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MP無限大!? エリクサーいらずは無敵すぎ。

 「オーライ、オーライ…」

 公園に不釣り合いな声が響く。

 ピーピーピー、バックシマス、ゴチュウイクダサイ、ピーピーピー…。ではなく。(工事現場じゃあるまいし)

 見えないクレーンで釣り上げられた中年リーマンの身体が、ゆっくりとベンチに降ろされる。

 操縦しているのは花蓮(かれん)さん。

 指示を出しているのが陽彩(ひいろ)

 「よーし、そのまま真っすぐ…、よし、OK」

 手振りつきで、陽彩(ひいろ)花蓮(かれん)さんに伝える。

 花蓮さんの操縦は危な気がない。丁寧に、そっとリーマンの身体をベンチに横たえた。それも一瞬、その身体がふわっと羽根に包まれたようなクッションを挟んでからのという、高等芸。

 さすが魔法使い。花蓮さん、大特の免許でも持ってるんじゃない⁉ってぐらい扱いがうまい。

 私が手伝っていた時よりも、より安全に丁寧に迅速に、倒した相手の身体をベンチに寝かせることに成功した。

 「ふう。これでいいかしら!?」

 「ああ、助かった。ありがとう花蓮」

 花蓮さんが、軽く額を拭った。指示を出していた陽彩も、一息つく。

 「こんなにモンスターが次々と襲ってきてるなんて。思いもしなかったわ」

 「まあ、な。これでも今日はまだ一体だけだから、少ないほうなんだぞ!?」

 「勇者も大変ね、アディル」

 「まったくだ。オレはノンビリ生きていたいだけなのにな」

 「それだけ人気者ってことよ」

 「モンスターに人気があってもなあ」

 陽彩が困ったような顔をする。そしてそれを見た花蓮さんがクスクスと笑う。

 …またもや、二人だけの世界。

 「おーい。もう大丈夫だから、出てきていいぞぉ」

 陽彩が、茂みに隠れたままの私に声をかけてくれたけど…。

 …あの。スゴク出てゆきづらいですよ、その空気。

 でも、声をかけられたからには、動かないわけにはいかない。

 ノソノソと、茂みから這い出していく。

 「終わったの…⁉」

 間抜けな質問だとは思ったけど、それでも聞いておく。

 「もう大丈夫だから、安心して!?」

 陽彩の代わりに花蓮さんが答えた。

 戦闘、そしてこの移動作業と、連続して魔法使ってるのに、疲れた風ですらない。

 「さっきのって…」

 煙になって消えていったモンスターを思い出す。

 「あれは、セイレーンよ」

 「セイレーン…」

 確かに、かなりの美声で攻撃してたよなぁ。

 眼鏡一つずらさずに寝かされた中年リーマンを見る。出っ張ったお腹では想像もできない、見事なまでのソプラノボイスだった。聞き惚れちゃうぐらいに。(それがアブナイんだってば) 容姿にまったく似合っていなかったけど。

 それを、花蓮さんの風魔法で音を消して、陽彩がとどめを刺した。

 完璧なまでの連携プレー。

 信頼しあってる仲間だからこそできる、阿吽(あうん)の呼吸。

 陽彩だけでもじゅうぶんに強いけど、花蓮さんの魔法のサポートがあるおかげで、陽彩は格段に戦いやすくなっているみたいだった。

 〈来た、見た、勝った〉のユリウス・カエサルもビックリの、スピード解決。

 (やっぱスゴいわ。勇者ってさ)

 難なく敵をサクサクやっつけちゃう。

 「おーい、てまりぃ。置いてくぞぉ」

 いつの間にか、二人は公園の入り口にさしかかっていた。

 チラリとベンチに視線を送ってから、私も二人のあとを追っかけるように走り出す。

 最近のモンスターとの戦闘は、いつもこんなかんじだ。

 どんなモンスターが来ても、余裕で倒しちゃう。

 この間だって、例の、「仲間を呼んだ」系のモンスターに襲われても動じてなかった。(あれ、結構めんどくさいハズなのに)

 花蓮さんが、声を動作を封じて、陽彩が一撃で薙ぎ払っていた。

 仲間、いたとしても駆けつけるヒマすらない。

 他にも、空飛ぶ敵を風魔法で捕縛したり、炎系モンスターには氷魔法を、アンデット系には回復魔法と炎魔法をとまあ、花蓮さんの使う魔法は、多岐に渡る。

 必要がなさそうだから見てないけど、おそらく補助系魔法も出来るんだろう。ル〇ラとか、リ〇ミトとか。…パルプ〇テは使ってほしくないけど。

 それだけすごい魔法使いである花蓮さんだけど、いつだってモンスターにとどめを刺すのは陽彩の役目だった。

 「モンスターを切り離すことが出来るのは、アディルだけだから」

 陽彩の持つ剣は、カッコいい(私には怖い)だけでなく、そういう特殊効果も付与されているらしかった。

 陽彩に斬られることで、転生したモンスターは過去から切り離される。さっきの中年リーマンだって、二度とソプラノアカペラは出来ないだろう。(それがいいことなのかどうかは知らない)

 花蓮さんの完璧サポートのおかげで、なんの問題もなく、モンスターたちが切り離されていく。

 花蓮さんは、いつでも放課後になると、陽彩のサポートのために、学校まで迎えに来てくれていた。花蓮さんの通うセントアンナ女学院は、私たちの学校からさほど離れてはいないけど…。

 (美少女の出待ちって、結構目立つのよね)

 それでなくても、セントアンナの制服は、上下が真っ白のセーラー服という、清楚極まりないもので。(スカートと、セーラーの襟に赤いラインがあるけれど、それ以外は純白の白)

 黒髪ストレートの真性美人、花蓮さんがその制服姿で、陽彩を待っているとなると…。

 「菅原、ついにカノジョ持ちに!?」

 「どこでどうやったら、あんな美人と知り合えるんだよ⁉」

 などなど。ロクなウワサにならない。

 なので、クッション材として!?私も一緒に帰ることになっている。

 三人でつるむように帰れば、そんなウワサになることもないだろうってことなんだけど。

 「てまり、なに邪魔してるの⁉」

 「わざわざ迎えに来るぐらいラブラブなんだから、邪魔しちゃダメでしょ」

 と、友だちからたしなめられた。

 うえーん。

 私が悪いわけじゃないのにぃ。

 そのうえ。

 「どんなライバルが現れたって、あきらめちゃダメよ!!」

 「てまりだって、見続ければそれなりにカワイイって思えるんだから」

 などという、(あんまり褒められているとは思い難い)励ましの言葉をもらうこともあった。

 …みんな、いったいどんな誤解をしてるんだろう。

 陽彩も、花蓮さんも、周囲がどんなウワサをしようが、あまり気にしていないようだった。おそらく、前世で「伝説の!!」「あのウワサの」って言われるぐらい活躍した陽彩だもん。自分のウワサぐらい、当たり前すぎて気にならないのだろう。

 群衆(モブ)モンスターのスライムとしては、ウワサに巻き込まれて、とても肩身が狭いです。はい。

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