生徒会長がデキたヤツなのは、当たり前!?
「じゃあ、一年三組は、〈チョコバナナ〉屋さんってことでいいのかな」
生徒会長の問いかけに、首を縦にふる。
私が訪れたのが放課後すぐだったせいか、生徒会室には会長一人しかいなかった。
中学と違って屋台を出すことが出来る。それは、面白そうである反面、面倒くさくないわけじゃない。
それに、まだ一年生で、自分たちで創る文化祭っていうのがイメージ出来ていない。あんまりガッツリ力を入れすぎて、他よりも浮いてしまうのも良くない。
でも、少しぐらい冒険もしてみたい。
ということで、中学とは違うんだよ。でも、当たり障りのないことしかしないんだよっていう企画になった。
「初めてなので、これなら出来るかなって企画になりました」
チョコバナナなら、作るのもそんなに難しくない。男子にだって出来るだろう。
ついでに言えば、包丁を使わないので、私にも出来る(笑)
「ダメ…ですか⁉」
会長の反応が薄かったので、少し心配になる。
一年ごときが調子に乗るな!? それとも、別のクラスがこの企画上げちゃってる⁉ 企画かぶり!?
「いや。ゴメン、そういうわけじゃないよ」
会長が書類から目を離す。
「懐かしいなって思っただけなんだ。僕も一年の時に〈チョコバナナ〉やったから」
そうなんだ。
「バナナの手配とか、やり方はわかる⁉」
「あ。はい。学校近くのスーパーで卸してもらおうって思ってます」
あそこなら注文を受けてくれるだろう。あそこでバイトしてるっていうクラスメートもいる。その子を通して頼めば、事は運びやすい。
「そっか。そこまで考えられているのなら、大丈夫かな」
あ。心配してくれたんだ。
「ああ、でも、注文するバナナ、どんなのがいいか、具体的に知ってる⁉」
へっ⁉ バナナどれだけって頼むだけじゃダメなの!?
わからないので、首をプルプル振った。
「バナナはね、なるべく〈青いヤツ〉を頼むんだ」
「どうしてですか⁉」
「普通のバナナだと、柔らかくて割りばしが貫通してしまうんだよ」
そうなんだ。
「だから、出来る限り硬めのヤツを。『チョコバナナ用のを』って頼むといいよ。あと、チョコは湯せん用のものをね。市販の板チョコだと固まるまでに時間がかかるから」
へえ。そんな工夫が必要なんだ。
チョコバナナなんて、簡単だって思ってたけど、意外と奥が深いのかもしれない。
「って、ゴメンね!? イロイロ言っちゃって」
「いえ。そういうこと知らなかったから、とても勉強になりました」
「僕たちの時は、それで失敗しちゃったからね」
生徒会長が懐かしそうに笑った。笑うと、途端に柔らかい印象になる。
「君たちは、おいしいチョコバナナ作って楽しんで!?」
「はい。ありがとうございます」
ホント見た目通り、イイ人だなあ。
普通なら事務的に書類を受け取って、はい終わりってされてしまうのに。
それを、こんなふうにアドバイスまでくれて。
まともに話すのはこれまでのが初めてだけど、こんな先輩なら、生徒会役員として彼の後をついていくのもイヤじゃないかもしれない。
「あとは、家庭科室の利用許可願いかな。書類、持ってる⁉」
「はい。これ、家庭科の浦田先生に提出すればいいんですよね⁉」
「うん。そうだよ。君…、瑞浪さんだっけ。しっかりしてるね」
え!? いや、そんなこと言われたの初めてだけど。
「君が文化委員なのなら、一年三組は大丈夫かな」
いやいや、そこまで買いかぶられても。
でも、うれしい。
顔、赤くなってくるよ。照れちゃう。
「だけど、あんまり無理しちゃダメだよ」
はい、と会長が何かを私の手のなかに収めた。
…飴!?
「疲れたときは、ちゃんと休んでね。それと、いつでも相談に乗るから、困ったことがあったら言ってくれていいよ」
うわーうわーうわー。
こういうことさりげなくやれちゃう人って…。
「ありがとうございます。失礼しますっ!!」
大きくお辞儀だけして、生徒会室を出る。
(はああぁっ…)
壁にもたれたまま、ズルズルとしゃがみこんだ。
生徒会長…。顔もいいけど、性格も良すぎ。
惚れてしまうやろっ!!
って、私は惚れないけど。(惚れたところで望みないだろうから)
「あまっ…」
黄金色の飴玉。おそらくハチミツ味。
その甘さに、緊張から解き放たれた心が癒される。
(さて、と…)
しばらくしゃがんでいたけど、重い腰を上げる。
次は…、陽彩とモンスター退治だ。
(文化祭までに、モンスター退治、終わらないかなあ)
それでなくても、これから忙しくなるっていうのに、そんなことにまで関わりあっていいたくない。平和に文化祭を迎えたい。
魔王さま、いったい何匹モンスターを転生させたんだろう。
きりのないロープレ世界に巻き込まれたようで、うんざりする。
会長からもらった飴に、少し元気をもらいながら、陽彩の待つ公園へと向かった。




