クリスマスイブ
八海佳奈が亡くなった。そんなのはきっとただの噂に違いない。
僕は真相を確かめるためにもクリスマスイブの夜に彼女との待ち合わせ場所の深夜の公園の広場へと行かなくてはならなかった。
だが、その前に
「メリークリスマス!立山くん。私をクリスマスプレゼントとして貰ってくれる?」
と微笑む彼女をどうするべきか?
山本の姉さんはクリスマスイブの夜、バイトが終わった僕を待っていてくれて、僕とのデートを楽しみにしていてくれる。
「ごめ……。」
ゴメンと言おうとした僕の口を彼女は彼女の手で抑えると、
「立山くんが今夜約束あるのはなんとなくわかっているよ。なら、そこまでついっていっていい?よね。彼女が、立山くんの恋人が私より素敵なひとなら、すっぱり諦めるから……。ね?」
僕は無言で彼女の手を取ると、駅の方へ向かった。八海が待つ公園へと向かうのだ。
電車の中僕は無言だったが、山本加奈子はその深刻そうな僕をみて、優しく微笑むのであった。
公園のある最寄りの駅だ。深夜の公園へ、公園の広場へと急いだ足で山本と向かう。
と、姉さん!?どこまでついてくるんだ?
「あの、隠れて見守っていてくれる。姉さん。頼むから。頼むよ。その彼女もいい気はしないだろうし。困るんだ。」
すると山本加奈子は、
「うん、じゃぁ、この公園の案内の前でしばらくいるよ。戻って来てね?」
と微笑む。
「戻ってくることは約束できない。ごめんね。山本の姉さん……。」
と言いすてると僕はダッシュで広場へと向かう。約束の時間はやや過ぎている。
八海佳奈は居るだろうか?それとも彼女は亡くなったのか?
その答えは……。
彼女の姿はなかった。
なかった。
どこを探しても八海佳奈の姿も、自分を呼んでくれる心地よい声も聞こえなかった。
広場の周りも見渡す、すると気づく。
そこはカップルの憩いの場で愛を語り体で語り合う男女が大勢居て、それはまさに八海佳奈にふさわしい愛を育む場所で、僕は彼女がいなくても、この場にいることで彼女が感じられるような気がして、しばらく立ち尽くすのだった。
もし、八海佳奈が仮にこの場で肉弾戦を自分に挑んで来ても僕は断って居ただろう。
でも僕は今の僕は八海が居たら絶対に抱いてあげたいと心の底から思う。
たとえ、それが叶わぬ思いだとしても。