悟と智史
「なんで父さんは僕と山本加奈子さんとの結婚を認めてくださらないのですか?」
智史は疑問を口にする。そもそもお見合いを設定したのは親父の悟だというのに交際がうまくいったというのに結婚を認めてくれないのは納得がいかない。
「智史、わしはダメだとは言ってない。まず1年同棲しなさいと言っているんだ。そしてな、その間お前とその子は清い関係を保つこと。それが条件だ。」
厳かに悟は言う。
「まさかもう関係を持っているということはないだろうな?バージンロードを汚すでないぞ?」
と釘をさすのも忘れない。
「わかりました。それで認めていただけるなら同棲します。」
どうせ清い関係のままでいるかどうか確認する方法は親父にはない。正直言葉通りの清いままの同棲なんて男には地獄以外のなにものではないが、気にすることはないだろう。
「よく言った。それでこそわしの息子だ……。都内にマンションを用意しておいた。そこで二人で暮らすが良いだろう。」
まさか盗撮しているということはないだろうな?いや、仮に盗撮したとしても、それをネタに表立って反対することはできないから、やはり問題なし。
とその時だった。ノックの音がすると
「失礼します。」と涼やかな声が響く。
そして入ってきたのはロングの髪をした透明感のある少女であった。
「わたくし同棲の間、家事手伝いをさせて頂きます。よろしくお願いいたしますね。智史さん。」
とても清らかな耳障りの良い声で彼女は言う。しかし、それは智史には衝撃以外の何者でもなかった、彼女はおそらく僕と同じぐらいの年。山本加奈子との同棲生活は当然二人っきりと思っていたのだ。
「わかって居ると思うが、彼女をお手つきになんかするんじゃないぞ?」
お手つきにするな、と言われても同じ部屋に妙齢の女性が居て気にならないわけないじゃないか!バカか親父は。
「……ハイ。」
元気のない声で智史は応えた。これから始まる八海佳奈つまりは山本加奈子との同棲生活が不安でたまらない。
つまり、そうかこの子に僕たちは監視されるということか。とその時であったその少女は明るい声で自己紹介する。
「私の名前は 水瀬那美といいます。ミナセと呼び捨てでお呼びくださいませ。」
心なしか彼女のほほが、ピンク色に染まっているような気がして、戸惑う智史であった。