えたが、表情はいつもの澄まし顔なため、気のせいだったかもしれない。


「ちゃんと許可もらえたわよ。はい、このバッチを着けて」


 そう言って手渡されたのは、何かの紋章のようなデザインをしたバッチだった。

(複雑な模様で、言葉で説明するのが難しいため、そこは省く。ぱっと見た印象が、高級そうな風車(かざぐるま)のようだということだけ、伝えておこう)


「これはコスミマの紋章なの。それを着けておけば、正式な手続きをして出掛けたコスミマの住人だって、誰にでも分かってもらえるわ」


「これが無かったらどうなる?」


「ただの旅人ってことで、済まされるんじゃないかしら。ただ、魔族に狙われる確率が上がるわね。このバッチがないと、魔族に襲われた際に街の兵士にも助けてもらえないし」


「このバッチめっちゃ重要じゃん!」


 失くさないように、ちょー気を付けよ……

 強く握り締めながら、俺はパーカーにバッチを着けた。

 うん、かっけーー!


「着けたわね。じゃあ行くわよ」


「やっと本題の一歩手前ですね……」


「あのでかい木の扉が開くのか?」


「そんなわけないでしょ。あれは、上級階級の人がコスミマを訪れる時に使われるの。一般市民はこっちよ」


 イアが親指を門の方向へ向ける。視線を移動させていくと、大きな木の扉の右隣にもう一つ、小さな木の扉があった。大きな扉の、12分の1程の大きさだろうか。大きな扉がでか過ぎるんだけどな。

 一般人は普通の扉から出てけっと。


「ほらさっさと歩く。何度も言うけど、そろそろ行くわよ!」


「はーーい!」


 門へ近づくと、門番の人が扉を開けて待っていてくれた。


「気を付けて行ってらっしゃいませ」


 そう見送られ、コスミマから外に出る。


 そこに広がる光景は──あの灰色の草原だ。

 俺が、パラミシアで目覚めた場所。イアとルアと、初めて出会った場所。


 初日にこの白虎の門からコスミマに入ったんだから、その外がこの草原っていうのは当たり前か。


 あの日と同じで、頬を撫でる風は暖かかった。

 あの時といえば────


「そういえば2人ってさ、なんであん時ドラゴンと戦ってたんだ?」


 この質問に、イアはちょー苦い表情を浮かべた。ポーカーフェイスで定評のあるルアさえも、若干渋い表情を見せている。


「あぁ……あれは……元々戦うつもりなんて、更々なかったんだけどね。……あのドラゴンも、ギルドのクエストで討伐依頼がきていたらしいのよ。私たちは、普通にこの草原を歩いていただけだったんだけど、そのクエストを受注してドラゴン討伐をしていた人から、あまりの強さに突然その討伐を押しつけられてね……ドラゴンにもロックオンされちゃったし、戦わざるを得なかったってわけ」


「おお……そ、そりゃあ、とんだ災難だったな……」


 予想の斜め上をいく事実だった。

 確かに、敵わないと分かっている相手に喧嘩を売る程、二人とも無鉄砲じゃあなさそうだもんな。


「ほんっっと災難だったわ。難易度★5のクエストを受注するなら、きちんと自分の力量を理解した上でやりなさいって話よ……」


 あのドラゴンの討伐クエスト、難易度★5だったのか。イアでさえ手こずる、あの強さにも納得だな……


「んまあそのお陰で、俺は二人と出会えたんだけどな」


「僕はリョーガと出会えなくても良かったですけど」


 グサッ!(ルアの言葉にリョーガ、100のダメージ)


「はっはは……そうですかい……思えば、あの時助けてくれた女性って、一体誰だったんだろ?」


 俺は、あの時見とれた美女の容姿を思い出す。

 彼女の周りを回っていた、あの白い短剣もなんだったのだろうか。まさかあれも宝魔?!


 それについて尋ねると、イアが新たな知識を伝授してくれた。


「あれは“()(ぞく)(せい)”と呼ばれる、宝魔による魔法属性の一種よ。“空気中の魔力を、そのまま形にして操る魔法”。でも普通魔力って、気体と同じで目には見えないでしょ? 魔属性というのは、宝魔で、魔力内にわざと不純物を混ぜ込み、目に見える実体にする魔法なの。だから、実体になった魔力は、自由自在に操れるってわけ」


「ほえぇマジか。それってチート並みに強くね?」


 魔力って、パラミシア全土の空気中に溢れてるんだよな。しかも空気中の半分の割合を占めている。

 つまりその気になれば、何でも実体にして、操れるってわけだよな。ナイフだろうが槍だろうが剣だろうが、その他諸々の武器だけでなく、相手の動きを封じることもできるだろうし、防御にも使える。同時に使えば最強じゃん!


「そうね。フルに使えば、リョーガの言うとおりチート並みに強いわ。でも、世の中ってうまいこと創られててね、そうもいかないのよ」


「ん? どういうこと?」


「人間であろうが魔族だろうが、生物には限界があるってこと。例えばそうねぇ……リョーガは、どれくらいの高さにある物なら、道具を使わずに取れる?」


「え? えっ、と……まあ背伸びして、こう腕を挙げた時に手がある場所くらいじゃね?」


 高校2年生時代の俺の身長が、大体170㎝くらいだったから、2mは余裕だな。


「そうね。じゃあ3m上にある物を、あなたは取れる?」


「無理!」


「清々しい程に即答だったわね。まっ、当たり前か、そのつもりで聞いたし」


「どゆこと?」


「……時々無駄に切れるその頭、今回は停止しているようね」


「んん~? 褒められてるのか貶されてるのか、よく分かんないな」


「勝手に好きな方で捉えときなさい。私が言いたいのは、高い所にある物は気合いとかじゃあ取れないのと同じように、生身で操れる魔力の量や精度にも限界があるってこと。魔属性が強いことに変わりはないけど、チートと言える程の脅威でもないわ」


「あ~なるほど! なんかすぐに察せなくてごめん」


 それでもやっぱり、魔属性ってやつは強いのな。つまりあの美女、相当の実力があると。強くて可愛いとか、パーフェクトじゃん……


 ちなみにルアは、ほとんどこの会話に入ってこなかったが、元々入る気も更々なかったらしく、ぽ~っと遠くの空を見つめていた。

  元々虚ろな雰囲気のある瞳が、更に虚ろなものになっている。



 そして、草原を歩いて30分程が経過した頃────



 視界に変化が訪れた。


 そこにあるのは、明らかに洞窟だ。

 草原のど真ん中にあるその洞穴のような造りは、横ではなく地下に続いているようで、周りの景色と比べるとここだけ違和感が凄い。


 そしてイアが、告げる。


「ここが目的地、アステリ洞窟よ────」

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

よければブックマーク、評価の方をしていただければ、とてもとても励みになります。

素人の作品ですが、次話も読んでいただければ嬉しいですm(_ _)m

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