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奴隷を買う

 何度も見返した、何十回も見直した。

 だけどそこに記載されている番号と自分の手元にある紙切れに印字された番号は――間違いなく一致していた。

「い」

 声がひきつる心臓がおかしくなる顔が熱くなる全身が震える。

 もう一度だけ見比べる、やっぱり一致している。

 舌を軽く歯で噛んだ、痛い、夢ではなさそうだ。

 つまり?

 つまり、つまり、つまり、つまり?

「いっと…………たからくじ…………一等……あたっ……あたったった…………!!?」

 やったね私、お金が増えるよ。

 えげつないほど、増えるよ!!?

 万歳!! 万歳三唱!!?

 やったね私、働く必要なくなったよ!?

 お仕事辞めても生きてけるよ!!

 よっし辞めよう!! これからは宝くじのお金で悠々自適快適なニート生活を送るんだ!!

 ひゃっほうい!!

 わーいわーい!! やったね、やったね、やったね!

 ……と喜んでいられたのは最初の三日間だけだった。

 どういうことかと言われると、命を狙われている。

 今年の宝くじは普段のものとはちょっと違って、当選金額がべらぼうに高いのだ。

 何かの記念で……普段の一等の数倍以上。

 一瞬で超セレブになれるくらいの金額で、豪遊してもひ孫までは何とかなるような、そういうガチの巨万の富

 そして私はどこにでもいる不真面目な一般人。

 家族も親族もいない、友人もいない、自分以外に大事なものもない、誰かのために何かをしようだなんてことはほとんど考えない。

 しいていうならお気に入りの作家さんに仕送りをしたいくらいだ。

 寄付? しない。あ、でも猫ちゃんのための寄付ならする、人間はどうでもいいけど猫ちゃんは大事、あの子達はこの宇宙の最高傑作。

 つまるところ、巨万の富を得たところで私自身には何の変化もなく、ただ自分のためにしかそれを使うつもりはなかった。

 だって私にとってはそれが一番正しいことだった、見ず知らずの赤の他人のことなんてどうでもいいし、誰だって基本的には自分と自分の世界を構成する何か以外を大事にはしない、そんな余裕なんてない。

 それなのに、世間一般の人々は私を許してくれなかった。

 寄付をしろ、それだけの金があるのなら余っているんだろう、寄越せ寄越せ寄越せ、俺様のために寄越せ私様のために寄越せどうせ本当は自分のものではないくせに。

 嫉妬と妬み、恵まれたものへ向けられる理不尽な感情は、あまりにもあっさり殺意に変わった。

 学生時代に小遣い稼ぎでダンジョンに潜っていた経験がなかったら多分もう私はとっくに死んでいた。

 ダンジョンに潜っていたとはいっても私は低ランカーだったし、この先これで何とかなるとも思えない。

 ……と、いうわけでやってきたのはセレブ御用達の奴隷屋さん。

 それらしい格好なんてよくわからないからとりあえず就活の時に着ていたスーツを身に纏い、いざ尋常に。

 息を吸って、吐いて吐いて吐いて吸って。

 向かい入れた店員に向かって、自分にしてはよく通る声で一言。

「ここで一番強い奴隷をくださいな」

 と、いうわけで私は自分の身の安全を得るために護衛用の奴隷を手に入れたのだった。

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